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2024-01-14

【相撲編集部が選ぶ初場所初日の一番】照ノ富士がうるさい宇良を一蹴。初日は上位陣安泰でスタート

強引な小手投げで宇良を振り回す照ノ富士。まずは曲者を退け好スタートを切った

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照ノ富士(押し出し)宇良

初場所が始まった。
 
今年は元日から大きな災害やら事故やらが相次ぎ、相撲どころではない、という方もおられようとは思うが、一方で相撲が元気を取り戻す一助となる方もおられるかと思う。能登半島地震で被災された方々に心よりお見舞いを申し上げるとともに、北陸、特に石川県出身の力士にはいい相撲で被災した方々を元気づけてもらいたいと思う。
 
さて今場所だが、初日を迎えるにあたって、幕内で特に注目が集まる力士は4人かと思う。途中休場を含め、3場所連続休場を経ての土俵復帰となる横綱照ノ富士、先場所に続いて賜盃を手にするようなら横綱の声が掛かるであろう大関霧島、優勝を争うぐらいの大勝ちをすれば大関昇進の目もある実力急上昇の関脇琴ノ若、そして石川県出身でもある新入幕の大物・大の里だ。今日はこの中から、横綱照ノ富士の一番を取り上げたい。
 
この日の対戦相手は新小結の宇良。横へ、あるいはときには前後への素早い動きがあり、ヒザと腰に不安を抱える横綱にとっては、初日に迎えるには何とも嫌な相手。同時に、その結果である程度今場所の状況が占える相手ともいえる。
 
立ち合い。横綱はまず胸でドンと当たった後、予想どおり左右から引っ張り込みに出た。モロ差しとなった宇良は、ガッチリ組み止められる前に頭をつけて食い下がる態勢を築くべく、右へ右へと回っていく。だが照ノ富士は、この動きにも下半身を崩されることなくついていき、宇良の右差し手が深くなったところでこれを極め、相手の腕を折らんばかりの小手投げで強引に振り回した。
 
こうなるともう相撲は完全に横綱ペース。宇良はどうにか右腕を振りほどいた時にはもう土俵際まで飛ばされ、どうすることもできずにそのまま土俵を割った。

「(横綱の圧力は)分からない。でも強かった。横綱は強かった」と宇良。横綱も「本気を出したら折れていたと思う」と言っているぐらいの感じだったので、まあ腕が無事ですんだだけでもよかったというべきかもしれない。

「(宇良は)止めても力が強いんでね。じっくり行こうと思った。(白星発進は)何も変わったことはない」と横綱。「体の調子は?」の問いには「まだ何も分からない。これからじゃないですか」と慎重だが、まずは下半身を崩されることなくうるさい相手を一蹴し、第一関門を突破したとは言えそうだ。ただ相手の動きを警戒して抱えにいくのではなく、立ち合い一度バチッと当たっているところにも、ある程度は状態に自信を持っていることがうかがえる。2日目も若元春と、実力者との対戦が続くが、一日一日乗り切っていくことで、いい循環が生まれてくる可能性は十分にある。
 
この日は3大関、2関脇を含め、上位陣が安泰のスタート。中でも琴ノ若、大栄翔の両関脇が一方的な相撲で快勝したのが目を引いた。また、注目の新入幕・大の里は、さすがに硬さがあったのか、立ち合いこそ「集中できていなかった」と、右差しを果たせず腕をはね上げられたが、落ち着いて武将山を叩き込み、幕内初日を飾った。
 
まだ初日を見ただけだが、照ノ富士、霧島が優勝を争い、そこに関脇が絡んでくる、という場所になっていく可能性が漂う、というのが現状での第一感だ。「関脇の強い場所は面白い」とよく言われるが、そういう展開になっていくのか。そこにさらに大の里が絡んでくるようなことになれば……。これはもうとんでもなく面白い場所になるかもしれない。

文=藤本泰祐

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