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2023-11-26

【相撲編集部が選ぶ九州場所千秋楽の一番】霧島、13勝目を挙げて自らVに花添える。来年初場所は綱取りへ

霧島は優勝が決まっても気を緩めることなく、貴景勝を突き落として13勝目。年が明けた初場所はいよいよ綱取りに挑戦だ

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霧島(突き落とし)貴景勝

「最後なんで、思いっきり。勝って締めたいという気持ちでやりました」
 
すでに優勝が決まったあとの相撲でも、気持ちが緩むことはなかった。結びの一番、霧島が貴景勝を突き落として13勝目。2度目の優勝に自ら花を添えた。
 
追う熱海富士と星1つの差で迎えた千秋楽。先に取る熱海富士が琴ノ若に勝ち、霧島が敗れた場合には優勝決定戦の可能性があったが、大方の予想どおり、そうはならなかった。
 
千秋楽の「三役揃い踏み」を終えて、控えから見つめる土俵上、熱海富士が琴ノ若に引き落とされて優勝が決まった。その瞬間、ちょっと目を閉じて感慨に浸った霧島だったが、「けっこう我慢してたんですけど。自分の一番があるので。しっかり最後まで頑張ろうかと思って」と切り替えた。
 
そして結びの一番、立ち合いで貴景勝に当たり勝ち、押し返してこようとするところを冷静に見て右からの突き落としで一蹴。一年納めの場所の最後を、勝って締めた。
 
この優勝は、大関に昇進しての初優勝であるのみならず、「霧島」の名前を継がせてもらった師匠・陸奥親方(元大関)へのはなむけの優勝でもあった。来年4月に定年を迎える師匠にとっては、地元・九州での場所はこれが最後。「いろんな人からそういう声をいただいて、一つ、よかったと思います」と、責任を果たした充足感を漂わせた。
 
さらに、この日の取組前の時点では他の力士に並ばれる可能性があった今年の年間最多勝も、62勝として単独で獲得した(2位は61勝で豊昇龍、3位は60勝で大栄翔)。きのうも書いたが、このことでも分かるとおり、横綱が体調万全で出てきたときは別かもしれないが、当代最強の力士は、この霧島であると言って差し支えないだろう。

ここ2場所は不本意な成績が続いたが、「新大関の場所にケガで苦しんで、先場所はカド番で緊張しすぎてよくなかったんですけど、今場所は何もないんで(笑)、思いっきり自分の相撲を取っていこうかなと、そういう気持ちで15日間頑張りました」と自ら語っているとおり、コンディションと精神状態に不安のない状態で戦ったときは、優勝争いの一番手に名前が挙がって当然の存在であるともいえる。

新大関の名古屋場所では場所前に張り切って稽古をし過ぎて逆に肋骨を痛めてしまったが、この場所は場所前に2日間で70番ぐらい取った日もあったほどの稽古を重ねても、うまく乗り切った。経験を積んで、このあたりのコンディショニングの感覚をつかんでいけば、今後、毎場所優勝を争うことになっても不思議ではない。少なくとも、現状の力量で上に立っており、かつ稽古量でも勝っているので、今後、他の力士との差が開いていく可能性は高いと言える。

さあ、年が明けた1月場所はいよいよ綱取り。入れ込み過ぎずにうまくコンディションが作れれば、持っている力と技には問題がない。あとはカド番の先場所に苦しんだように、目の前の勝ち負けに気持ちを揺らさず戦い続けられるか、がカギになるだろう。今場所敗れた2番を見てもわかるとおり、時折立ち合いに相手の勢いを受けてしまう形になってあっさり負けることがあるが(目の前の勝敗にこだわって気持ちに思い切りがなくなると、そういう結果につながりやすいようだ)。それさえ顔を出さなければ、綱は近いところにある。

「いつもどおりにしっかり稽古して。もう稽古しかないんで。しっかり頑張ります」と霧島。その言葉に期待が膨らむ。
 
来年初場所は、霧島が綱取り、今場所11勝を挙げた琴ノ若にも大関取りがかかる。さらに大の里が新入幕、順調にいけば伯桜鵬も土俵に帰ってくるだろう。上を目指す若い力がそこここにあり、興味は尽きない。果たしてどんな場所になるのか、そして来年、相撲界の勢力地図はどうなっていくのか。早くも来年が待ち遠しくなる、一年納めの千秋楽になった。

文=藤本泰祐

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