本誌で連載している「コスチューム研究」の出張版をWEBサイトにて掲載。本来は“プロレスラー”のコスチュームに着目したページなのだが、今回は特別にリングアナをピックアップ。話を聞いたのは元アイドルで2018年5月より東京女子プロレスのリングアナウンサーを務める難波小百合だ。その現在の衣装のテーマとなっているのは、個人的にコロナ期間でドはまりしたというあるアニメだった。
「この衣装を作ったのが1年前くらいで、その時に『コードギアス 反逆のルルーシュ』にドはまりしてて。やっぱり衣装って着てテンションが上がるのが一番大事だから、じゃあこれにしようって思って、衣装屋さんにコードギアスの写真を送りまくったんです。このアニメに出てきそうなかんじにして!って(笑)。たまたま中高の同級生が衣装屋さんをやってるので、私のその無茶ぶりに応えてくれたんです。全体は「黒の騎士団」をイメージしてますよ」
ちなみにリングアナとしてデビューした当初から衣装はずっと黒&白ベースであり、その大枠は変えていない。その中でどうやってギアスに寄せるか…尽きないこだわりをぶちまけ、結果的に満足のいく一着に仕上げることができた。
「東京女子の選手ってみんな自分の色があって、カラフルな子が多いから…じゃあ私は何色がいいかな?って入る時に考えた結果、レフェリーと同じ色にすればいいじゃんって。で、私は白よりかは黒の方が好きなので、そんなかんじにしたんです。はじめはパンダチャイナっていうヴィレヴァンの衣装を買ってきて、耳は付けず、それ以外をそのまま使ってましたね」
一番好きなキャラクターは主人公であるルルーシュ。ただ、衣装を丸パクリしちゃうとコスプレになるから…と、いかにルルーシュ要素をバラバラにして散らすかがポイントになったとのこと。いわく「いかにオタクバレせず、それでも好きなものを入れられるか」。
◎こだわり1「胸元にルルーシュ」
衣装の胸元には白いスカーフをあしらった。この部分を難波は個人的に「ルルーシュ」と命名。推しキャラの特徴的なパーツであり、この衣装には欠かせない。
「ルルーシュって大概胸元に白い布がついてるんですね。スカーフって言うんですかね? 彼は王子なので。そのかんじを衣装に取り入れたくて…元の案には付いてなかったんですけど、後から付けちゃいました。実際は3種類あるんですけど、結局いまのが一番気に入っているのでこればっかり使ってます。それと他のには銀のモチーフが付いてないんですよ。実際はモチーフが付いてない方がルルーシュっぽいんですけど、収まりがいいのでこっちにしてます」
◎こだわり2「スカートにはC.C.」
スカートには下に垂れ下がるデザインの布を前後合わせて4カ所つけた。この名前はルルーシュにギアスという能力を授けた主要キャラクター「C.C.(シーツー)」と命名。
「名前で調べたら分かるやつが出てくると思いますよ。上半身はルルーシュで、下半身はC.C.なんです。銀色のデザインをどこに入れるかって相談もあったんですけど、本来のC.C.と同じかんじがいいって返してこうなりました。肩を出してるのも黒の騎士団の時のC.C.をちょっとマネしてます」
◎こだわり3「かく乱させるためのチェーン」
腰の部分にはチェーンを2種類取り入れた。当初は何も付いていなかったが、少し前面が寂しいので後から追加。
「太すぎると新日本の真壁選手と同じになっちゃうから…。それで被って叩かれたら心配だなって思って、被らないくらいの太さにしました。ちょっと違う形も取り入れて、2種類が交錯しているかんじです。あ、これはコードギアスにはちなんでないです。ノット・ルルーシュで、ギアス要素をかく乱させる部分になってます」
◎こだわり4「なくなった紐は鈴芽から拝借。現在は靴紐」
背中には紐で結ぶ部分が2つ。なくなると衣装が閉まらなくなるため、着られなくなるらしい。だが、知らぬ間になくなっていたことがあり…。
