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2023-09-11

【相撲編集部が選ぶ秋場所2日目の一番】元大関の意地! 朝乃山が次期大関候補の琴ノ若の攻めをしのいで投げ飛ばす

琴ノ若を左からの上手投げで転がす朝乃山。次期大関候補に元大関の力を見せつけた

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朝乃山(上手投げ)琴ノ若

きのうも書いたが、この2日目、幕内でファン注目の一番はこの取組だ。新関脇で、次期大関候補の琴ノ若と、元大関の朝乃山の対戦。いつもは結びの一番になることが多い、懸賞の「森永賞」(ファンの投票でどの取組にかかるかが決まる)が、3番の大関戦を差し置いてこの対戦になったことでも、ファンの注目度が分かる。
 
2人はこれが初顔合わせだが、今、2人の力関係がどちらが上なのかは、ファンにとって次期大関候補の琴ノ若の力を計る上でも、元大関の朝乃山がどこまで力を戻してきているのかを計る意味でも興味深いテーマだ。どちらも逃げも隠れもしない正統派の四つ相撲なので、この勝負の結果は、正確に力関係を表すものである可能性も高い。
 
立ち合いは朝乃山は右差し左上手、琴ノ若は右を固め、左はモロ差し狙いか、はじきにいったか、という形でぶつかった。朝乃山は上手には手がかからず少し体が離れたあと、右に回ってイナシて崩した琴ノ若が先手を取った。左ノド輪で攻め込み、右を浅く差して出る。しかし朝乃山も右を差して琴ノ若の左をバンザイさせながら回り込み、この攻めを土俵際でしのぐと、左上手に手を掛けて逆襲。琴ノ若は土俵際で左を巻き替え、浅いモロ差しになるが、こらえて押し返そうとするところ、朝乃山がタイミングのいい左上手投げ。大関候補を投げ飛ばした。

「(土俵際は)ちょっと危ないと思いました。左足が(俵に)乗っていましたね」と、一瞬危ない場面もあった朝乃山だが、最後は「上手を深くして、反応で投げた」という。

「元大関の意地か?」と聞かれて、「相手は関脇、僕は前頭2枚目なので、胸を借りるつもりでいきました」とのことだが、「三役を目指すには、役力士を倒して引きずり降ろさないといけない」とも。若元春、琴ノ若と、“大関コンテンダー”を相次いで撃破したことで、その言葉が十分実現可能であることも証明した。先場所痛めた左腕は「負担はかけたくないけど、思い切ってやるしかない」という状態だけに、この調子でどこまで行けるかは分からないが、場所前半の上位戦を好成績で乗り切れれば、三役復帰が見えてくる。

一方、あと一歩攻めきれなかった琴ノ若は「もったいないですけど、勝たなきゃしょうがない。立ち合いからもっと流れを作らないといけないと思います。もっと攻めて形を崩して攻め切らないと」と、現時点では力が足りなかったことを認め、前を向いた。初黒星を喫したが、ここまでの内容は決して悪くなく、まだまだこのあと星を重ねて優勝争いに絡んでいく可能性は十分あるだろう。ここ最近は後半追い込み型の星の並びが多かったが、関脇となると対戦順が変わり、上位戦が遅くなってくるので、前半からしっかりと星を伸ばしていきたいところだ。

この日は新大関の豊昇龍が、北勝富士に先場所の優勝決定戦の雪辱を果たされ初黒星。まだ2日目なので慌てるには及ばないと思うが、「きのうの貴景勝関に比べたら、軽い分、圧力がないので立て直せた」(北勝富士)というコメントに表れているように、立ち合いの圧力はまださほどではないようだ。まあこの辺は、序盤戦なので手堅く、ある程度見ていく立ち合いを採用している部分もあると思うので何とも言えないが……。

2日目を終わり、三役以上での連勝は早くも大関霧島のみになった。荒れ気味のこの結果は混戦を示している可能性もあるが、トップに立っているのが番付、実力で上にいる力士だけに、逆に霧島がスッと抜け出してそのまま、という優勝争いになる可能性も。果たして前半でストップをかける力士が現れるかどうか。あすは大関に連勝して意気上がる北勝富士が挑む。

文=藤本泰祐

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