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2023-01-20

【相撲編集部が選ぶ初場所13日目の一番】貴景勝が阿武咲引きずり下ろす。3敗3人、4敗3人の大混戦に

子供時代からのライバルの阿武咲を押し出し、大関の意地を見せた貴景勝。優勝争いはまたまたわからなくなってきた

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貴景勝(押し出し)阿武咲

鼻血を滴らせながらの勝ち名乗りは、今場所何度目だろうか。
 
貴景勝が激闘の末、阿武咲の挑戦をはね返して、再び優勝争いの先頭に並んだ。
 
貴景勝と阿武咲は、同学年で子供の頃から競ってきたライバル。優勝争いの中で、どちらにとっても絶対に負けたくない戦いだ。

最後の仕切りは、長めのにらみ合いからの立ち合い。ほぼ互角にぶつかり合った。貴景勝はすぐに左へ回ってのイナシ。阿武咲は少しのめりかけたが、立て直して突いて出る。貴景勝が再び左に回ってイナすと、2人の間に少し距離ができた。ここで貴景勝は右からの張り。張り返そうとした阿武咲の上体が少し立ったところを、一気に出て赤房下に押し出した。

阿武咲は、土俵を去るときも悔しそうな表情。「張られたときにムキになって、右(の張り手)が空振りました。冷静に冷静に行こうと思ったけど、自分が弱かったです」と、激闘を振り返った。

一方の貴景勝。気合と根性で勝ったとも見えるが、同時にしたたかさも見せていた。最後の仕切りは、ただにらみ合っていたわけではなかった。実は貴景勝は、阿武咲の十分な立ち合いを封じていたのだ。

今場所の阿武咲の好調の陰には、これまで先に両手をついて相手を待つ形だった立ち合いを、遅めに構えて、両手をちょっとクロスさせるような形から自分のペースでサッとついて立つ、という形に変えたことが一つあった。そこを考えたのだろう、貴景勝は最後の仕切り、ゆっくり構えて自分からは先に手をつかなかった。こうなると、番付が下の力士のほうが先に手をついて待つ、というのが相撲界の暗黙の了解。結局、阿武咲は先に手をつき、先場所までに近い形の立ち合いとなった。

立ち合いが先場所までのものに戻って、阿武咲が先手を取ることができなければ、やはり突き合いでは番付から言っても大関が一枚上。貴景勝の勝利は、ある程度当然の結果だった。

これで13日目を終わり、貴景勝、阿武咲、そしてこの日阿炎を破って、実力者のハードルを一つ突破した琴勝峰が3敗に並び、さらに4敗で霧馬山、大栄翔、東龍が続く形となった。

ちなみに14日目は、貴景勝が豊昇龍、阿武咲が霧馬山、琴勝峰は大栄翔との対戦が組まれた。千秋楽の相手は、明日の結果も踏まえて決まるので、あくまで現時点での予想となるが、V圏内に多く力士が残っているので、ある程度直接対決が組まれると思われ、貴景勝は若隆景、阿武咲は大栄翔、琴勝峰は東龍が有力だろう。

こうしてみると、3敗の3人は、貴景勝は過去のキャリアと番付上の力関係では上位だが、場所後半の相撲内容にはやや疲れが見える点が気がかり、阿武咲は今後立ち合いが戻れば相撲内容は最もいいものが期待できるが、対戦相手が強敵の連続、琴勝峰は明日勝てば展望が開けるが、番付としては最も下、と、それぞれ一長一短あり、強いて言えば番付上位の貴景勝に少し分がある気はするが、それほど3者に大きな有利不利はない感じがする。

さらに、今後、現状4敗の力士にも、自力で3敗力士を引きずり下ろすチャンスが多くありそうで、優勝ラインが4敗に下がる可能性も、ある程度あるということも言える。

明日、3敗対4敗の対戦が2番あることにより、いずれにしても賜盃の行方が千秋楽に持ち越されることは確定。まだまだ最後まで、ハラハラドキドキの優勝争いが楽しめそうだ。

文=藤本泰祐

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