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2022-10-02

【ボクシング】原優奈が波田大和下して日本王座挑戦権獲得

多彩な左から右へスムーズにつなげた原

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1日、後楽園ホールで行われた『最強挑戦者決定戦』日本スーパーフェザー級8回戦は、2位の原優奈(はら・ゆうな、28歳=真正)が1位の波田大和(はた・やまと、25歳=帝拳)を77対75、77対75、76対77の2-1判定で下し、日本チャンピオン坂晃典(さか・こうすけ、30歳=仲里)への挑戦権を獲得した。

※毎年前半に、日本チャンピオンと最上位挑戦者が戦うことが義務づけられている『チャンピオンカーニバル』。『最強挑戦者決定戦』は、その挑戦権を懸けた対戦である

文_本間 暁
写真_山口裕朗

 初回1分30秒の攻防が流れを作ってしまった。
サウスポーの波田に対し、後楽園ホール初登場の原は立ち上がりからジャブ、ストレート、フックと、波田の右腕の内、外に左を打ち分けて、早々にリズムをつかんでしまった。
 丁寧に戦う、原の出方を窺う、体が温まるまで無理をしない、原の動きが止まったところを攻める……。波田の思惑は様々だったろう。だが、「もっと出てくると思った」と原が語るとおり、手を出さず、動きを止めていた波田は、原にとっては好都合だったはずだ。

波田の右フックをかわして右を合わせる原
波田の右フックをかわして右を合わせる原

 タイミングや角度を変えて放つ原の左を防ごうとしたのか、波田の前の手(右)は一向に起動しない。だから足の動きへと連動させられない。瞬発力に優れた波田は、いきなりの左を決めにいこうと躍起になったが、左がスムーズに出る原に、右ストレートを滑らかにつながれ、いざ打とうとすれば距離を取られてしまい、迫力ある左を打つことができなかった。

攻撃力に優る波田だったが、いかんせん反撃が遅すぎた
攻撃力に優る波田だったが、いかんせん反撃が遅すぎた

 波田がようやく“らしさ”を見せたのは6ラウンドだった。強引にプレスをかけて右フック(波田)と左フック(原)の交錯をはじめ、打ち合いの様相に持ち込む。「前半からちょこちょこともらっていたボディがじわじわ来てた」という原はスタミナを削られており、7ラウンドは波田が迫力ある左ストレート、アッパーカットをボディに突き刺して、逆転のムードに。しかし、はっきりと流れができていた試合を引っ繰り返すのは容易ではない。最終8回、原は左フックのカウンターや左右のアッパーを決めてみせ、波田の逆転の目をしっかりと摘んだ。

「今まででいちばんうれしい勝利」と笑顔を見せた原は、日本王者・坂への挑戦について訊かれると、「終始圧倒してみせます」と自信満々に語った。

 原の戦績は15戦12勝(6KO)2敗1分。波田の戦績は14戦12勝(11KO)2敗。


元トップアマがKO競演

左から右アッパーでダウンを奪った中野

左から右アッパーでダウンを奪った中野

◆フェザー級8回戦◆
○中野幹士(なかの・みきと、27歳=帝拳)OPBF東洋太平洋フェザー級6位
●ロレンツ・ラドラダ(25歳=フィリピン)フィリピン・フェザー級14位
KO1回2分8秒
 右手右足でフェイントをかけるサウスポー中野に対し、身体能力の高そうな動きを見せたラドラダ。しかし、中野はしっかりとその動きを把握しており、ラドラダが間合いを詰めたところへ左から右アッパーをカウンタ―。これでドッと尻もちを着いたラドラダは、戦闘意志を見せずにカウントアウトとなった。
 中野は7戦7勝(6KO)。ラドラダは16戦11勝(3KO)4敗1分。

一気にギアを上げた藤田の右フックがヒット
一気にギアを上げた藤田の右フックがヒット

戦意喪失のカンポスはダウン後に立ち上がったが、ファイティングポーズを取らなかった

戦意喪失のカンポスはダウン後に立ち上がったが、ファイティングポーズを取らなかった

◆フェザー級8回戦◆
○藤田健児(28歳=帝拳)
●ロニー・カンポス(25歳=フィリピン)フィリピン・フェザー級15位
KO4回2分59秒
 初回から左ストレートをボディに突き刺してダメージを与えたサウスポー藤田。2回にはプレスを強めたところへ頭をぶつけられて額をカットする不運もあったが、3回には左右への大胆なステップでリズムを作り、左ストレートをクリーンヒット。この一撃でカンポスの左目周りを腫れあがらせた。4回、カンポスの右に左ストレートをカウンタ―してダウンを奪うと、左ボディアッパーから左右の連打でダウンを追加。立ち上がったカンポスはファイティングポーズを取れずに10カウントを数え上げられた。
 藤田の戦績は3戦3勝(2KO)。カンポスは17戦9勝(6KO)5敗3分。

