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2023-02-22

変形性ひざ関節症教室 第10回 ひざの伸展・屈曲の動力源――大腿四頭筋とハムストリングス

 ひざは健康寿命延伸の要の関節。ところが、中高年になると、ひざ関節の軟骨がすり減り、「ひざが痛い」「水がたまる」「痛くて長く歩けない」「ひざか変形した」などといった症状に悩む方が増えてきます。本連載では、ひざの専門医・田代俊之ドクターが、ひざ関節の構造と機能、変形ひざ関節症の症状と治療について、やさしく解説していきます。今回のテーマは、ひざを動かす筋肉について。ひざの筋肉が衰えるとひざが不安定になり転びやすくなります。年をとっても鍛えることができるのでしょうか。

筋肉を鍛えるとひざが安定する

 関節の動力は骨格筋(骨を動かす筋肉)です。ひざ関節では、太ももの筋肉の大腿四頭筋(だいたいしとうきん)とハムストリングスが主要な動力源です。

 太ももの前面にある大腿四頭筋が縮むとひざが伸びます。太ももの後面にあるハムストリングスが縮むとひざは曲がります。また、中腰のようなひざを曲げた姿勢を保つにも、忍び足のようにひざに衝撃が少なく歩くにも、両方の筋肉がバランスよく働く必要があり、これらの筋肉が衰えるとひざが不安定になり、転びやすくなります。


 軟骨は損傷すると回復しないと説明しましたが(連載第1回参照)、筋肉はどうでしょう。組織が半分生まれ変わるのに骨は7年、軟骨は117年かかるのに対し、筋肉はわずか48日です。生まれ変わる能力が高いので衰えるのも早いと考えられます。

 また、筋力は、「筋力=筋線維の太さ×筋線維の数」で示すように、筋線維の太さと数で決まります。筋線維の数は年齢とともに減少しますが、筋線維は何歳になってもトレーニングをすれば太くなります。基本戦略としては筋力トレーニングを続け、筋力を落とさないようにすることが重要です。


ひざの動きを助ける「膝蓋骨」

 膝蓋骨(しつがいこつ)はひざ関節の前面にあり、大腿骨との間に膝蓋大腿関節を構成しています(連載第5回参照)。大腿四頭筋と膝蓋靭帯の間にあり、大腿四頭筋が効率よく働くのを助けています。

 膝蓋骨は人体で最大の種子骨(摩擦に抵抗するために生じた骨片)です。この骨があることにより、頻繁に関節を動かしても筋肉のすり減りを減らすことができます。

 膝蓋骨の役割は、①大腿四頭筋のすり減り防止、②ひざ関節伸展力の効率化(てこの作用)、③ひざ関節の保護、です。


プロフィール◎田代俊之(たしろ・としゆき)さん
JCHO東京山手メディカルセンター整形外科部長
1990年山梨医科大学卒業後、東京大学整形外科入局。東京逓信病院、JR東京総合病院勤務をへて、2014年に東京山手メディカルセンターへ。2017年4月より現職。ひざ関節の疾患を専門とし、靭帯損傷、半月板損傷、変形性関節症などについて、長年にわたって幅広く対応している。2004年より中高齢者に向けたひざ痛教室を毎月開催している。日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。陸上競技実業団チーム(長距離)のドクターも務める。
 

この記事は、ベースボール・マガジン社の『図解・即解!基礎からわかる健康シリーズ 変形性ひざ関節症』(田代俊之著、A5判、本体1,500円+税)からの転載です(一部加筆あり)。 Copyrightⓒ2022 BASEBALL MAGAZINE SHA. Co., Ltd. All rights reserved.

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