
12日、東京・後楽園ホールで行われた日本女子アトム級タイトルマッチ6回戦は、チャンピオンの松田恵里(Team10Count)が2位モンブランみき(Reason押上)に5回1分55秒TKO勝ちし、初防衛に成功した。
写真上=松田は5回、右の一撃で試合を終わらせた
4回終了時点の採点が、ジャッジ3者ともイーブンだったと聞いて、松田の童顔にほんのわずかながら動揺が走った。
「ほんとうに? やばいじゃないですか」
しばし、自分の中の疑問符を振りほどくようにコメントをつないでから、反省の一言。「パンチは当てるだけじゃダメなんですね」
長いアマチュア実績がある。プロになって2戦目で東洋太平洋のチャンピオンベルトを巻いた。それでも知らなかったプロとしての価値観だった。痛い思いをしないで理解を生んだとしたら、それは最高の途中経過である。
記者席で見ていても、サウスポーの松田ははっきりとペースを奪えないまま戦っていたように見えた。元自衛官で自ら認める体力自慢、モンブランに体で押され、右ストレートをねじ込まれた。2回、松田の左ストレートを浴びてから、右目を腫らしながらも、旺盛に攻めて出る。挑戦者の右に左クロスで切り返すなど、一段違う技術を見せた松田だが、攻め数自体はやや心細いラウンドが続いた。
だからこそ、ラストはものの見事だった。左をわずかにのぞかせて誘い、ひとつタイミングを遅らせた右。フックというよりストレートに近い。この一撃でモンブランは倒れ込む。立ち上がったが、動きには明らかにダメージの影がちらつく。松田がロープに追い詰めたところで、レフェリーは試合を止めた。
リング上で顔をキャンバスにこすりつけるようにして泣いたモンブランは、涙が乾かぬうちにコメントを求められると「まだ、戦えたから」。女子ボクシングのレベル、対戦相手の技術差を考えるなら、防御を見失ったところで打ち込まれた一打は、選手生命さえ奪いかねない。このストップは仕方ない。「2回から右目が見えなくて、感覚的にどう戦っていたのかわかりません」というモンブランだから、サウスポーの相手に正面へ、正面へと向かい合ってしまった結果だと考えたなら、今後のキャリア作りのいい方針にもなったはず。
一方の松田は初KOに喜びながらも「連打でまとめて倒せる選手じゃないから、全勝0KOの選手になってやろうかと思っていました」と、ちらりと心中の強気をのぞかせる。確かに技で勝負するタイプ。でも、ここぞで決める必殺パターンがあれば、その魅力度は倍増する。
文◎宮崎正博
写真◎馬場高志
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