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2023-07-23

【相撲編集部が選ぶ名古屋場所千秋楽の一番】文句なしの大関昇進! 伯桜鵬、北勝富士を連破し、豊昇龍が初優勝

優勝決定戦で北勝富士を押し出す豊昇龍。初優勝を決め、大関昇進と両手に花となった

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豊昇龍(押し出し)北勝富士

夢にまで見た優勝と、そして大関を手に入れた。「すごくうれしくて、我慢していたけど、止まらなかったです」。土俵を降りると思わず涙があふれた。
 
豊昇龍が、新入幕優勝を狙うザンバラ髪の若手も、平幕優勝を狙うベテラン力士も退け、初優勝を飾った。
 
豊昇龍、北勝富士、伯桜鵬の3人が3敗で並んで迎えた千秋楽。豊昇龍と伯桜鵬は直接対決があり、いずれかが3敗で残る。まず北勝富士が錦木を危なげなく引き落として優勝決定戦への進出を決め、豊昇龍と伯桜鵬はこの時点で、優勝のためには本割、優勝決定戦と連勝が求められることになった。
 
まずは、デビューからわずか4場所での幕内優勝へと進撃する若手の勢いを止められるのか、注目の対決となった伯桜鵬戦。どんな立ち合いで行くのかが注目された豊昇龍だが、左で張り、右は下から掬うようにいくという、あまりない形で立った。
 
両手とも外からいくことになるので、タイミングによっては潜られる危険もありそうに思える立ち合いだが、結果的にはこれがうまくいった。豊昇龍は伯桜鵬の左差し、右上手のどちらもすぐには許さないことに成功したのだ。すぐに右でおっつけ、伯桜鵬の左を跳ね上げる。伯桜鵬が慌てて左を差し込んでくるがそこで右上手。相手得意の左四つにはなったが、自分だけが上手を取る形を作った。相手が体勢を立て直す前にすかさず上手投げ。相手を土俵中央に転がし、「どうだ」という表情を見せた。
 
こうなれば優勝決定戦は負けられない。北勝富士には12日目に相手の攻めをさばきにいこうとして敗れているが、同じような相撲を取らないようにすれば、地力ではそう簡単に負けることはないはずだ。豊昇龍は「ここまで来たんだから、やるしかない」と、気持ちを固めて土俵に上がった。
 
優勝決定戦はやはり頭を下げての押し合いとなったが、豊昇龍は立ち合い直後にちょっと引こうかという気配を見せただけで我慢。しっかりと押し合いに応じたことにより、12日目には「押されない自信を持って」好結果を出した北勝富士が、それを一瞬忘れたのか、思わず引いてしまった。豊昇龍はすかさずついていって押し出し。最後に番付の違いを見せつけた。
 
これで今場所12勝とし、巷間言われる「直近3場所33勝」の大関昇進の目安もクリア、第一、優勝しているのだから、誰にも文句のつけようのない大関昇進となった。「(大関は)夢のようなところなんで、今、すごくうれしいです」。一歩先んじられたライバル霧島との出世レースも、これでまた並んだ。
 
場所中はいつも、取組に集中しているためか、取材陣にはつっけんどんなところもある豊昇龍だが、この日ばかりは優勝インタビューでも持ち前のはにかんだような笑顔のオンパレード。「優勝と大関昇進のうれしさを誰に伝えたいですか」と問われ、「一番最初に親方に。その後に叔父さんに言いたいです」と、いつもは比べられるのを嫌がる叔父の元横綱朝青龍の名前を自ら口にした。比べられたくはないが、やはりリスペクトする存在であり、目標ではあるのだろう。まずは大関となり、一歩近づいた。これからさらに、その背中を追っていくことになるが、まだ相撲が固まっていないうちに大関まで上がったところに、限りない伸びしろがあるように思う。将来、叔父さんのなった地位までもう一段上がる、その可能性を十分秘めた大関の誕生だと言える。

文=藤本泰祐

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