強弱と変化にも富んだ村田の攻撃
強弱と変化にも富んだ村田の攻撃

相手に何もさせずに倒した村田

相手に何もさせずに倒した村田

◆バンタム級6回戦◆
○村田昴(25歳=帝拳)
●マルビロ・アバリェ(27歳=フィリピン)
KO2回2分45秒
 打ったら動く。アバリェの小さな動きにもしっかりと反応する。サウスポー村田は、きめの細かい丁寧なボクシングを終始披露した。ステップと同時に右のダブルから左ストレートを早々に決めると2回、アバリェの右を外して左のリターンをヒット。逆に左を打って、リターンを打たせ、これを外して左をヒットするなど、完全にアバリェをコントロール。右ボディフックで1度、左から右フックで横っ面を捉えて2度目のダウンを奪うと、アバリェのセコンドがカウント途中に棄権の意思表示をした。
 村田の戦績は3戦3勝(3KO)。アバリェは13戦8勝(3KO)3敗2分。

強引さが目立ち、被弾もあった齋藤
強引さが目立ち、被弾もあった齋藤

◆スーパーフェザー級6回戦◆
○齋藤麗王(24歳=さいとう・れお、帝拳)
●ジュフェル・サリナ(25歳=フィリピン)
KO2回2分36秒
 開始から距離を詰めて左右でボディを叩きにいった齋藤は、攻撃意識が強すぎて、サウスポーのサリナの左フックを再三合わされた。2回にはその左フックを食って後退するシーンも見せてしまったが、強引に体を密着させてボディ連打。2度のダウンを奪って10カウントを聞かせた。
 齋藤は2戦2勝(2KO)。サリナは11戦5勝(4KO)5敗1分。

相手の攻めに若干戸惑いも見せた金子だが、落ち着いてリズムを取り戻した
相手の攻めに若干戸惑いも見せた金子だが、落ち着いてリズムを取り戻した

◆フェザー級6回戦◆
○金子虎旦(24歳=かねこ・こた、帝拳)
●シュガリー・モンタレス(22歳=フィリピン)
TKO5回1分34秒
 いかにも重そうな右を振るうモンタレスの攻撃を、金子はステップでかわして左ボディブローを打つ。金子の左の引き際に右を狙うモンタレスの意図を察知すると、金子は打ち終わりにスウェーバックで対応。4回に入ると、右ストレートの強度を強め、左フックへとつなぎ、いきなりの右でモンタレスの左目上をカットさせた。そして5回、右カウンターのタイミングを数回計っていた金子が右を立て続けにヒットすると、モンタレスの出血が酷くなり、ドクターチェック後にレフェリーが試合を止めた。
 金子は2戦2勝(2KO)。モンタレスは5戦3勝(2KO)2敗。

長短強弱を織り交ぜた高見の攻撃
長短強弱を織り交ぜた高見の攻撃

闘志満々だったファンをねじ伏せてみせた
闘志満々だったファンをねじ伏せてみせた


◆110ポンド〈約49.9kg〉契約6回戦◆

○高見亨介(20歳=たかみ・きょうすけ、帝拳)
●ファン・インチョル(19歳=韓国)
TKO2回1分55秒
 ストレート攻撃でプレスをかけるファンに、高見は決して慌てずに左フックをカウンタ―。引きながら左ジャブを上下に刺す巧さを見せると、ショートのワンツー連打の回転を上げた。上下の打ち分けも巧みな高見は2回、ファンの入り際に右ストレートを合わせて倒すと、右を打ちかかるファンの攻撃を外して左フック。これで2度目のダウンを奪うと、レフェリーが試合をストップした。
 高見の戦績は2戦2勝(2KO)。初黒星のファンは5戦3勝(1KO)1敗1分。

気迫で追い上げた田中
気迫で追い上げた田中

シャープな攻撃が光った大木

シャープな攻撃が光った大木

◆ライトフライ級6回戦◆
△田中佳斗(23歳=たなか・けいと、帝拳)
△大木彪楽(19歳=おおき・ひゅうが、浜松堀内)
引分1-0(58対56、57対57、57対57)
 ラウンドスタートは必ずシャープな左ストレートからの攻撃を仕掛けたサウスポー大木。田中は左右へステップを切りながら、距離を詰めてじわじわとボディを攻めにかかる。が、田中の入り際に、大木は左ストレート、左右アッパーをヒットする巧さを披露。3回に、鼻の頭をヒッティングでカットした田中は、強引に押し込んでボディ連打に活路を見い出したかったが、大木は距離を取るではなく、押し負けないように踏ん張って、ショートブローで反撃。一進一退の攻防は、規定の2票以上に達せず、引き分けとなった。
 習志野高、法政大出身の田中。U-15優勝経験もある飛龍高出身の大木。ともにプロデビュー戦で、質の高いボクシングを見せた。

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