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2019-09-13

【海外ボクシング】ウィークエンド・プレビュー金曜特別版 ヒーロー候補ヘイニーが暫定世界戦

恒例のウィークエンド・プレビューに先駆けて、金曜日(日本時間・土曜午前~正午)の魅力的なカードをご紹介。目玉は不敗のホープ、デビン・ヘイニー(アメリカ)が出場する13日、ニューヨークはMSG(シアター)のWBC世界ライト級暫定王座決定戦だ。

写真上=デビン・ヘイニー

9月13日/マディソンスクエア・ガーデンシアター(アメリカ・ニューヨーク州ニューヨーク・マンハッタン)

★WBC世界ライト級暫定王座決定戦12回戦

デビン・ヘイニー(アメリカ)VSザウル・アブドラエフ(ロシア)

ヘイニー:20歳/22戦22勝(14KO)
アブドラエフ:25歳/11戦11勝(7KO)

14日午前10時よりDAZNでストリーミング生中継

 ヘイニーの評価はすこぶる良い。今年5月に世界スーパーフェザー、ライト級元チャンピオンのホセ・ペドラサ(プエルトリコ)に食い下がったアントニオ・モラン(メキシコ)をチョッピング・ライトで豪快にKOしてから、その評価はまた一段とアップした。決してばたばたとなぎ倒すタイプではないが、密度の高いテクニカルなファイトには、『ネクスト・メイウェザー』のハイセンスがちりばめられる。KOなくしても、十分に堪能できる若手である。

 WBCではこの8月末に、あのワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)が王座決定戦に勝ってチャンピオンが決まったばかり。すぐさま暫定王座というのは理解しにくいが、ロマチェンコがIBF王者に挑み、4階級制覇を優先させる方針で、急きょ、ヘイニーの『世界戦』が決定した。安易に世界を冠にするファイトを増加させるのは好ましくないが、魅力的なスター候補の成長を促すとしたら、この際、うるさいことは言うまい。

 アブドラエフはジュニア時代からの長いアマ経験を持ち、プロ2年で上位に進出してきた。ハンク・ランディ(アメリカ)やウンベルト・マルチネス(コロンビア)といったベテランを連破しているが、ヘイニーに比べると派手な魅力には乏しい。予想が圧倒的に不利なのは仕方ない。ヘイニーとしては鮮やかに勝ち切って、評判に応える義務がある。

 ヘイニーはジュニア時代のアマチュア実績しかなく、通常18歳でしかプロのライセンスが下りないところ、16歳でメキシコでデビューし、4連勝をマークしてネバダ州の『特例』を勝ち取った。その後もじっくりとキャリアを重ね、この日にたどり着いた。小会場のシアターとは言え、MSGデビューはキャリアの新たなスタートラインになる。勝てば11月9日、メインはカネロ・アルバレス(メキシコ)対セルゲイ・コバレフ(ロシア)戦と噂されるロサンゼルスのカード出場がすでに決まっている。同じく売り出し中のテオフィモ・ロペス(アメリカ)が前戦の中谷正義(井岡)戦の苦戦で評価が足踏みしており、ここで一気に追いつき、抜き去りたいところだ。

◆女王セラノが熱血ウーマンと対戦

★WBO女子世界フェザー級タイトルマッチ&WBC世界同級暫定王座決定戦10回戦

ヘザー・ハーディ(アメリカ)VSアマンダ・セラノ(プエルトリコ)

ハーディ:37歳/23戦22勝(4KO)1NC
セラノ:30歳/38戦36勝(27KO)1敗1分

アマンダ・セラノ

 イーストコーストの女子スター同士の対決だ。ケイティ・テイラー(アイルランド)、クラレッサ・シールズ(アメリカ)らが知名度、稼ぎでリードしているが、勝ったほうが追いかけていくことになる。

 ふたりとも女子ボクサー不遇時代からの頑張り屋だ。ボクシングで食っていけず、総合格闘技に参戦して、厳しい現実を思い知っている。

 とくにセラノは常識破りのマッチメイクで売り出している。世界タイトルはなんと7階級制覇だ。とくにこの1年はスーパーライト級で世界一になったと思ったら、10㎏も減量し、スーパーフライ級で王座獲得。今度はその中間をとってフェザー級。こういうやり方は、いくらウェイトコントロールの耐性に女性が強いと言われても、なかなかできるものではない。

 とはいえ、中間距離、クロスレンジとともに上手に間合いを管理できるセラノが、やや単調なハーディを上回る可能性が強い。

◆アマチュア大国からプロへの挑戦

ムハマドーサル・マジドフ

 ロシア、キューバ、ウズベキスタンにカザフスタンと、アマチュア大国のプロ参戦は珍しくもないが、その中でもアゼルバイジャンは他国からもアマチュア・エリートをスカウトし、じっとオリンピックスタイル・ボクシングを貫いてきた。そんな同国から、トップ級が初めてプロに参戦する。ヘビー級のムハマードサル・マジドフ(32歳)だ。6回戦でエド・フォンテイン(アメリカ/30歳/12勝5KO6敗)とデビュー戦を行う。

 オリンピックではロンドン五輪の銅メダル止まりだが、世界選手権では3度優勝(スーパーヘビー級)の実績を持つ。現在4連敗中のフォンテインには楽勝しなければならない。

 このほか、スーパーバンタム級のムロジョン・アフダマダリエフ(ウズベキスタン/24歳/6戦6勝5KO)やウェルター級のダニヤル・エレウシノフ(カザフスタン/28歳/7戦7勝3KO)も登場する。

 もうひとつ、ヘビー級での再生を狙うマイケル・ハンター(アメリカ/31歳/17勝12KO1敗)対ロシアのタフガイ、セルゲイ・クズミン(32歳/15戦15勝11KO)の10回戦も注目のカードだ。

文◉宮崎正博
写真◉ゲッティイメージズ

ボクシング・マガジン 2019年10月号

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