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2022-06-13

【ボクシング】冷静さ貫徹。小畑武尊が暫定王座獲得。元王者・永野祐樹に5回TKO

小畑の左が永野にクリーンヒット

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 13日、東京・後楽園ホールで行われた日本ウェルター級暫定王座決定戦10回戦は、日本2位で同級ユース王者の小畑武尊(こばた・たける、23歳=ダッシュ東保)が、元同級チャンピオンで現1位の永野祐樹(32歳=帝拳)に5回1分42秒TKO勝ちした。日本王者・小原佳太(三迫)の負傷により決まった1戦。出場のチャンスを得た小畑はそれを逃さず、小原との統一戦に向かう。

文_本間 暁(小畑vs.永野、金子vs.ウィセッソ、福井vs.ブエナオブラ)、宮崎正博(村田vs.ティフ、中野vs.パレデス)
写真_菊田義久

 サウスポー同士。強打の永野と若い技巧派の小畑。これまでのキャリアや練習環境を考えれば、永野有利という予想が圧倒的だったろう。しかし、小畑は地方(ジムは大分県別府市)のハンディをもろともせず、チャンスをしっかりとものにした。「普段、自分より大きな選手とスパーリングしているので、強いパンチには慣れてますから」。ハンディの“ハの字”も口にしなかった。

 立ち上がりから、ガードをしっかりと掲げて前進する永野。これはいつもの彼のスタイルだ。その圧力に押されて逃げまどう、あるいは力強く跳ねのけようと強引に打つ。それは、永野の思うつぼ。追いまくられ、隙に強打を叩き込まれる──というのが餌食になるパターンだ。
 しかし、小畑は決して焦らずに、永野のプレスを呼び込む形をとった。「ロープを背負っても、もうそれ以上(永野は)追えないから」と涼しい顔。「サウスポー同士なので、肝臓(の位置)が前に来る」と、左フック、ストレート、アッパーで永野の右ボディを打ち据え、コンパクトにショートのストレート、フックを織り交ぜる。それらは永野のガード間を通り、正面から横からと永野の顔面を弾き続けた。

ストップの瞬間
ストップの瞬間

 初回からボディが効き、頭部も揺らされた永野は苦しい状況が続いた。左一撃で形勢逆転を狙うものの、小畑は「モーションや“気”で分かった」と、それらを小さな頭の動きでかわしていく。回が進むと、そこに左相打ちを合わせ、永野の左をヘッドスリップで外し、自らの左はヒットさせていった。

 永野のダメージの蓄積は誰の目にも明らかだった。しかし、小畑は最後まで気を緩めなかった。「セコンドの(東保佳秀)会長から、『大振りになるな。冷静に』という声が聞こえてきたので」と、リラックスしたコンパクトなブローで“当てる”ことに主眼を置いた。5回、連打で永野が棒立ちとなりかけると、セコンドの田中繊大トレーナーがタオルを持って駆け上がり、レフェリーがそれを受け入れる形のストップとなった。

東保(ひがしほ)会長と小畑。「会長の指示のおかげで冷静でいられた」(小畑) 写真_本間 暁
東保(ひがしほ)会長と小畑。「会長の指示のおかげで冷静でいられた」(小畑) 写真_本間 暁

「誰が相手でも気負うことなく平常心で。それを心掛けました。ここまで来れば、相手はみなさん強いですから。次の小原さんとやるときも同じ気持ちで臨みます」と小畑。23歳とは思えない落ち着きぶりは、リングを降りても変わらなかった。18戦12勝(5KO)5敗1分。
 敗れた永野の戦績は23戦19勝(15KO)4敗となった。

帝拳のホープ4選手はそろってKO勝利

初回は左1本で魅せた金子

初回は左1本で魅せた金子

 前座のフェザー級6回戦でプロデビュー戦を迎えた金子虎旦(かねこ・こた、24歳)は、タイ・スーパーバンタム級9位のパシス・ウィセッソ(21歳)を初回は左1本でコントロール。2回に入り、右から左ボディブローにつないでダウンを奪うと、ふたたび左ボディで2度目を追加。最後は右打ち下ろしで倒しレフェリーストップに。1分36秒TKO勝利を飾った。目黒日大高校から日本大学に進んだアマ69戦の金子。幸先良いスタートを切った。ウィセッソの戦績は9戦6勝(4KO)3敗。

国内初戦となった村田(右)
国内初戦となった村田(右)

 同じく6回戦に登場したバンタム級のサウスポー、村田昴(むらた・すばる、25歳=帝拳)は、ジョン・マーク・ティフ(23歳=フィリピン)を4回終了で棄権に追い込んだ(TKO勝ち)。
 ラスベガスでプロデビューし、日本初登場になる村田は、初回からスピーディーなワンツーを好打する。攻撃がなかなかつながらず、3回にはティフの右パンチを立て続けに被弾する場面もあったが、4回にはボディから顔面へと切り返す攻撃で圧倒した。この回終了とともにティフがギブアップした。
 村田は2戦2勝(2KO)。ティフは10戦6勝(2KO)2敗2分。

力みが目立った福井(左)。本来はシャープな動きの持ち主だ
力みが目立った福井(左)。本来はシャープな動きの持ち主だ

 日本スーパーバンタム級17位の福井勝也(25歳=帝拳)は、フィリピン・バンタム級5位のサウスポー、ジェイソン・ブエナオブラ(27歳)を攻めあぐねた。
 倒す気満々で力みの目立つ福井は、体を硬くして右を強振。自然、動きも重くなり、体、放つブローともにキレを欠いた。左構えに対して左ジャブを打てないわけではないのだろうが、このリードブローが出ないから、体全体にリズムもない。強振コンビネーションの合間に時折、左を合わされてしまうシーンもあった。
 3回、左フックの相打ちに優ってブエナオブラを弾き飛ばすダウンを奪ったが、その後はさらに試合を終えたい気持ちが強くなって、強引さを増した。
 攻める、攻め切れないというラウンドが続いた7回、福井が左ボディから左フックを上へ返すと、レフェリーが試合を止めた。ダメージよりも、防御一辺倒になっていたブエナオブラの姿勢を見ての措置だった。タイムは1分59秒。
 福井の戦績は4戦4勝(3KO)。ブエナオブラは18戦8勝(3KO)7敗3分。

打ったら動く。洗練度は図抜けている中野(左)
打ったら動く。洗練度は図抜けている中野(左)

 日本スーパーフェザー級16位、強打の中野幹士(なかの・みきと、26歳=帝拳)はファニト・パレデス(30歳=フィリピン)とのフェザー級8回戦に、3回1分36秒KO勝ちを収めた。
 プロ5戦目で初めて試合終了ゴングを聞いてから1年半ぶりの実戦になる“鉄の拳”中野は、立ち上がりからパンチ力の違いを見せつけた。ただ、サウスポースタンスから打ち込むパンチは一発一発に威力はあっても、その一発だけで終わってしまう。結末はいささか唐突だった。3回、中野の長い左ストレートが決まると、パレデスは一呼吸置いてから、背中を見せてキャンバスに転がる。レフェリーがカウントを10まで数えるまで、フィリピン人は立ってこなかった。
 中野は6戦6勝(5KO)。パレデスは18戦9勝(4KO)8敗1分。

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