アメリカンフットボールの華、カレッジフットボールの全米王座を決める、4強による「カレッジ・フットボール・プレーオフ(CFP)」は、1月1日、元旦の早朝から、生放送(日本テレビ系スポーツ専門局「ジータス」およびネットライブ中継「NFLGO」)で視聴できる。
お正月から、こんなに濃密な試合を日本語実況・解説で見ることができるのは本当にめでたい。
フィエスタボウルのミシガン大対テキサスクリスチャン大(TCU)について見どころを探った。
全米大学王座決定戦(CFP)準決勝 フィエスタボウル(アリゾナ州グレンデール ステートファームスタジアム)ミシガン大学ウルバリンズ(全米2位) vs テキサスクリスチャン大学ホーンドフロッグス(全米3位)日本時間2023年1月1日、午前5時45分【解説】村田斉潔 【実況】増田隆生
予想:ミシガン大がTCUを力でねじ伏せる 強力なディフェンスを誇るミシガン大が優位に立つ。昨シーズンから19試合を戦って、18勝1敗。ミシガン大が敗れたのは、昨シーズンCFP決勝のジョージア大戦だけ。失点で全米5位のディフェンスに、ラン獲得ヤード3位、ランTD数2位の強力なオフェンスが組み合わさっている。
TCUはラン・パスのバランスが取れたオフェンスで、得点は全米5位だが、ミシガン大のような強力ディフェンスとの対戦がない。他方で12勝中7勝は相手に28点以上奪われている。
特にランディフェンスは明らかに弱く、全米75位で、1試合平均でラン150ヤードと21回のTDを対戦相手に許してきた。ただ接戦に強く、勝負所のパスディフェンスで相手を制してきた。ミシガン大はそれを熟知しており、序盤から力で押すフットボールを展開するだろう。
ミシガン大のジム・ハーボウが、フットボール史上初めて、スーパーボウルと、CFPの王座決定戦の両方に出場経験を持つヘッドコーチ(HC)となる可能性が高い。
ハーボウHCの「ガチンコ最強チーム」・・・ミシガン大 長年の苦戦がウソのように、今季のミシガンは順調な戦いを続けてきた。8年目のハーボウHCが率いるミシガン大は、レギュラーシーズンで12戦全勝で、2年連続でビッグ10で優勝した。
強敵に対する勝ちっぷりが良かった。
全米10位のペンシルバニア州立大との対戦では、2016年以来の記録となる、ラン416ヤードで、ペンステートを41-17で粉砕した。
全米2位の宿敵・オハイオ州立大には45-23で完勝した。この試合ではビッグプレーが次々に飛び出した。エースQBのJ.J.マッカーシーがWRコーネリアス・ジョンソンに、69ヤードと75ヤードのTDパス。4Qには、RBドノバン・エドワーズが75ヤードと85ヤードのビッグランでTDを決めた。ディフェンスも、QB、C.J.ストラウドから2本のインターセプトを奪った。
敵地、オハイオスタジアムでの勝利は2000年以来。スタンドを埋めたオハイオ州立大のファンを黙らせた。
苦戦もあった。伏兵メリーランド大には7点差の勝利。そして強力ディフェンスのイリノイ大には残り9秒でKジェイク・ムーディーが35ヤードのFGを決めて、辛くも逆転勝ちした。
シーズン全体としては、ミシガンらしい、強い攻守のライン、強いラン、そして強いディフェンスで勝ち切ってきた。
ビッグ10チャンピオンシップではパーデュー大を撃破して2年連続の優勝。 エースRBブレーク・コラムが負傷してからも、チームのランオフェンスを支えたRBエドワーズが185ヤードを走る活躍を見せた。
今季2戦目でケイド・マクナマラとのポジション争いに決着をつけてエースQBとなったマッカーシーが、パス2376ヤードながら、20TDでわずか3INTと安定したパフォーマンス。RBエドワーズは、ラン117回で872ヤード7TD。1回平均7.5ヤードというパフォーマンスに加え、パスレシーブも巧みだ。
ランオフェンスの中心となったC(センター)のオルセグン・オルワティミは、OLとDLに贈られる最も栄誉な賞アウトランドトロフィーを受賞した。アルティワミとRBコラムは満票でオールアメリカンにも選出された。
ディフェンスは昨年のエイダン・ハッチンソン(現ライオンズ)のような圧倒的なスターはいない。しかし、長身DEマイク・モリスを筆頭に、ロスタックル5以上の選手が6人。QBサックは2以上の選手が11人と、的を絞りようがない。
プロスタイルのフットボールをカレッジに持ち込もうとして失敗を重ねたハーボウHCが、方針転換して作った、ガチンコフットボール最強チームが、今季ののミシガン大なのかもしれない。
準決勝は、フィエスタボウル、ピーチボウルの順番で行われる。ミシガンが勝った場合、「リベンジ」を誓うオハイオ州立大にとっては闘志を掻き立てる材料になるに違いない。
富士通オフェンスとも縁が深いダイクスHC・・・TCU TCUは、22年間チームを率いて、181勝79敗、二桁勝利11シーズン、ボウルゲーム出場17回という、チーム史上最高の名将だったゲイリー・パターソンHCに別れを告げ、今季からソニー・ダイクスをHCに就任させた。ダイクスは、それまで同じテキサス、同じダラス都市圏のサザンメソジスト大のHCだった。
余談だが、ダイクスは、日本のフットボールに縁が深い。富士通フロンティアーズで活躍したQBコービー・キャメロンはダイクスの教え子の1人。
また、現在も富士通でオフェンスコーディネーターを務めるピエール・イングラムも、ダイクス門下のコーチだった。富士通のオフェンスはダイクスの考えが部分的に受け継がれていると言ってよい。
プロでは、元ラムズ、現ライオンズのジャレッド・ゴフがダイクスの教えを受けたQBだ。つまり、ダイクスはパスオフェンスを軸にチームを組み立てるHCだ。
そのチームメーキングは1年目から奏功した。QBマックス・ダガンを中心に、13試合中10試合で30点以上。1試合平均40点を超えるオフェンスを構築した。
一方でTCUは接戦に強かった。ワンポゼッション差のゲームは5勝。ビッグ12のチャンピオンシップゲームでカンザス州立大に延長タイブレークで敗れはしたが、CFP進出は延長までもつれ込んだ段階で決まっていたとみる関係者は多い。
QBダガンは、パス3321ヤード、30TD・4INT、ランでも404ヤード6TDでハイズマントロフィー投票でも2位となった。RBケンドレ・ミラーは1342ヤード、17TD。この2人がオフェンスの軸となる。
ディフェンスでは7.5サックのOLBディー・ウィンタースと6サックのDLディラン・ホートンが中心。小柄だが高い運動能力を持つCBトレビアス・ホッジストムリンソンがボールホークぶりを発揮する。
ミシガンに、ランではなくパスを使った攻めを強いるフットボールができるかが、TCUが生き残るためのカギとなる。