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2022-10-03

東京五輪ソフト代表・山田恵里が涙の引退会見「21年間、本当に悔いなくやり切った」

会見では、チームメイト、関係者、指導者、対戦相手、ファン、家族と、たくさんの方への感謝を口にした(写真/BBM)

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日本の女子ソフトボールを「打」でけん引してきた山田恵里(デンソー)が今季限りでの引退を表明。10月2日、JDリーグ開催中の千葉・浦安市内で会見を開いた。

  自身3度目の出場となった昨夏の東京五輪では、大きなプレッシャーがかかる中、主将としてチームをまとめ日本を悲願の金メダル獲得へと導いた。同年の日本リーグでは、打撃率.361をマークして6年ぶり5度目の首位打者にも輝いたが、「試合を重ねる中で、これ以上突き抜けた結果を出すのは難しいのではないかと思うようになった。21年間、本当に悔いなくやり切ることができた」とユニフォームを脱ぐ決断をした。シーズン中という異例のタイミングでの発表となったが、そこには「一人でも多くの方に試合を見に来てほしい」という強い思いがあった。

  会見冒頭では、ともに日本代表を牽引してきた上野由岐子(ビックカメラ高崎)が花束を持って現れた。不意打ちのサプライズに、山田の目からは涙がこぼれた。「上野さんを打つために練習してきたし、上野さんがいてくださったからこそ、ここまで現役を続けることができた。人としても選手としても成長させてもらえました」。尊敬する偉大な右腕と同じ時代にソフトボールをプレーすることができたことに、あらためて感謝の思いがあふれた。

 山田は、陸上競技部出身(父はその後競輪選手に)の両親の元に生まれ、スポーツ一家で育った。兄の影響で6歳で野球を始め、ソフトボールへ転向した厚木商業高ですぐに頭角を現すと、2年時と3年時にインターハイ連覇を達成。2002年に実業団へと進んだ。前々年にリーグ制覇を果たした強豪の日立で1年目からレギュラーに定着すると、本塁打王(6本)、打点王(22打点)、ベストナイン、新人賞のタイトルを獲得する華々しいデビューを飾った。2年目のジンクスをものともせず、その後も毎年コンスタントに成績を残し続けた天才打者に、いつしかついた異名は「女イチロー」だった。

 山田の活躍の裏にはいつでも、チームメイトやチーム関係者、そして家族の支えがあった。試合会場には、いつも両親の姿があった(父・良彦さんは2014年に他界)。「勝負の世界を知っている両親には、ああしなさい、こうしなさいと言われたことがなかった。どんな結果であっても、試合後には『お疲れさん』と言ってくれた」と両親との思い出を振り返る。ただ、一つだけ幼少期から厳しく言われていたことがある。それは、日々の積み重ねを大事にすることだ。小学校低学年のころ、練習に行きたくないという山田に、両親は練習を休むことを許さなかった。「1秒でも、1分でも、1日でも抜いてしまったら、結果に響いてしまう。今も日々の積み重ねを大事にしているのは、その教えがあったからだと思います」。

 天才打者と称され、打席ではオーラで圧倒する華のある選手だった。一方で、日々の積み重ねを大事にする、努力の人でもあった。ベテランとなった今でも毎日4時半に起床し、早朝から打撃練習に取り組んでいる。そうしてストイックなまでに自分自身を追い込むことで、これまで輝かしい成績を残してきた。しかし年齢を重ねる中で、「身体的にも気持ち的にも正直厳しいと感じるようになってきていた」という。これが、引退を決断する上で、一つの大きな理由になったという。

 これまで数々の輝かしい成績を残してきた山田には、実はまだ一つだけ手に入れていないものがある。それは、リーグ優勝の称号だ。所属するデンソーは現在、ビックカメラ高崎に次いで2位を独走中。11月上旬に行われるプレーオフ進出はすでに決めている。もちろん目指すはリーグ優勝ということになるが、大事にしたいのは、見る人にソフトボールを通して思いを伝えること。「私が楽しんでプレーしている姿を見てもらうことで、見てくださる方も楽しかったと思ってくださると思うので、全力で楽しんでいる姿を見せられたらと思います」。山田恵里のラストゲームをしっかりと見届けたい。

■今後のデンソーのスケジュール
10月3日(月)18:30~  VSビックカメラ高崎(千葉県浦安市)
10月15日(土)10:30~  VS日立(静岡県掛川市)
10月16日(日)13:30~  VS NECプラットフォームズ(静岡県掛川市)
10月22日(土)10:30~ VS太陽誘電(神奈川県横浜市)
10月23日(日)10:30~  VS NECプラットフォームズ(神奈川県横浜市)
※プレーオフは11月5日(土)からで組み合わせは未定

【山田恵里プロフィール】
やまだ・えり/1984年3月8日、神奈川県生まれ。165cm59kg。左投左打。外野手。厚木商業高-日立(2002年~20年)-デンソー(21年~)。日本リーグではこれまで首位打者(5度)、本塁打王(1度)、打点王(1度)、新人賞、ベストナイン(14度)に輝いた。日本代表としては6度の世界選手権、アテネ、北京、東京と3度の五輪に出場し、北京、東京では主将として金メダル獲得に貢献した。

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