アメリカンフットボールの世界最高峰、米プロフットボール・NFLは現地1月7日(日本時間8日)に2022年レギュラーシーズン最終第18週の2試合を行った。
勝ったほうがAFC南地区優勝でプレーオフ進出となる、ジャクソンビル・ジャガーズ対テネシー・タイタンズの一戦は、ジャガーズが4QにディフェンスのビッグプレーでTD(タッチダウン)を決めて、逆転勝ちした。ジャガーズは今季を9勝8敗で終えて、5年ぶりの地区優勝とプレーオフ進出を決めた。
NFL Week18 ジャクソンビル・ジャガーズ ○20-16● テネシー・タイタンズ(2023年1月7日、フロリダ州ジャクソンビル TIAAバンク・フィールド) 先制したのはタイタンズ。1QにKランディ・ブロックが51ヤードのFG(フィールドゴール)を決めた。2Qには、QBジョシュ・ドブスからTEチグ・オコンクォに21ヤードのTDパスが決まった。
追うジャガーズは、2Q終盤に、QBトレバー・ローレンスからWRクリスチャン・カークに25ヤードのパスが決まってTD。しかしタイタンズは前半最後のプレーでブロックが39ヤードのFGを決めて、6点差で後半へ折り返した。
その後、ジャガーズが2本、タイタンズが1本FGを追加して、タイタンズが3点のリードで迎えた4Qの終盤。タイタンズのQBドブスに、ブリッツしたジャガーズSレイショーン・ジェンキンスが襲い掛かってファンブルフォース。OLBジョシュ・アレンがリカバーしてリターン、逆転TDとした。
ジャガーズはそのまま逃げ切って、地区優勝。プレーオフは第4シードとなった。
「ロン毛」QBローレンス成長 TDパス倍増、INT半分以下に 2年前は1勝15敗、昨年は3勝14敗で、2年連続NFL32チーム中の最下位。低迷にあえいでいたジャガーズが、レギュラーシーズンの最後に、ホームのファンの前で歓喜の雄たけびを上げた。
ヒーローはアレン。ビルズのスターQBと同名で知られるエッジラッシャーは、2019年のドラフト1巡で入団した。その2年後、1巡全体1位でQBローレンスが入団した。アレン、ローレンス、そして今春全体1位で入団したDEトレボーン・ウォーカーがこれからのジャガーズを支える。
昨年のジャガーズは迷走の一言に尽きた。鳴り物入りで迎えたカレッジフットボールの名将アーバン・マイヤーは、カレッジとNFLとの違いに適合できず、1シーズン持たずに解雇。1年目のQBローレンスは被INT(インターセプト)17、TDパスは12本と散々な成績だった。ロングヘア―に貴族的な風貌のローレンスは、高校では2年以降3年間で46連勝、クレムゾン大では38勝2敗。アマチュアでは、ほとんど負けを経験したことがないエリートが、プロでは辛酸をなめ続けた。
ジャガーズは今季、イーグルスでスーパーボウル優勝経験を持つ、QB出身のダグ・ペダーソンをHCに迎えた。パッカーズで、長年にわたり、名QBブレット・ファーブのバックアップを務めた経験を持つペダーソンはローレンスの指導には適任だった。
ローレンスは今季全17試合で先発、パス4113ヤード、成功率66.3%、25TD・8INT。成功率は1割上昇し、TDパスは倍以上、INTは半分以下になった。
さらにRBトラビス・イーティエンヌも負傷から復活したのが大きかった。ローレンスとは、クレムゾン大で3年間一緒にプレーしていたイーティエンヌだが、膝に重傷を負って2021年は全休。これがローレンスのパフォーマンスに大きく影響していた。イーティエンヌはラン1125ヤードだけでなく、パスレシーブでも316ヤードとローレンスを助けた。
補強も当たった。カーディナルスから獲得したWRクリスチャン・カークはパスレシーブ1108ヤードで8TD、レイダースから移籍のWRゼイ・ジョーンズは823ヤード5TD、ジャイアンツから加入のTEイーバン・イングラムは766ヤード4TD。パスレシーブ上位3人は全員今季からのメンバーだった。
それでも、前半は苦戦が続いた。第10週までで3勝7敗。「また負け越しか」「また二桁敗戦か」とチームもファンも疑心暗鬼にかられた。
チーム力は上がっていた。7敗のうち6敗はワンポゼッション差。オフェンスの決定力が問題だった。
バイウィーク明けの第12週からようやく、ローレンスのパス能力が開花し始めた。レイブンズ相手にパス321ヤード3TD、第14週にはタイタンズ相手にパス364ヤード3TD、第15週はカウボーイズに318ヤード4TD。強力ディフェンスを誇る相手をハイスコアで退けた。
特にショートパスの判断が早くなり、つられてミドルへのパスも決まるようになった。ローレンスはバイ明け7試合でパス1779ヤード、12TD・2INTというパフォーマンスを見せた。
チームは後半7試合を6勝1敗。最後は5連勝で公式戦を終えた。
2019年に2勝14敗で、NFL最下位だったベンガルズは、全体1位でQBジョー・バロウを指名して、負の連鎖を断ち切った。そして2年後10勝7敗で地区優勝。プレーオフでも神がかり的な進撃を見せてスーパーボウルまで勝ち上がった。
2020年に1勝15敗でリーグ最下位、全体1位でローレンス指名、2年後に9勝8敗で地区優勝。ここまではベンガルズと同じ道をたどっているジャガーズに、これから何が待ち受けているのか。それを知っているのはフットボールの神様だけだ。
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AFCのプレーオフは6チームが決まった。第1シード:チーフス▽ビルズ▽ベンガルズ▽第4シード:ジャガーズ▽チャージャーズ▽レイブンズだ。
残る1枠、第7シードの座をかけてペイトリオッツ、ドルフィンズ、スティーラーズが争う。プレーオフに進出する条件はチームごとに以下の通りとなる。
■ペイトリオッツ 8勝8敗
第18週はビルズと対戦。プレーオフに進出できるのは、以下の場合。
・ビルズに勝利
・ビルズと引き分け + ドルフィンズが引き分け + スティーラーズが敗戦か引き分け・ビルズに敗戦 + ドルフィンズがジェッツに敗戦 + スティーラーズがブラウンズに敗戦
■ドルフィンズ 8勝8敗
第18週はジェッツと対戦。プレーオフに進出できるのは、以下の場合。
・ジェッツに勝利 + ペイトリオッツが敗戦か引き分け
・ジェッツと引き分け + ペイトリオッツが敗戦 + スティーラーズが敗戦か引き分け
■スティーラーズ 8勝8敗
第18週はブラウンズと対戦。プレーオフに進出できるのは、以下の場合。
・ブラウンズに勝利 + ドルフィンズが敗戦か引き分け + ペイトリオッツが敗戦か引き分け
・ブラウンズと引き分け + ドルフィンズが敗戦 + ペイトリオッツが敗戦