週刊プロレスで好評連載中の鈴木秀樹「偏屈論」出張版として明日3月4日スターダム代々木第二体育館大会でおこなわれる王者・ジュリアvs挑戦者・雪妃真矢のワールド・オブ・スターダム選手権試合を偏屈者が斬る。
かつて2人が所属したアイスリボン時代にさかのぼる因縁によって、禁断の再会と言われる両者の対決。鈴木は〝令和の北斗vs神取〟になる可能性を秘めているとズバリ。男子レスラーながらジュリア、雪妃とも対戦経験がある偏屈者は禁断の赤いベルト戦をどう見るのか!?
――王者・ジュリア選手、挑戦者・雪妃真矢選手の両方と対戦経験がある男子選手は鈴木さんだけ。この一戦を語るに鈴木さんほどの適役者はいないかなと…!
鈴木 ほかにいくらでもいると思いますが…。まあ雪妃さんとは1回だけ試合しましたね。リボンタッグを懸けて。
――2018年6・16大阪の世羅りさ&雪妃vs鈴木&松本都の一戦ですね。
鈴木 あの時試合した選手はみんなアイスリボンを辞めちゃってますけどね。一人はもうプロレスも辞めてますけど。
――いや、松本都さんは引退してないで……。
鈴木 (さえぎって)名前も覚えてないですけどね。もう一般の人になられちゃったみたいですし。
――…今回は松本都さんに関してではなく、ジュリアvs雪妃のワールド・オブ・スターダム戦に関しておうかがいしたいなと。禁断の対決だと一部で話題になり、2・17後楽園でもヒリヒリするようなマイク合戦をしていました。
鈴木 (ジュリアと雪妃は)スターダムではほとんど絡みがないわけですから、アイスリボン時代にお互いに思うところがあって、憎しみ合ってるんでしょうね。僕も詳しい事情を知ってるわけじゃないけど、そういう空気感って伝わりますからね。お客さんも当然(詳細は)わかってないと思うんですけど、(ジュリアと雪妃の禁断感は)感じてると思いますよ。
――プロレス界で〝嫌いな者同士の試合ほどおもしろい〟と言われます。それはホントにそうなんでしょうか?
鈴木 …どうなんですかね。でも昔の女子プロレス、例えば全日本女子プロレスなんか本当にそうだったって言うじゃないですかね。スタッフの人とかも(対戦する選手を)炊きつけたりだとか。で、当時の全女は面白かったですからね。すべてがそうだとは言わないですけど、〝嫌いな者同士の試合は面白い〟っていうのはそういう意味では正しいのかもしれないですね。
――となるとジュリアvs雪妃も…。
鈴木 お互いのことが信用できない、嫌いだと思う相手との試合って、要はケンカなわけですよ。果たしてジュリアと雪妃さんはケンカをする覚悟があるのかどうか。これで普通に試合したら面白くもなんともないですけどね。ケンカになるかどうか、ジュリア次第じゃないですか。チャンピオンだから、とか、ビッグマッチだから、とか目に見えない縛りはあるかもしれないけど、目の前にムカつくヤツがいたらお前どうすんだ?って。
――スターダム最高峰王座のチャンピオンであろうと…。
鈴木 1人のプロレスラーとして。
――ジュリアさんならいくような気もしますが、ワールド・オブ・スターダムを巻いているという事実が重しになる可能性もありますよね。
鈴木 もうひとつは雪妃さんが現在を受け止めたうえでさらけ出せるか。
――どういうことですか?
鈴木 他団体に関してはわからないですけど、ことスターダムにおける立場は圧倒的にジュリアが上じゃないですか。女子プロレス界でいま最も大きな団体の一番権威のあるベルトを巻いてるという事実、過去に女子プロ大賞やプロレスグランプリの女子プロレス大賞を取った実績。他人に嫌な思いをさせてまで取った勲章に価値があるのかみたいなことを(雪妃は)言ってたみたいですけど、そんなの取ったモン勝ちなんですよ。雪妃さんだってわかってると思いますよ。アイスリボン時代は先輩だったかもしれないけど、いまはジュリアのほうが3段も4段も格上なわけで。ジュリアの指名がなかったら、そもそもこのタイトルマッチも成立してないでしょうし。
確かにそれって雪妃さんから見たら理不尽かもしれない。だけど世の中、理不尽なんですよ。そういう現実に対する怒りとか、悔しさとかいろんな思いがあるんであれば、それをリングでぶつければいいだけですよ。変にかっこつけずに、変な理屈でごまかさずに。だから、ジュリアが腹をくくってケンカできるか、覚悟を決めて雪妃さんはすべてをさらけ出せるか。そこにかかってるんじゃないですかね。
――なるほど。
鈴木 雪妃さんにとってはチャンスなわけですよね。日本で一番大きい団体の、一番権威があるベルトを持つチャンピオンから指名されて、代々木第二っていうビッグマッチで闘うわけですから。やるしかないでしょう。令和の北斗対神取ですよ。
――1993年4・2横浜アリーナでおこなわれた伝説のケンカマッチですね。
鈴木 あの試合は綺麗か汚いかでいったら汚い試合かもしれないです。でも、いまだに語り草になってるわけじゃないですか。
――伝説になれる可能性を秘めていると?
鈴木 それがベストだとは思わないですけど、ジュリアが(北斗の必殺技だった)ノーザンライト・ボムを使っていて、令和のデンジャラス・クイーンだと言われてるわけですからね……ジュリアと雪妃さんのことを偉そうに語ってきましたが、去年の秋ぐらいから結果が出ずに(1・1)日本武道館にも(2・21)東京ドームにも呼ばれてないお前が言うなと言われそうだなと、今さらながらにそう思ってきました。
――鈴木さんの悲哀はさておき、そういうフリーの厳しさを雪妃さんも少なからず味わってるかもしれませんし。
鈴木 僕は雪妃さんのフリーとしての活動を全部知ってるわけじゃないからわからないですけど、大きな結果を出せるチャンスであることは間違いないわけで。いまのジュリアの立場と一発逆転できる可能性だってある。ここで勝負しなかったらプロレスラーじゃないと思いますよ。