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2019-11-23

【ボクシング】細川バレンタイン、45秒KO 2階級下げて2階級制覇に好発進

前日本スーパーライト級チャンピオンで現日本同級4位にランクされる細川バレンタイン(角海老宝石)は22日、東京・後楽園ホールで日本ライト級10位、有岡康輔(三迫)とライト級8回戦を行い、右一撃、わずか45秒でKO勝ちを収めた。細川は4月に井上浩樹(大橋)に敗れて日本王座を失ってからの再起戦。今後はこの日のライト級からさらに1階級落としてスーパーフェザー級で日本、地域タイトルを目指すという。「井上尚弥選手とドネア選手の試合を見てから、ボクサーであることを誇りをもって語れるようになりました」という細川は38歳にして、未知の領域にチャレンジする。

上写真=右フック一発でKO勝ち。細川が見事に再起

 あっという間の痛烈KO劇だった。

「まぐれだけど、スーパーまぐれじゃない。ちゃんと練習してきたパンチ。(両ガードの)内側を攻めていけばガードが狭まってくるから、外側から殴れって。試合直前に教わったことをそのままやったから、倒せたんです」

 なるほど、細川のそんな言葉のとおり、短時間の戦いに終わらせた『右フック』は、計算されつくしたパンチだったのだ。

 9勝8KO(5敗1分)の有岡はハードヒッターだし、試合がもつれればその闘志が際立つ。危険な相手は、いち早く倒したほうがいい。「まさか、あんなに早く終わるとは思いませんでしたけど」という細川が小競り合いから、いきなり打ち込んだワンパンチがこの戦いのすべてとなった。横ざまに倒れた有岡は何とか立ち上がったが、足元が定まらず、レフェリーの染谷路明はそのままカウントをテンまで数えた。

 細川は初めてやったことがふたつあるという。ひとつ目は基本の体得。

「これまでは目の前にある相手の顔を思いきり殴っていただけ。井上選手に負けた時、ケンカなら負けないぞと思ったりしましたが、そういうわけにはもちろんいかない。もっと強くなるために、初めて基本を学んでいます。38歳では遅すぎる? 進化していませんか、僕? 前例がないのなら、僕が見せます」

 もうひとつは減量。と言っても序曲に過ぎないが。

「これまではナチュラル(ウェイト)のままに戦いたいとだけ考えていました。スタッフがスーパーフェザー級まで体重を落とせというから、それは厳しい、今回はライト級でやらせてくださいと言ったんです。それでも、試合前3週間がまんしていスイーツを4週間のがまんにしたら、60.1キロまでウェイトが下がって。次からスーパーフェザー級でやります」

 がまんしたスイーツとは、甘味ガムだと鈴木眞吾会長にばらされても、細川は勝利の弁はとめどなく続いた。

今後はスーパーフェザー級で戦うと細川は宣言した

好試合続出。劇的逆転TKO劇も

『GENKOTSU Vol.6』と銘打たれたこの日のボクシング興行は、好試合が続いた。なかでもドラマチックだったのは、大野俊人(石川ジム立川)と加藤寿(熊谷コサカ)のスーパーウェルター級8回戦だ。

 3年前の東日本スーパーライト級新人王、大野が、サウスポーの加藤のリズミカルなボクシングに苦しめられながらも、8勝8KO(4敗)の豪打をフルに発揮して倒しまくる。5回にも左フックでこの試合3度目のダウンを奪い、勝利を決定づけたかと思えた。が、その直後、加藤の渾身の左ストレートで大野は激しく昏倒。レフェリーはカウントを途中で中止して、加藤のTKO勝ちを宣した(タイムは2分50秒)。

 このところ技巧の冴えが光る日本ミニマム級7位、佐宗緋月(T&T)は、頑張り屋のデシエルト長池(青木)を多彩なパンチでコントロール。左フック、右ストレート、アッパーと上下にうまく打ち分けてポイントを先行させる。終盤、ペースダウンしたが、なんとか逃げ切ってランキングを守った(ジャッジ3者とも77対75の3−0判定)。

 2011年の全日本フェザー級新人王、熊添ユウキ(石川ジム立川)は本名の小澤有毅からリングネームを変え、筑豊ジムから移籍して1年2ヵ月ぶりの再起戦を行った。そして、ウィラポン・キンサンティア(タイ)をボディ攻撃で4度倒して3回1分43秒TKO勝ちを収めた。力の差があるカードで、デビューから無傷の10連勝のあと5連敗と苦しいキャリアを経験してきた熊添の将来を占うのは次戦以降となる。3階級制覇王者の長谷川穂積(真正)とも対戦経験のあるウィラポン(2013年にTKO負け)だが、もちろん、偉大な元世界バンタム級王者ウィラポン・ナコンルアンプロモーションとは別人。

 また、ライト級4回戦では日本タイトル22度防衛の日本記録を持つ名王者リック吉村氏が育てるアメリカ生まれの19歳、ドミニク謙心(リングサイド)が、一道宏(T&T)の右ストレートで初回56秒TKO負けに沈んで不敗の連勝が3(1KO)でストップする、ちょっとした波乱もあった。

3度のダウンを喫した大野が左ストレートで奇跡的な逆転TKO

多彩なパンチで長池(左)をコントロールした佐宗

元全日本新人王、熊添(左)はカムバック戦でTKO勝ち

一道が右強打でドミニク謙心を沈める

文◎宮崎正博 写真◎福地和男

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