close

2023-07-22

【相撲編集部が選ぶ名古屋場所14日目の一番】伯桜鵬、逆転で北勝富士も破る。豊昇龍含め1敗3人で千秋楽へ

北勝富士を土俵際の突き落としで破る伯桜鵬。いよいよ千秋楽は、109年ぶりの新入幕優勝を懸けた戦いとなる

全ての画像を見る
伯桜鵬(突き落とし)北勝富士

土俵際の逆転で、この一番も、そして優勝争いにも残った。
 
新入幕伯桜鵬の勢いが止まらない。この日は2敗で単独トップを行く北勝富士との対戦。負ければ優勝圏外へと消える一番だったが、突き落としで勝利。逆に北勝富士を3敗に引きずり降ろして自らもトップに並んだ。
 
取組前、押し相撲の北勝富士に対して伯桜鵬のこの日のポイントは、廻しが取れるかどうか、かと思われたが、実際の相撲はちょっと違う展開で進んだ。
 
組みにいくかと思われた伯桜鵬はむしろ少し突き押しで相手をまず起こしに行くような立ち合い。逆に北勝富士のほうは、いつものように右手は前に出し、左をハズに入れにいったが、直後に誘い込まれるようにすぐに左を差す形になって左四つ。ともに下手だけ取って右は抱える形になった。
 
廻しを取れば有利かと思われた伯桜鵬だが、北勝富士も肩幅や重さがあるので、下手一本では簡単には攻められない。細かい動きで揺さぶりをかけるも、北勝富士はきのう伯桜鵬が見せた内掛けを警戒して右足を引いた構えで動じない。北勝富士はじりじりと圧力をかけ、巻き替えや上手を狙うが、これは伯桜鵬が嫌う。やがて北勝富士が小手に振ったのをきっかけに二人の体が離れた。ここが勝負と押して出る北勝富士。しかし伯桜鵬は土俵際、右に回りながら思い切った右突き落とし。体が流れた北勝富士を転がした。物言いがついたが軍配どおりで伯桜鵬が勝利。

「自分の立ち合いができなかった。左四つになってしまって慌てずに対処できたけど、そのあとの対応が慌ててしまって腰が抜けて足も揃った。あそこしかないと思ったけど、焦りましたね。ただ悔しい」と北勝富士。もちろんまだ優勝の可能性は残すが、この日に関しては無念の結果。ベテランの強さを示すことはできなかった。
 
この日、豊昇龍は若元春の注文相撲にも慌てずに、最後は小手投げを決め、3敗をキープ。千秋楽に豊昇龍と伯桜鵬の対戦が組まれたことにより、優勝争いはこの2人と北勝富士に絞られた。
 
豊昇龍と伯桜鵬は、「優勝は一つの夢だし遠い存在。あしたの対戦相手に勝てるように準備して土俵に上がりたい」という伯桜鵬がチャレンジャー精神でぶつかれるのに対し、むしろ番付が上で大関もかかる(負けて昇進もなくはないが……)豊昇龍のほうがやりにくいだろう。先手を取るには当たってノド輪か、それとも廻しを狙いにいくか。むしろ作戦を練らなければいけないのは豊昇龍のほうかもしれない。伯桜鵬はとにかく圧力負けせず、豊昇龍を慌てさせたり、強引な技を仕掛けてくる展開を作りたい。そこを突けば勝機が出てくるだろう。北勝富士は錦木戦。錦木は前半戦ほどの調子ではなくなっているので有利とは思うが、つかまってはダメ、かといって腰を引いて攻めても土俵際の突き落としがあるので、うまく距離を取って起こせるかがカギか。
 
さあ、いよいよあと一日。豊昇龍と伯桜鵬の大勝負の行方は? そしてさらに優勝決定戦はあるのか? もちろん誰が勝っても初優勝だが、豊昇龍が初優勝を手土産に大関へと昇進するか、北勝富士が本割から決定戦と勝ち抜いて平幕優勝するか、それともザンバラ髪の伯桜鵬が歴史的な新入幕優勝を飾るのか。ここまでくると、どれも同じぐらいの確率でありそうな気がする。間違いないのは、ファンが固唾をのむ千秋楽になることだけだ。

文=藤本泰祐

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事