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2019-06-05

【BBM cards Editor's Special Column #2019−14 巨人チームパック】3Dカード「TRIPLEX」にかける熱い想い

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BBMカードの制作スタッフが、カード編集にまつわる思いを綴る連載コラム。今回は巨人のチームパックについて。3Dカードにかけるたくさんの人たちの熱い想いを、ぜひ感じてください。

今年のこだわりナンバーワン

 ジャイアンツカードの魅力と言えば、洗練されたデザインと趣向を凝らしたインサートカードの数々だろう。他球団のチームパックとは違って、カード構成も他とは一線を画してきた。

 今年のジャイアンツカードも定番の「GIANTS PRIDE」と若手選手を特集した「UP and COMING」に始まり、ハイエンドなレアインサートではここ数年、高評価をいただいている「CROSS FOIL SIGNING」に、今年から初登場したコンボ箔サイン「COMBO CROSS FOIL SIGNING」、3Dカード「TRIPLEX」、メタリックカード「SUPER METALLIC GIANTS」、そして12球団共通インサート「PHANTOM」と、粒ぞろいのラインアップでお送りしている。

 どれも思い入れのあるインサートばかりだが、今年に限って言えば、こだわり度ナンバーワンは、文句なしに「TRIPLEX」である。

始まりは2010年
転機は2015年

 ジャイアンツカードに初めて3Dカードが封入されたのは2010年のこと。当時はまだ画期的だった3D技術を「GIANTS PRIDE」に投入した。スタイリッシュなポーズ写真と表情写真を組み合わせた構図は斬新で、個人的にも気に入っていたのだが、この後しばらくこのシリーズから3Dカードは姿を消すことになる。その代わりに、スーパーメタリックカードなどの新機軸を打ち出してきたわけだ。

 大きな転機となったのが、2015年のジャイアンツカードだった。「GIANTS PRIDE」と「SUPER METALLIC GIANTS」を一つのインサートカードとして融合し、さらに5年ぶりに3Dカードを復活させ、「TRIPLEX」を新たな目玉カードとしてラインアップに加えたのだ。

「TRIPLEX」とは「3重の」という意味の英語で、3層構造で立体的に見せるというコンセプトだった。カードの構造自体はシンプルなもので、選手のプレー写真と表情写真、そしてデザインを3層に分けて、それを組み合わせることで、二次元の画像を前後で立体的に見せるという具合だった。2016年にも継続して「TRIPLEX」は制作されたが、カードを構成する基本構造は前年と同じものだった。

2010BBM巨人/GP4 坂本勇人

2015BBM巨人/TR3 大田泰示

 3Dカードとして一歩前進したのが2017年だ。カードの背景部分が角度を変えると東京ドームと選手の表情で変化するチェンジング方式を採用したのだ。この前後からBBMの3Dカードは劇的に進化する。

 2016年末に発売された高級版「RISING SUN」で、写真とデザインの階層で立体構造に見せるだけでなく、選手のプレー写真自体が3Dで立体的に見えるように工夫されたのである。この流れを受けて2017年末に登場した超高級版アイテム「GLORY」の「Glorious 3D」では、さらに突き詰め、3Dカードとしての完成度は一段と高まった。

 2018年の「TRIPLEX」は、この選手のプレー写真が立体的に見える技術を取り入れ、さらに背景で、カード階層でいうと最下層にあたる表情写真とタイトルデザインがチェンジングする方式を採用し、構造がより複雑化していく。そして、同年秋には3Dカードの一つの到達点として「GENESIS」で「GAME CHANGER」が完成する。

 この「GAME CHANGER」の面白いところは、選手のプレー写真が3Dに見えるのだが、その立体的なプレー写真が角度によってチェンジングして、連続写真のような動きで見えるということだった。なおかつ、タイトル表記や背景デザインは、プレー写真と前後して見えるような立体構造までも持っていたのである。

2017BBM巨人/TR3 坂本勇人(球場)

2017BBM/TR3 坂本勇人(表情)

2018BBM Glory/3D05 則本昂大(楽天)

2018BBM巨人/TR2 菅野智之(タイトルデザイン)

2018BBM巨人/TR2 菅野智之(表情)

2018BBM GENESIS/GC11 松坂大輔

2018BBM GENESIS/GC11 松坂大輔

「実現は難しいかもしれない」

 現在発売中の最新版ジャイアンツカードでは、さらに一歩進んだ「TRIPLEX」が誕生している。実物をご覧いただけばよく分かるのだが、基本的なカード構造は、一番手前に浮き出すように大きな「G」マークが配置され、その下の選手のプレー写真、そして最下層には東京ドームの写真と選手の表情写真がチェンジング方式で浮かび上がるというものだ。

 選手のプレー写真が3Dで立体的に見えるのは最近の傾向を踏襲しており、さらに今年の「TRIPLEX」のこだわりは、チェンジングで変わって背景に浮き出る球場の奥行と選手の表情写真も3Dで立体的に見えるように表現されている点にある。

 東京ドームの広さをより効果的に表現するために、今年の「TRIPLEX」は横位置のデザインを採用している。そして、これも画期的な試みだった。

 横位置のチェンジングカードは90年代に発行されたBBMのインサートでも存在したのだが、当時の写真は選手が平面に見えるシンプルなもので、それゆえに現在よりも劣る当時の加工でも横位置カードで比較的きれいにチェンジングが表現できていた。また、3Dに見える写真自体がチェンジングする技術は昨年の「GAME CHANGER」で初めて実現したが、これは縦位置デザインのカードだった。

 実は、今年の「TRIPLEX」のアイデアを思いつき、印刷所の営業担当者からデザインとコンセプトを3Dカード制作の現場スタッフに伝えてもらったとき、担当者から実現は難しいかもしれないという返事をもらっていた。

 3Dカードが立体に見える仕組みは、右目と左目の視差を利用して、写真を特殊なレンズを通すことで立体的に見せるというものである。この場合、構造上の問題で、横位置のカードで3Dに見える写真をチェンジングさせようとすると、傾ける角度と幅が縦位置のカードに比べてどうしても大きくなるので、安定して画像が切り替わらず、2つの画像が重なって見えてしまう可能性も高いというのである。

 今年の「TRIPLEX」で分かりやすく言えば、背景にある東京ドームの写真と表情写真が常に混在したように見えてしまい、東京ドーム、選手の表情で、きっちりとそれぞれの写真がクリアに見えるポイントができにくいということになる。3Dに見える写真を、横位置デザインのカードでチェンジングさせるのは、それほど難しい技術だったのである。

2019BBM巨人/TR3 丸 佳浩(球場)

2019BBM巨人/TR3 丸 佳浩(表情)

 しかし、実際に仕上がってきたテスト印刷版を見ると、3D担当スタッフの頑張りで、こちらの想像以上にきれいにチェンジングして見えていた。そして、商品版の印刷ではもっとクリアになるというという。こちらの自由な発想から思いついた、しかし難しいお願いを実現してもらって、本当に頭の下がる思いで、感謝の言葉しかなかった。

 もし、手元に今年の「TRIPLEX」をお持ちのカードファンがいたら、あらためてじっくりと見ていただきたい。そのカードは、編集の無茶なアイデアを何とか形にしてくれた、現場スタッフの努力の結晶なのだ。

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