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2022-10-10

【ボクシング】井岡の対抗王者変わらず。マルティネスが大差判定でアンカハスを返り討ち

マルティネスの右強打がアンカハスにヒット

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 IBF世界スーパーフライ級タイトルマッチ12回戦は8日(日本時間9日)、アメリカ・カリフォルニア州カーソンで行われ、チャンピオンのフェルナンド・マルティネス(31歳=アルゼンチン)が前王者ジェルウィン・アンカハス(30歳=フィリピン)を12回判定で返り討ちにするとともに、初防衛に成功した。

文_宮田有理子
Text by Yuriko Miyata
Photos by Esther Lin/SHOWTIME

 2人にとって今年2月以来のダイレクト・リマッチ。前回は大番狂わせだった。新型コロナウイルスの再流行さえなければ昨年末にWBO同級王者、井岡一翔(志成)との統一戦が実現していたはずのアンカハスが敗れたのだから、日本のファン、関係者にとってもその衝撃は大きかっただろう。帝里木下(千里馬神戸)、船井龍一(ワタナベ)らへの圧勝を含め、5年半にわたり9度、IBF王座を守ってきたフィリピン人サウスポーを、ノンストップの攻めに巻き込んで、タイトル強奪に成功したアルゼンチン人は、今回も変わらずパワフルだった。

リベンジに燃えるアンカハスも執念を見せたが……
リベンジに燃えるアンカハスも執念を見せたが……

「11歳から目指してきた世界チャンピオンになれて、人生を変えることができました。でも、この再戦に負ければ、前回がまぐれだったということになる。実力を証明するためにも、今回はどうしても勝たなければならないと思ってここに来ました」

 そう語るアルゼンチン人は、試合開始から猛然とプレッシャーをかけた。前戦に比べて手数よりも1発の威力で押そうとしている印象だ。一方、王座奪還を目指すアンカハスも負けじと強い左を差し込み、右フックを返し、2回には距離を構築してリズムに乗ったかに見えた。前回は減量が最終段階で停滞し、「いいコンディションではなく、試合中に脚がつってしまった」と明かしたアンカハスには、「今回勝って、大みそかに日本でイオカと戦いたい気持ちは今もある」と、MP(マニー・パッキャオ)プロモーションのショーン・ギボンズ氏は語っていた。その目標に向かい、前チャンピオンは懸命に動き、現チャンピオンの前進を逆手にとってカウンターを合わせにいった。

接近戦でアッパーを突き上げるマルティネス
接近戦でアッパーを突き上げるマルティネス

 しかし、マルティネスの勢いは止まらなかった。アンカハスの巧打にあうたび、間髪入れずに強振で圧し返した。ボディ攻撃にも耐えながら、6回終了間際に前チャンピオンを棒立ちにさせると、7回には猛攻に出た。被弾のダメージが色濃くなっていくアンカハスは諦めず、チャンスを信じてそこに立ち続ける。が、根競べの終盤戦、マルティネスは巧みに休む時間をつくりながら優位を譲ることなかった。採点はジャッジ2者が118対110、もう1人は119対109と、大差がついた。

マルティネスは「オレはキング・キラーだ」と語り、今後も大物食いを誓った
マルティネスは「オレはキング・キラーだ」と語り、今後も大物食いを誓った

 前回に続き、会場から病院に直行することになったアンカハスは、38戦33勝(22KO)3敗2分。一方、15戦全勝(8KO)と無敗を守ったマルティネスは、ボクシングのいろはを授けた亡き父に勝利を捧げ、さらに「これで母に家を買ってあげることができる」と喜んだ。後進のプロモートに勤しむ元世界2階級制覇チャンピオン、マルコス・マイダナが育てた世界チャンピオン第1号。31歳の勤勉なファイターに絶大な信頼を寄せるマイダナは、「115ポンドで長く戦える男。ビッグネームたちにも勝てるよ」と言い切り、とくに世界4階級制覇のレジェンド、ローマン・“チョコラティート”・ゴンサレス(ニカラグア)の名を挙げ、12月3日に予定されるファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)との3度目の“頂上対決”の行方に注目しているという。むろん、WBO王者、井岡への関心も高く、日本遠征を心待ちにしている。マルティネス自身は、「イオカはすばらしいチャンピオンだ。けれど、忘れないで。僕は、キング・キラーだからね」と不敵に笑った。

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