日本ウェルター級チャンピオン永野祐樹(帝拳)対同級9位・川崎真琴(RK蒲田)のタイトルマッチ10回戦は7日、東京・後楽園ホールで行われ、2回、ワンチャンスをものにした永野が集中打を浴びせ、この回2分41秒、レフェリーのビニー・マーチンがストップをコールしてTKO勝ちを収めた。永野は矢田良太(グリーンツダ)から奪ったタイトルの初防衛に成功した。
写真上=右ボディブローで攻める永野(右)
「右フックをボディに打って、左アッパーを返したあと、『あ、相手の体の力が弱まったな』と思って。あとは思い切り出ていきました」(永野)
勝負のキーポイントをしっかりと読み解いた。そうできたのは、チャンピオンになった自信からか。
「大阪でタイトルを獲ったときのほうが、最初から思い切りいけました。今日の初回は、なかなかいけなくて」

好スタートを切ったのは川崎(右)だった
立ち上がり、ペースを握ったのは川崎のように見えた。サウスポーの永野に対し、長い右ストレートを飛ばし、あるいは殴りつけるような右フックも織り交ぜる。
右ストレートのタイミングはピタリと合っていて、あるいはここ5戦で2勝3敗と星が上がっていない川崎の番狂わせも。そんな予感は、だが、つかの間だった。
2回になると、両者の攻勢が行き交うシーソーゲームになるのだが、パンチをよりまとめるのは永野のほうだ。左のカウンターからチャンスをつかみ、ロープに追い詰めると左ストレートを突きまくる。
「僕の武器は左しかありませんから、それを打つだけです」
ただし、より効果的だったのは、同じ左でもアッパーカット。ひとしきりの攻勢がやんだ後、川崎が不用意に前に出たとき、見事にボディをえぐる。その後、川崎の攻撃にいよいよ迫力がなくなった。
そして最後のシーン。やはり左ボディアッパーがきっかけとなった。ロープを背に後退する挑戦者を追って、永野が打ち込んだパンチは2ダース近く。その間、川崎は守りっぱなし。ストップの判断も、レフェリーの選択肢として十分にあり得た展開だった。

2回、永野(左)の怒涛の連打でレフェリーが割って入った
「相手が打ち疲れるのを待っていたつもり。止められたのは残念」という35歳の川崎は「負けたら引退と決意していたが、今は白紙」とコメントにも不本意がにじむ。専守防衛は負け戦というボクシングの原則をこれで知ったとしたら、別の戦い方も十分に考えられよう。
一方、控室の永野はどこか和んで見えた。
「ホッとしているの一言です。今後の目標? 頑張るだけ。自分はまだまだ、簡単にいい試合ができるような選手じゃありません」
それでも、「今は勝利したことを喜びたい。反省はしばらくたってから」。はっきりと武骨、堅苦しい。そうなるのも、自分自身をまっすぐ見つめる純情から。あまりにも率直すぎて、人間関係を作るのが下手という。「はい、切符は自分では売れません」と以前の取材で堂々と語っていたもの。
でも、この日のトランクスには、ひとつだけだが、企業名入りのワッペンが縫い付けてあった。
「先輩の松田(直樹=元東洋太平洋チャンピオン)さんに紹介してもらいました。切符も買ってもらえました」
持つべきは良き仲間。永野はニッとはにかむ。まっすぐ、正直、不器用。この30歳は憎めない。
文◉宮崎正博
写真◉小河原友信
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