元WBA・IBF世界ライトフライ級チャンピオン田口良一(ワタナベ)は20日、東京都内で会見を開き、引退を表明した。プロ叩き上げの4回戦でデビュー、全日本新人王、最強後楽園、日本王者を経て、世界王者に。さらに7度防衛、王座統一と数々の功績をリングに残し、13年間のボクサー生活に終止符を打った。
写真上=渡辺均会長(右)と引退会見に臨んだ田口
「前のようにモチベーションを上げることができず、ボクシング人生をやり切ったという思いから引退を決意しました」
田口はマイクを手に、穏やかな表情でリングとの別れを表明した。
4回戦の頃はスタミナがなく、8回戦に上がるのが心配だったと振り返る。
「それが12回戦を戦うことになるのだから、不思議な気がします」
最も印象に残る試合を問われると「33戦、すべてです。ひとつには決めきれない。強いて言えば……全部です(笑)」
ただ、井上尚弥との日本タイトルをかけた試合(判定負け)については「あの試合があったから世界チャンピオンになれたと思います」と言い切った。
渡辺均会長によれば、井上戦は指名試合だったが、すでに世界ランク入りしていた田口には、タイトルを返上して世界挑戦の選択肢もあったという。しかし、田口が強く対戦を望んだことでカードは成立した。
「井上選手より強くないと思われていたから、大丈夫と思ってやれた。自分のプライドも全部出しきれた。逃げずに戦えて良かったです」

井上戦は「全部出しきれた」
田中恒成戦後は「何も考えず」のんびり過ごしてきたという。もともとラーメンなど麺類が好きで、チャンピオン当時から飲食に関わる仕事がしたいと言っていたが、「よく考えてみれば、飲食に関して自分は素人。料理が得意なわけでもない。それなら自分の経験、知識を生かせるものを」と、ジム経営に心が傾いた。今は週に3回ほど、フィットネスジムでアルバイトしながらトレーナー修行に励んでいる。

WBA、IBF、リングマガジンのベルトを掲げる。約束されたWBAのスーパーベルトはまだ届いていないという
「高校を卒業するとき、周りがみんな就職活動する中で、自分はボクシングをやると言いながら挫折しかけていた。情けなくて、本気で世界チャンピオンになろうと頑張った。ボクシングのおかげで沢山の人と出会い、沢山の人に支えられ、信じられないことに本当に世界チャンピオンになることができ、統一戦までやれた。感謝の気持ちしかありません」
チャンピオン時代から、こちらが恐縮するほど謙虚で控えめだった田口は、現役に別れを告げる席でも、ひたすら感謝の言葉を繰り返した。田口を送る引退式のテンゴングは12月10日、後楽園ホールの興行で鳴らされる。
文◉藤木邦昭
写真◉本間 暁
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