アメリカンフットボールの世界最高峰・NFLの2023年ドラフトは、ミズーリ州カンザスシティで、現地4月27日夜(日本時間28日午前)から始まった。第1日の指名では、1巡全体1位で、カロライナ・パンサーズが、アラバマ大のQBブライス・ヤングを指名した。1巡全体2位で、ヒューストン・テキサンズが、オハイオ州立大QBのC.J.ストラウドを指名した。
驚きだったのは、テキサンズのその後の行動だ。全体3位の指名権を持っていたアリゾナ・カーディナルスとトレード、もう一つ持っていた1巡指名権(12位)を大幅にアップして、今ドラフトNo.1エッジラッシャー(EDGE)のウィル・アンダーソンJr.(アラバマ大)を指名した。ストラウドとアンダーソン、今ドラフトの攻守の目玉選手を一気に獲得した形となった。
全体4位では、コルツが、驚異的な身体能力のQBアンソニー・リチャードソン(フロリダ大)を指名した。リチャードソンと並んで、1巡指名が濃厚とみられていたウィル・リービス(ケンタッキー大)は、その後どのチームも指名せず2巡目以降に回ることになった。
マイアミ・ドルフィンズが1巡指名をはく奪されたため、1巡は31人が指名された。内訳は、ディフェンスが16人、オフェンスが15人。ポジション別※では、EDGEが7人で最多。OLが5人、CB、WR、DIが4人、QB3人、RB2人、TEとILBが1人。OLは全員がOT(オフェンシブ・タックル)だった。
大学別では、全米大学2連覇の王者ジョージア大、全米準優勝のオハイオ州立大、アラバマ大の3校が3人ずつで最多だった。
※「アメリカンフットボール・マガジン」では、ドラフトに際して、昨年からディフェンスのポジションを、
・DI(ディフェンシブ・インサイド、DTとNT)
・EDGE(DEとパスラッシュOLB)
・ILB(MLB)
・SF
・CB
に分けています。
大勝負に出たテキサンズ、「攻守の大黒柱」候補を両取り 過去3シーズン、低迷していたテキサンズが勝負に出た。全体2位でQBストラウドを指名したのはある程度は想定通りだったが、3位のカーディナルスの順位にトレードアップした。そして、今年のドラフトだけでなく、過去数年でも最高のパスラッシャーと評価される、アラバマ大のアンダーソンを指名した。予想外のトレードは、この日の全指名の中で最も大きなニュースとなった。
アンダーソンは、「プロ選手として成功する可能性は、(ポジションの違いを無視すれば)今ドラフトのどのQBよりも遥かに高い」(あるNFCチームのエグゼクティブ)とまで評価される逸材中の逸材で、解説者の村田斉潔さんも、「弱点が見当たらない選手」と激賞する。
テキサンズは、今季、新ヘッドコーチとして、49ersから38歳のデミコ・ライアンズを迎え、本格的再建に乗り出した。エースだったデショーン・ワトソンの放出以来、QB獲得は至上命題だったため、全体2位はヤングかストラウド、あるいは他のQB指名に使わざるを得ない。
だが、49ersでNFL最強守備を構築し、自身もスターLBとしてテキサンズでプレーしていたライアンズのために、チームがディフェンスでも核となるプレーヤーを考えていたのは間違いない。ライアンズ自身もアラバマ大の出身であり、最高の後輩を獲得できたことになる。
テキサンズの低迷は、攻守の大黒柱だった、QBワトソン、DEのJJワットが、戦列から離れたことで始まった。ワットはカーディナルスへ移籍し引退。ワトソンは紆余曲折を経て、今はブラウンズでプレーする。新たな攻守の金看板となり得る2人の若きタレントの獲得は、過去を忘れさせ、新たな未来に思いを馳せさせてくれる。テキサンズの地元・ヒューストンのファンは沸き返っている。
