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2019-08-09

【海外ボクシング】ウィークエンド・プレビュー 圧巻の強打者オルティスが地元リングに登場

北半球が夏真っ盛りの今週は、世界タイトルマッチなどのビッグファイトはない。そのかわりに、いまが伸び盛りのホープが数多くリングに上る。アメリカではゴールデンボーイ・プロモーションズの一押し、ウェルター級のバージル・オルティス・ジュニア(アメリカ)が重要なテストマッチ。フィラデルフィアでも、五輪2連覇のロベイジー・ラミレス(キューバ)がいよいよプロ初戦。常に世界の新しい波を確認したいファンなら、この週末もまた見逃せない。

写真上=バージル・オルティス・ジュニア(左)

8月10日/ベリゾン・シアター(アメリカ・テキサス州グランド・プレーリー)

◆強打の新星がまた一歩、世界へにじり寄る

★ウェルター級12回戦
バージル・オルティス・ジュニア(アメリカ)対アントニオ・オロスコ(メキシコ)

オルティス/21歳/13戦13勝(13KO)
オロスコ/31歳/29戦28勝(17KO)1敗
※日本時間11日午前10時よりDAZNでストリーミング中継

 その圧倒的な強打でセンセーションを巻き起こすオルティスの登場だ。2013年のジュニアのアマチュア全米王者は、プロとしての下準備は9戦だけ。戦績が二桁に達すると、ギアを上げる。元世界王者のファン・カルロス・サルガド(メキシコ)をKO、3ヵ月前にはかつてタフな業師として知られた元暫定世界王者のマウリシオ・エレラ(アメリカ)をこれまた壮絶に倒してみせた。そして、今回の試合からまた一段、レベルアップした戦いとなる。

 オルティスの相手はアメリカ西海岸エリアのホープだったオロスコ。昨年、世界王座初挑戦ではWBCスーパーライト級王者ホセ・カルロス・ラミレス(アメリカ)に2度のダウンを奪われて、大差判定負けだったが、もともとの地力はある。21歳の新星が圧倒的な勝ちっぷりを見せることができたなら、このまま頂上に突っ走ってもいいのかもしれない。

 ダラス周辺にはウェルター級実力ナンバーワンとも言われるエロール・スペンス・ジュニア、さらにラミレスとの統一戦に敗れたばかりのWBOスーパーライト級王者モーリス・フッカーもいる。まさしくウェルター級の聖地になりそうな勢いだ。

 もうひとつ、オルティスには奮起する理由もある。フォートワースとダラスのちょうど中間にある地元グランド・プレーリーではプロ初のファイトとなる。6350人のキャパシティを持つこのコンサートホールは、この夜、熱狂に包まれるに違いない。

 なお、この試合にはWBAゴールドのタイトルがかけられている。

◆前座には渋い中堅、さらに若手が登場

 前座を固めるのはまずは北米バンタム級タイトルマッチ(WBAインターナショナル・タイトルマッチもかけられれる)。ジョシュア・フランコ(アメリカ/23歳/15勝7KO1敗1分)とオスカル・ネグレテ(コロンビア=アメリカ/32歳/18勝7KO2敗1分)が10回戦で争う。元気のいいこのふたりは、これが続けざまの3度目対戦。フランコが1勝1引き分けと星をリードしているが、いずれも大接戦だった。今度こそ、どちらかがはっきりと決着をつけられるか。

マルセリノ・ロペス

 ライト級からスーパーライト級にキャリアを展開しているマルセリノ・ロペス(アルゼンチン/33歳/35勝20KO2敗1分)は地味ながら、着実に戦果を挙げる。今回は7連敗から這い上がってきた長身サウスポー、ダニエル・エチェバリア(メキシコ/27歳/21勝18KO8敗)が相手。格の違いを見せたい。

 勢いを感じたいなら、もっと若手の試合に視線を移したい。ライト級10回戦に登場するエクトール・タナハラ(アメリカ/22歳/17戦17勝5KO)、スーパーウェルター級8回戦のトラベル・メジョン(アメリカ/24歳/14戦14勝12KO)はGBPが大事に育てているタレント。タナハラは全米選手権、全米PAL選手権を制した長身の元トップアマ。もっと迫力がほしい。身長188センチのメジョンは“ブラックマジック”のあだ名を持つ変則的なパンチャー。ややブランクがちなのは気になるが、パワーパンチは魅力だ。

まだまだあるぞ!注目カード

◆ロベイシー・ラミレスがついにプロデビュー

ロベイシー・ラミレス

 アメリカ・ペンシルベニア州フィラデルフィアのリアコーラス・センターから10日、ESPN+で中継されるカードでは、なんといってもロベイシー・ラミレス(キューバ/25歳)のプロデビュー戦に注目したい。

 ロンドン五輪のフライ級(52キロ級)、リオ五輪ではバンタム級(56キロ級)と連覇してきたラミレスは、こと才能面では特級と評価されてきた。長い間、アメリカでトレーニングを重ねていて、プロ入りが待望されてきた。トップランクと契約し、ようやくその第一歩を刻むことになった。現在のフェザー級は強力なリーダーがいないまま、強豪がひしめき合う混戦模様。ラミレスが魅力ある戦いを披露できれば、早い段階でトップ戦線に切り込んでもいける。なお、試合は4回戦で行われる。

ジェイソン・ソーサ

 この日のメインベントはスーパーフェザー級10回戦。フィラデルフィアの武闘派、ジェイソン・ソーサ(アメリカ/31歳/22勝15KO3敗4分)が、MMAのリングにも立つハスキル・ローズ(アメリカ/31歳/27勝13KO2敗1分)と戦う。一度はWBAスーパーフェザー級王者にもなったソーサだが、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)の技巧に歯が立たずに棄権TKO負け。その後にベテランのユリオルキス・ガンボア(キューバ)にも敗れている。この戦いで勢いを取り戻したい。

 前座カードではミドル級のエドガー・バーレンガ(アメリカ/22歳/11戦11勝11KO)、ウェルター級のポール・クロール(アメリカ/24歳/4戦4勝4KO)に目をつけたい。バーレンガの11KOはすべて最初の3分以内。やや粗さはあるが、その強打は確かだ。クロールはバリバリのトップアマで、2015年世界選手権チャンピオンのモハメド・ラビ(モロッコ)にも勝っている。リオ五輪出場に最後の最後まで粘ったが、一歩届かなかった。プロで活躍して、その悔しさを晴らしたい。

◆チャベス・ジュニアが2年ぶりに再起

フリオ・セサール・チャベス・ジュニア

 元WBC世界ミドル級チャンピオンというより、同名のメキシコ・リング最大のレジェンドの息子といったほうが通りは早い、フリオ・セサール・チャベス・ジュニア(メキシコ/33歳/50勝32KO3敗1分1NC)が10日、メキシコ・ハリスコ州サンファン・デロス・ラゴスで、2017年5月以来のカムバック戦を行う。

 185センチの長身でうまい位置取りから、試合をコントロールする技巧が冴えていたチャベスも、前戦ではカネロ・アルバレス(メキシコ)の圧力の前に何もできないままの完敗。しかし、まだまだ名前の波及力は目覚ましく、カムバックの話と同時に、前IBFチャンピオンのダニエル・ジェイコブス(アメリカ)との対戦話が持ち上がった。ジェイコブス戦があるにしろないにしろ、まずはここをしっかり勝っておかないと話にならない。対戦するエバート・ブラボ(コロンビア/34歳/25勝19KO10敗1分)はここ10戦で4勝しかしていない。

文◎宮崎正博
写真◎ゲッティイメージズ

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