世界選手権5日目。男子90kg級の向翔一郎が健闘を見せ、初出場で決勝まで勝ち上がったが、ファントエンド(オランダ)に惜敗して銀メダル。女子70kg級では3連覇の可能性が高いと思われた新井千鶴が、ティモ(ポルトガル)に苦戦を強いられて「技あり」負け。まさかの3回戦敗退となった。
※写真上=5日目のメダリスト会見に出席した選手たち。右から3人目が向
写真◎近代柔道
決勝では彼の課題であった、我慢というところができずに敗れるという結果となりました。あのところを詰めさせてあげられなかったことは、自分の責任であると感じます。しかしながら、必ずや今日の結果を糧に次に向けて成長してくれるのではないかと思っています。
今日の向は、初戦からしっかりと波を作っていけたことが大きかったと思います。グランプリ・バクーの初戦で延長戦まで戦った相手に勝ったことで勢いに乗ったと思います。また、彼が苦手としてきた強豪が次々に敗れたことでこれは優勝ペースかな、と思った面もありましたが、なかなかそう簡単にはいかなかったというところだと思います。
しかし決勝以外では、技に入りたいところ、いきたいところを我慢しながら攻めるという柔道ができていたとは思います。こういう柔道で今後は強豪選手と当たっても結果を出すようにしていかなければなりません。
試合中に何度かガッツポーズが出ていたということについては、これは、皆さんがどうとらえられるかというところですが、決して相手を侮辱しているわけではなく、非常に感性豊かというか、感情をストレートに出す人間でありますから、咄嗟に出てしまった、彼の表現の仕方だったのかなと思います。これまでにも何度かお話ししてきましたが、感性の豊かな選手ですから、いかに彼の良さを引き出していきながら成長させていくかというところでしたので、指導する立場としても難しい部分ではあるんですが、そういうところだったと思います。
今後については、彼を一層成長させるため、大野将平のように自分をしっかりコントロールして、それでも勝つ強さを出していく、ということをやっていかなければならないと思います。
五輪代表については、この階級は1年ごとに強豪が入れ替わる階級でありますし、世界選手権という舞台で決勝まで上がって結果を出したことは評価できることだと思います。国内の代表争いで向が一歩リードしたということはあるかもしれませんが、長澤憲大、ベイカー茉秋、村尾三四郎との戦いは続くと思います。
個人戦は残り2日となりました。100kg級のウルフ アロン、100kg超級の原沢久喜の二人とも頂点を目指し、準備をしてきています。今日までと同様、一戦一戦全力で戦うだけです。

※写真上=決勝の激闘を終え、がっちりと握手を交わす向(青)とファントエンド
写真◎近代柔道
新井は、初戦はいい内容で勝ち方も良かったので、次にこのような落とし穴があるとは…。びっくりしています。ポイントを取られてからまだ十分、時間はあったのですが、ギアが上がらなかった。冷静にやりすぎたのかもしれません。
普段は、あのような巻き込みを受ける選手ではないし、対策もしてきました。確かに相手の力は強かったが、何が何でも取り返してやろうという部分が少し足りなかった。もう少し強引にいくべきだったかもしれません。挑戦者の気持ちで臨もうと話して、本人もわかっていたのですが…。
今日は3回戦敗退でしたが、本来の力を出し切れば、地力はこの階級で一番あると思います。今回のことを良い教訓にして、今後に生かしていければ。そのための準備をさせていければと思います。
まずは、最終日の団体戦で戦って今日の負けを払拭できるようにしたい。しっかりと切り替えさせて、チームのために貢献できるようにと思います。

※写真上=ティモから決定打を奪えず、無念の3回戦負けを喫した新井(白)
写真◎近代柔道
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