アメリカンフットボールの国内最高峰、Xリーグ「X1 スーパー」が先週開幕した。ライスボウル制覇・日本一の座奪還を目指す、オービックシーガルズの開幕戦を追った。
オービックシーガルズ○38-3●電通クラブキャタピラーズ (2023年9月10日 第一カッターフィールド=千葉・習志野市)
開幕から2週連続本拠地の習志野市で開催となったオービック。多くの地元ファンが詰めかけた。対戦相手の電通は今季からトップリーグのX1 スーパー初参戦のチーム。オービックとは実力・実績共に格段の差がある。その電通相手に、オービックが序盤苦戦した。オービックが最初のオフェンスで、3&アウトだったのに対し、電通は2回目のオフェンスシリーズでファーストダウンを3回更新、54ヤードをドライブして、FG(フィールドゴール)を決めて3点を先制した。
オービックオフェンスが反撃、RB西村七斗、李卓にボールを託して前進すると、共に新加入の米国人QBタイラー・クルカから、WR渡辺ジャマールへ26ヤードのパスが決まる。最後は西村がエンドゾーンに走り込んでTD(タッチダウン)として逆転した。
オービックオフェンスが、「らしさ」を見せたのは第2Q(クオーター)だ。QBクルカがWRジャマールに26ヤード、TE野宮大樹へ39ヤードのパスをヒットして前進。仕上げはWR池井勇輝への13ヤードパスでTDを奪った。
QBクルカは3プレー連続で異なる種類のパス成功。レシーバーも2人の新加入、ジャマールと小宮に加え、レシーバーユニット最年長となった池井にも決めて、パスを投げ分ける能力を見せた。
次のドライブではQBクルカが、ルーキーWR佐久間優毅にポストパターンのロングパスをヒット。佐久間は快速を飛ばして45ヤードのTDとした。
パスユニットの活躍に、負けていられないRB陣。次のドライブでは主将の李卓が54ヤードを走り切ってTDを決めた。
オービックは、後半メンバーを入れ替えたが、昨年は練習生だったルーキーWR土橋純平や3年目のWR山中隆哉が活躍し、1TDと1FGを追加して、38-3で勝利した。
結果的には、大勝となったが、今季就任の大野洋HCは、「秋の初戦、勝ったことはほっとしている部分もある。だが納得がいかない」と、厳しい表情を崩さなかった。
「もともと、序盤からエンジン全開できるチームではなく、そこには課題があるのは承知していた。だからこそ、ファーストシリーズ、ファーストヒットに拘ってプレーしようというのが、この試合の目標の一つだった」という。
パスユニット、ランユニットの活躍については「チーム内での競争が激化していて、活性化している。それがこの結果に結びついている」と見る。
次戦は、今春のパールボウル決勝を戦った、ノジマ相模原ライズとの勝負となる。「次のライズ戦が、シーズン前半の大きなヤマだということは、我々コーチ陣も選手たちも、みな分かっている。もちろん相手がどんなチームなのか対策することは大事だが、チームとして、我々自身にフォーカスして、臨まなければならない」という。
「我々が、ゲーム当日に、ファーストプレーから全力を出し切るということが最も大切。これから2週間、緊張感をもってしっかり取り組みたい」
オービック史上初となる、2週間連続でのホームゲーム。地元のファンのためにも絶対に負けるわけにはいかない。大野HCの瞳には、その決意がみなぎっていた。
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昨シーズン、ライスボウルトーナメント準決勝で、パナソニックインパルスに敗退した後、チーム体制に大きな変化があった。長年にわたってチームを率いた大橋誠HC(ヘッドコーチ)と古庄直樹アシスタントHC兼DC(ディフェンスコーディネーター)が退任した。選手では、オービックのみならず日本フットボール界のアイコンだった、WR木下典明も引退した。
新たに就任したOL出身の大野HCの元、清水謙アシスタントHCや、宮本士OC(オフェンスコーディネーター)、紀平充則DLコーチら、日本代表でも活躍した往年のオービックの名選手が集結し、復活を目指した。
OLコーチとしての経験は豊富ながら、チームの指揮官となったのは初めてという大野HCには、変なプライドはない。今春には、コーチとしての古巣でもある宿敵・富士通フロンティアーズのグラウンドへ赴いて、合同練習も行った。
春は、パールボウル優勝という結果に結びついた。ただ、これまでの東京ドームとは違い、川崎での試合。観客数も比較にならないほど少なかった。
秋のリーグ戦、その先のライスボウルトーナメントを勝ち抜いて、来年1月3日のライスボウルになんとしても出場する。念願の「東京ドームで正月を迎え、そして日本一になる」ために、チームは今、一丸となっている。新生オービックシーガルズの戦いを、今季もしっかり見届けていきたい。