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2023-03-12

【相撲編集部が選ぶ春場所初日の一番】綱取り大関の貴景勝、わずかな乱れ突かれる。苦手の翔猿に敗れ初日黒星

綱取りの場所の初日、貴景勝は翔猿の土俵際の叩きに黒星。明日以降、どう立て直すか

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翔猿(叩き込み)貴景勝

ご当所と言える大阪で、果たして貴景勝の綱取りはなるか。今、日本のスポーツ界はWBC一色という雰囲気がないでもないが、相撲界のほうでもいよいよ注目の春場所が始まった。
 
綱取りを目指す、注目の貴景勝の初日の相手は返り小結の翔猿。実は昨年11月場所は押し出しで、先場所は叩き込みで敗れて2連敗しており、貴景勝にとっては、前半に当たると予想される力士の中ではもっとも嫌な相手だ。
 
立ち合い、貴景勝は、変化もあるこの相手に対して、迷いなく当たった。左足から踏み込み、勢い、角度ともよし。先手を取って攻め込むことに成功した。そのまま左ハズ、右からも押して出る。

一気に攻め切るかと思われた貴景勝。だが小刻みに足を運んで押したものの、相手との距離がもう一つ詰まらず、少し足に比べて腕と上体が前に出た、前のめりの形になった。翔猿はその一瞬を逃さず、右に回り込みながら叩き込み。綱取り大関はあっけなく土俵に這い、おなかに砂をべっとりとつけることになった。

場所前は、「何度もないチャンス。気負わずに最近はやれているので」と語るなど、いい精神状態で場所に臨めそうな感じがうかがえた貴景勝だが、やはり初日の緊張感と苦手相手という部分がプラスされ、どこかで上体に力が入ってしまったのだろうか。

このところ、番付最上位の力士は初日、三役の中で一番番付が下の力士(多くは西小結、今場所は西小結2人目の翔猿がそれに当たる)と対戦することが恒例になっているのだが、緊張感の高い初日に一番苦手な相手と当たる巡り合わせになったのは、綱取りの成否を方向づける運命だった、ということに果たしてなってしまうのか……。

貴景勝がそれをはね返すには、明日からしっかり星を重ねていく以外にない。この日は取組後のリモート取材には姿を見せなかったため、初日黒星のショックの度合いはこちらにははっきり見えないが、2日目にどう気持ちを立て直して臨むことができるか。明日の相手の玉鷲は立ち合いはまともな力士なので、その意味では思い切ってぶつかっていける相手。あとは、八角理事長も「全勝でいこうと考えず、楽な気持ちで。負けた次の相撲が大事」と言うとおり、初日の黒星を自身でどうとらえるか、というところがカギになってきそうだ。

この日の他の取組では、関脇勢は若隆景、豊昇龍が敗れるのを尻目に、新関脇の霧馬山が阿炎を一蹴。また、先場所新三役で勝ち越した小結の若元春と琴ノ若が力の伸びを感じさせる勝ちっぷりを見せたのが印象的だった。

幕内下位では髙安、錦富士、金峰山といったところが好内容での白星。このところ毎場所出ている平幕から優勝を争うダークホースは、今場所はこのあたりが候補か。

十両では朝乃山、落合の注目の2人が白星発進。十両最上位と最下位なので、普通なら顔は合わないが、このまま2人とも快進撃を続けていけば、優勝を掛けて激突、ということになる可能性もゼロではなく、楽しみが膨らむ。綱取り貴景勝の明日以降の巻き返しを含め、力士全員でWBCに負けない熱気を、浪速から吹かせてもらいたい。

文=藤本泰祐

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