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2023-06-16

中西学がトークショー出演、現在はガスステーション勤務「モンスターモーニングはプロレスラーじゃないとできない」【週刊プロレス】

中西学さん

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6月11日、JR京都駅近くのイオンモールKYOTOで開催された「スーパースター プロレストークバトル」。第1部のSareeeに続いて登場したのは2020年2月22日、東京・後楽園ホールで引退試合をおこなった中西学。その直後に新型コロナウイルスがまん延してさまざまな制限がかかったため、ファンの前に姿を見せるのは久しぶり。元気そうで、まずはひと安心。

トークは近況報告でスタート。現在は愛知県小牧市内のガスステーションに勤務しているという。現在も新日本プロレスとはレジェンド契約を交わしており、「(プロレス関係の)お仕事をいただけるなら、可能な限りしたいと思います。プロレスをやらせていただいた限りは、引退してもずっとかかわり続けていたい。こんな素晴らしい世界はないですから。ただ中途半端なことはしたくないんで、(裸を見せるのなら)ちょっと猶予ください」と、プロレスへの情熱は衰えていない。とはいうものの、レスラーとしてリングに上がることからは一歩引いたスタンスを崩さない。

昨年10月1日、アントニオ猪木の訃報を聞いた時のことを、「危ないっていうことは聞いてたんで。いつそうなってもおかしくない状態だったんでしょうけど」と振り返り、「人前では体調が悪いところを見せないようにしていた人でしたから。無理してコップ1杯のビールをカッと一気で飲む競争をしたり。“これがレスラーの飲み方や”って感じで自ら見せて。それを何回も。見るからに体に悪そうやなって思いましたけど。猪木さんは筋肉質の体でしたから、食べないと(ウエートが)落ちてしまうんでしょうけど、若い頃なんか、先輩に食事に呼ばれて駆けつけたら、まずラーメン10杯とか。まぁ多少は盛ってるかもしれませんけど、そういう話も聞きましたし。本当に昔のプロレスラーっていうか……」と“燃える闘魂”とのエピソードを披露した。

中西で食事といえば、モンスターモーニング。もともとストロングマンとタッグを組んだ際、朝食時に連係やフォーメーションを考えるためのミーティングをしようとなり、たまたまその時の食事を撮影してSNSにアップしたところ反響が大かったので続けたことで定番となっていった。

しかし今は、食事に時間を割けないので食べる量も減ったという。「あれはプロレスラーじゃないとできないことなんで。いくら食べ放題だからといって、のんびり食べてたら、会社クビになりますよ」と笑う。

そのストロングマンとのコンビは東京スポーツ新聞社が制定する最優秀タッグ賞を獲得した(2010年度)。特筆すべきは、タッグを組んだのはわずか1シリーズ、しかもタッグ王座を奪取したわけでもなくタッグリーグ戦に優勝したわけでもないのに受賞したこと。それほどインパクトが強かったわけだが、中西には戸惑いも。というのも、「あいつ、なんか知らんけど、俺にリーダーシップとってくれって言うんです。手綱を俺に持たそうとするんですけど、俺に持たしてどうすんねんって」。

現役時代を「楽しかった」と振り返り、「プロレスやってなかったら、何してたかわからん人間ですからね。いつも自分を見失ったらあかんって思ってたけど、試合したら自分を見失ってましたから。しっかり地に足を着けてなあかんと思いつつ、アルゼンチンで担ぎ上げて踏ん張ってるときは地に足が着いてるんですけど、それ以外はバタバタして」と自虐ネタをふんだんに散りばめながらトークは進んでいく。

どちらかというと言葉数は少なかった現役時代。試合で魅せていたといえば聞こえはいいが、本人は「余計なこと言うと(暴走して)、凧糸の切れた凧みたいになるんで。キリのいいとこでやめりゃいいのに、そのまま後先考えずバーンと言っちゃうとこがあるんで。大人としてね、そういうことしないようにしなあかんし、いつまでも調子のいい若手みたいなことしてたら示しがつかんから。そう言われて、その通りやなって。無口なキャラを通してたわけじゃなく、会社の方から『いらんこと言わんといてくれ』って釘刺されたんで……」。

中西の代名詞ともいうべき技が“人間マフラー”アルゼンチン・バックブリーカー。しかし、「そもそも習ってないし」と思わぬ暴露。館長(青柳政司)が平成維震軍時代、ニールキックで飛んできたのを受け止めて、そのまま肩に担いだのが始まりだと明かした。

アルゼンチン・バックブリーカーの名場面といえば、武藤敬司を破って『G1 CLIMAX』優勝を飾ったシーン(1999年8月15日、東京・両国国技館)。そこにも意外な真実が……。

