ニックネームどおりのパワーヒット炸裂!──。OPBF東洋太平洋バンタム級チャンピオンで、WBC15位、IBF9位の栗原慶太(26歳=一力)が15日、東京・後楽園ホールで54.0kg(バンタム級リミット+500g)契約8回戦を行い、IBF同級4位のスックプラサード・ポンピタック(31歳=タイ)を2回1分58秒TKOに下した。
ノンタイトル戦ながら、世界ランカー同士となる重要な一戦。栗原は、ものの見事にこれをクリアした。2回、栗原の右に合わせて懐に飛び込んできたポンピタックを、スウェーバックしながら左フック一閃。「相手は必ず出てくると見て、ずっと練習していたパンチ」(沼田康司トレーナー)で前のめりに倒すと、立ち上がったポンピタックをロープに詰めて連打。左ボディブローから右を狙い打つと、レフェリーが試合を止めた。
「世界をもうすぐ狙える位置にいたのに……」と悔しがるポンピタックは、敗北の瞬間、泣きじゃくった。それだけ本気でやって来ていたということだ。
しかし、栗原の表情はいま一つ。「コンパクトに打ったり、出入りをしたりしたかったけれど、結局いつもの姿で成長を見せられなかった」というのだ。
直近に、ものすごいお手本の戦いがあったから。1週間前に行われた井上尚弥(大橋)対ノニト・ドネア(フィリピン)の“頂上決戦”だ。井上の打ち終わりの動作を意識して取り入れ、さらには「ドネアの両肩を入れ替えてのフェイントを、今日の試合で真似してみたけれど全然できなかった」。
だが、貪欲さ、探求心の旺盛さは、着実にこのハードパンチャーを進化させている。右ストレートを打つ際の体の使い方は、『ボクシング・マガジン11月号』の新連載「匠の扉」にあるとおり素晴らしい。これまで積み重ねてきたKOは、このブローがほとんどだったが、この日は、なかなか倒すのは難しい“引きカウンター”でダウンを奪ってみせた。
課題は、「ジャブで相手を崩す」かたち。しかし、左も多く出し、得意の右ストレートへとつなぎ、左フックで倒したのは理想形に近いだろう。これまでは被弾も多かったが、「距離で外すのがやりやすい」と気づき、それも実行していた。
これまた「スタンスとバランスを参考にしている」というWBC世界ライトフライ級王者・拳四朗(BMB)のように、広いスタンスを有効に使って、懐を深く感じさせることを意識すれば、相手にとってはもっとやりづらくなるはずだ。
井上尚弥を筆頭に、国内外でバンタム級は“猛者”が集うクラスとなった。「比嘉選手もバンタムに上がってくるようだし、リゴンドーも下げてくるみたいですね」と栗原。元WBCフライ級王者で、いよいよ復帰を果たす比嘉大吾(白井・具志堅スポーツ)と、元WBA世界スーパーバンタム級王者ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)の名を挙げ、「国内でも知名度のある人と戦って、僕の名前を知ってほしい」と、強豪との対戦を熱望する。
この日、初めてコールされたニックネームは「スラッガー」。
この試合に向けて、「Twitterで公募したら、みなさんがいろいろと寄せてくださって、その中から沼田さんと選びました」という。
ただの大振りパンチャーではなく、しっかりとした理論に基づいたハードパンチャーだ。まだまだ打ち終わりに隙があるが、そこはこれからいくらでも改善できる。
ストレートパンチャーは、魅力的に日々進化を続けている。
文_本間 暁
写真_小河原友信
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