8日、東京・後楽園ホールで行われた東洋太平洋スーパーバンタム級タイトルマッチ12回戦は、チャンピオンの勅使河原弘晶(輪島功一スポーツ)が挑戦者の同級3位・大森将平(ウォズ)を最終回2分36秒TKOで下し、2度目の防衛に成功した。
写真上=勅使河原の左が大森を捉える
「今日のために、すべてを懸けてきました」ーー。負ければすべてを失う覚悟で臨んだ一戦を制し、勅使河原は声を張り上げた。この夜に懸けていたのは、世界戦線への生き残りだけではない。少年院を出てから多くの人に支えられ、ボクシングで築いてきた、これまでの人生そのものを失う恐怖との戦いでもあった。
両ガードを下げた奔放な動きから思い切りよく放つ右で、勅使河原は初回からペースをつかんだ。強打のサウスポー大森はこのパンチのタイミングが読めず、後手に回ってしまう。見ていると飛び込まれ、ジャブを打てば右、アッパーには左フックを合わされてリズムに乗れない。
4回と8回の終了後に公開された途中採点で大きく引き離され、5回には勅使河原の有効なパンチで右目上も切り裂かれた大森は、終盤逆転KOに望みを託すしかなくなった。
9回、その大森が鮮血を滴らせて反撃に転じる。強烈な左ボディブローからの連打で勅使河原を追い詰めた。しかし、勅使河原はここをしのぐと、11回には逆にワイルドな右で大森を棒立ちにさせる。最終回は動きの落ちた大森を逃さず、渾身のラッシュでレフェリーストップを呼び込んだ。
「前半に倒すと言われたので、絶対に後半倒そうと思っていた。そのとおりにできました」
この一戦に向け、勅使河原は2人の元王者に師事。長谷川穂積さんにはスパーリングでパンチの精度を磨かれ、亀海喜寛さんにはフィジカル強化や栄養も含めたコンディショニングと、ほとんど自己流だったスタイルに新たな理論をミックスしてきた。それに加えて、輪島功一会長から乗り移った「気持ちだけは絶対に負けない」という魂。
「もう国内でトップじゃないですか?」。キャリア最大の難関を突破して、勅使河原の視界が大きく開けてきた。
文◉藤木邦昭
写真◉小河原友信
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