今回のトレードで、テキサンズは、1巡12位指名権と2巡33位、そして2024年の1巡目・3巡指名権をカーディナルスに渡し、アンダーソンを指名した全体3位と4巡105位を獲得した。テキサンズは、昨季QBワトソンのトレードで得た、ブラウンズの2024年1巡指名権をまだ持っている。
2023年NFLドラフトで1巡指名された全31選手 1巡全体1位指名 カロライナ・パンサーズ
ブライス・ヤング QB=アラバマ大学
1巡全体2位指名 ヒューストン・テキサンズ
C.J.ストラウド QB=オハイオ州立大学
1巡全体3位指名 ヒューストン・テキサンズ
ウィリアム・アンダーソンJr. EDGE(DE)=アラバマ大学
1巡全体4位指名 インディアナポリス・コルツ
アンソニー・リチャードソン QB=フロリダ大学
1巡全体5位指名 シアトル・シーホークス
デボン・ウィザースプーン CB=イリノイ大学
1巡全体6位指名 アリゾナ・カーディナルス
パリス・ジョンソンJr. OT=オハイオ州立大学
1巡全体7位指名 ラスベガス・レイダース
タイリー・ウィルソン EDGE(DE)=テキサス工科大学
1巡全体8位指名 アトランタ・ファルコンズ
バイジャン・ロビンソン RB=テキサス大学
1巡全体9位指名 フィラデルフィア・イーグルス
ジェイレン・カーター DI(DT)=ジョージア大学
1巡全体10位指名 シカゴ・ベアーズ ダーネル・ライト
OT=テネシー大学
1巡全体11位指名 テネシー・タイタンズ ピーター・スコロンスキー
OT=ノースウエスタン大学
1巡全体12位指名 デトロイト・ライオンズ ジャーマイア・ギブス
RB=アラバマ大学
1巡全体13位指名 グリーンベイ・パッカーズ ルーカス・ヴァン・ネス
EDGE(OLB)=アイオワ大学
1巡全体14位指名 ピッツバーグ・スティーラーズ ブロデリック・ジョーンズ OT=ジョージア大学
1巡全体15位指名 ニューヨーク・ジェッツ ウィル・マクドナルド四世
EDGE(DE)=アイオワ州立大学
1巡全体16位指名 ワシントン・コマンダース エマニュエル・フォーブス
CB=ミシシッピ州立大学
1巡全体17位指名 ニューイングランド・ペイトリオッツ クリスチャン・ゴンザレス
CB=オレゴン大学
1巡全体18位指名 デトロイト・ライオンズ ジャック・キャンベル
ILB=アイオワ大学
1巡全体19位指名 タンパベイ・バッカニアーズ カライジャ・カンシー
DI(DT)=ピッツバーグ大学
1巡全体20位指名 シアトル・シーホークス ジャクソン・スミス・ジグバ
WR=オハイオ州立大学
1巡全体21位指名 ロサンゼルス・チャージャーズ クエンティン・ジョンストン
WR=テキサスクリスチャン大学
1巡全体22位指名 ボルティモア・レイブンズ ザイ・フラワーズ
WR=ボストン大学
1巡全体23位指名 ミネソタ・バイキングス ジョーダン・アディソン
WR=南カリフォルニア大学(USC)
1巡全体24位指名 ニューヨーク・ジャイアンツ デオンテ・バンクス
CB=メリーランド大学
1巡全体25位指名 バッファロー・ビルズ ダルトン・キンケイド
TE=ユタ大学
1巡全体26位指名 ダラス・カウボーイズ メイジ・スミス
DI(DT)=ミシガン大学
1巡全体27位指名 ジャクソンビル・ジャガーズ アントン・ハリソン
OT=オクラホマ大学
1巡全体28位指名 シンシナティ・ベンガルズ マイルス・マーフィー
EDGE(DE)=クレムゾン大学
1巡全体29位指名 ニューオーリンズ・セインツ ブライアン・ブレジー
DI(DT)=クレムゾン大学
1巡全体30位指名 フィラデルフィア・イーグルス ノーラン・スミス
EDGE(DE)=ジョージア大学
1巡全体31位指名 カンザスシティ・チーフス フェリックス・アヌディケ・ウゾマ
EDGE(DE)=カンザス州立大学