「絶対になくすタイミングがないような忙しい興行があって、終わって帰ります。そして次の日に名古屋行きますってことがあったんですけど、名古屋でこの背中の紐が片方なくなってることに気付いて…ないと着れないから困ってたら、そばに鈴芽ちゃんがいて『私紐ある!』って腕の部分に付いてた紐をザーって抜いて、それを貸してくれて名古屋大会を乗り切ることができたんです。どうやら元々いっぱいパーツがついてて、試合で動くたびにいらない部分を取ってるところだったって鈴芽ちゃんが言ってて、それの残りの1個を私が取った形です。以降はいい紐買いに行かなきゃなって思ってたんですけど、偶然家に紐が転がってたので靴紐にしてます。マーチンのブーツの紐なので、片側だけ屈強なかんじになってますね。これはなんとかしなきゃ…」
◎こだわり5「エリンギがもたらしたグローブ」
利き手の左手だけグローブを装着。両方にすると手袋感が増すため、あえて片方にしている。その背景には痛々しい過去があったようだ。
「親指と人差し指はリングアナなので木槌を持ったりとか、試合が何分だったとかをメモするためにペンを持つので空けてます。あともう1個…私、昔指を切っちゃって病院送りにされるっていう事故があって。コロナ中ですね。それの手術痕が中指にあって、それを隠したいから都合よく中指から隠してます。これはエリンギを切ってたらこうなりました。包丁は右で持つんですけど、その時はお腹が空きすぎて怒ってたんですよ。プロレスから帰ってきて、残ってたハンバーグはあったんですけど野菜がなくて。野菜食べたいのに!ってイライラしながら切ってたら、多分まな板の上でエリンギが転がっちゃったんですかね。中指の先っぽをパカって切っちゃって。そこから行った病院で止血されすぎて、うっ血しちゃって指が壊死しかけて入院になっちゃったんです。なのでみなさん、病院選びは気を付けてくださいね」
だいたい衣装を変更するペースは1年~1年半くらいで、真み合えばビッグマッチで新調したい所存。次回の変更に関しては、絶賛お悩み中とのこと。
「ギアスの好きな要素はここに入れ込んじゃったので、じゃあ次は他の好きな何かを取り入れた方がいいのかなって思うけど…正直、ギアスを上回るそれを見つけられてなくて、だから衣装も変えられてない状態ですね。ただ、いまミュージカルの発声を目指すべく肉体改造中で…見た目より発声に振るつもりで。そこはリングコールにも活きるかもしれないですね。ただ、そうなると太ももが太くなっちゃうんですよ、たぶん。ってなると、なかなか変えづらいんですよ。でも一番は私の中でギアスを越えるものが出てこないのが要因です」
最後にあらためてコードギアスへの愛を語ってくれた。
「私もそうなんですけど、オタクって好きなアニメとかを人に強要しがちなんですよ。これ面白いから絶対見な!って。でも、それはさすがにわきまえようと思って…いまは静かにオタクするってかんじです。これだけハマれるんだから、みんなも見てくれたらいいなって思ってるんですけどね。
…押し付けにならない程度にギアスの良さを語ってほしい? 難しいなぁ~。まず楽しむ要素が多い。キャラクター1人1人がいいのと、ロボットアニメって言われがちだけど政治的な要素が強い。あとは友愛的な…同級生とか兄妹愛とか、ヒューマンドラマみたいなところもあって。でも実の親を憎んでるとか、とにかく色んな要素が入っているので偏りなく楽しめるなって思います。恋愛ドラマだと恋愛しかなくてつまんないなってなるじゃないですか。コードギアスはそれがないんです。ちょっと恋愛要素もあれば、バトルパートもあるし政治的な要素もあるし。あと、とにかく主人公が野心を燃やし続けて必死に闘ってるのがいい。とてもよい。頭マジでいいけど、運動神経はないところも推せる。CLAMP様が描かれているのでキャラデザもいいし、みんなが魅力的で。とにかく見てみて! …ってこれ、週プロさんがコードギアス好きだから宣伝してほしいみたいなとこありますよね? ですよね(笑)。でもそのくらい色んな人がハマるものなんです。とっつきにくいと思ってても、1~2話見たらハマっちゃうんです。私も一気見しましたから。これホントに週刊プロレスさんの取材ですか? 週刊コードギアスかと思ってた。でも毎週いけるくらい、マジでそのくらい面白いから! 見て!」