「武藤さんはつかみどころにない男っていうか、(距離を取って闘うので)なかなかつかめなくて。ところがドラゴンスクリューを狙って足を取りに来てくれて。“あれ、こんな近いところにいるわ。だったら担いじゃえ”って感じで。まぁ武藤さんに限らず、俺って単純やから、次なにするかみんなわかってたでしょうね。いきなり担いだから決まったのかも?」と振り返るも、普通だととても持ち上げることができないような体勢からひょいと担ぎ上げたのだから衝撃的だった。しかも激しく上下に揺さぶると、武藤はたまらずギブアップしただけになおさら。その模様はTVで生中継された。

約18年間のプロレス人生で、やはり印象に残っているのは棚橋弘至からIWGPヘビー級王座を奪った試合(2009年5月6日、東京・後楽園ホール)。

「ミスティコが来日できなくなったりとか、いろんなことがあったなかで巡ってきたチャンス。せっかちな性格なんですけど、一つのことが実るまでは時間がかかるんです。若手の頃からいろんなことミソカスに言われて、あかんヤツやと思われて、周りをやきもきさせてきて。自分でも“オレってなんてダメなんや”と思いながらも、やっとベルトを手にした時の、山本小鉄さんのあの涙がすべてを流してくれましたね」と語った時の表情は、それまでの笑いを誘いながら話していた時のものとは異なっていた。

またWCW遠征時代のエピソードも披露。「1年半で100試合もしてないんじゃないですか。大きな試合は出してもらえなかったし。自分よりもっとすごい選手がたくさんいたし、お客さんが何を求めてるのかということを意識してたらよかったんですけど、自分はこうしたいんやっていうのばっかりアピールしてたんで、周りが見えてなかったですね」と振り返ったように、決して活躍したとは言い難い。

遠征していたのは、ちょうどアトランタ五輪(1996年)がおこなわれる前後。中西自身、現地にあった東京スポーツの支社を訪問して紙面で取り上げてもらうよう働きかけていたが、「刺激的な記事にならない」との理由で、その努力は実らなかった。

ほとんど日本で報じられなかった中西のWCW遠征時代だったが、同時期にアメリカに滞在していて毎週「マンデー・ナイトロ」や「サーズデー・サンダー」でクロサワ(中西のWCW時代のリングネーム)の活躍を観ていたファンが観覧者の中にいて、当時の試合を録画した“クロサワ特集”のDVDがプレゼントされた。

WCW時代に印象に残っている選手として挙げたのがミング(キング・ハク)。当初はタッグを組んでいたものの、仲間割れして対戦する間柄に。「とにかく力は半端ない」と語ったが、もしかすると試合で中西をコントロールできるのは彼しかいないとの判断でタッグが解消されたのではないかと勘繰りたくなるほど、ナチュラルな強さを誇るレスラー。ストリートファイトのエピソードにも事欠かない。

リングを離れた中西だが、スタミナ面や体力やケガの回復に有効な食事はないか独自に研究。中西流の“薬膳”でプロレス界をサポートしていきたいと考えているとともに、「それは一般の方にも有効なんで広めていけたらと思ってます」と語ったが、その次には「なんせ仕事が欲しいです」と笑わせた。

自虐的なネタを織り交ぜながら一つひとつのエピソードを語った中西。それは彼ならではの照れ隠し。リング上の“野人”とは異なる実直な素顔が垣間見えた1時間だった。
(文中敬称略)

橋爪哲也

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週刊プロレスNo.2249 (2023年6月28日号/6月14日発売) | 週刊プロレス powered by BASE

今週号の表紙は11年ぶりに開催された「ALL TOGETHER」のメイン後、オカダがダー!で締めたあとの出場選手集合写真です。新日本&全日本&NOAHの3団体が集結して、プロレス界としてコロナからの復興をアピールした大会。増刊号一冊分とほぼ同じ40ページ超ボリュームでリポートします。大日本の岡林裕二が7月からの無期限休業を発表。これまで大日本のストロング路線を関本大介との二枚看板で支えてきた岡林が今回の決断に至った理由はなんなのか? 会見後にインタビューして話を聞いています。「ALL TOGETHER」の真裏、新木場ではFREEDOMSが大会を開催。インディーの意地を見せるべく大日本と2AWからも選手が参戦。主要3団体興行では決して見られないデスマッチで新木場に熱狂を生み出した裏オールトゥゲザーを詳報。企画ものでは拳王がYouTubeで定期配信して好評を博している「拳王チャンネル」を特集。収録現場の潜入リポートなど人気配信番組の裏側に迫ります。「ALL TOGETHER」翌日の新日本・幕張とNOAH横浜、翌々日の全日本・郡山でも各団体さまざまな動きあり。新日本は真夏の「G1 CLIMAX」注目のブロック分け&対戦カードも発表されているので要チェック。そのほかスターダム大阪、GLEAT後楽園、ドラゲー福岡、DDT松山、大日本・横浜、東京女子・後楽園、666新宿など掲載。【注意】発送後の返品・返金は原則不可とさせていただきます。送料は無料ですが、第三種郵便での発送となります。約1週間でのお届けとなります。土日祝日の配送がありません。また、事前に購入されても発売日にお届けすることは、お約束できません。ご了承ください。

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