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2024-05-13

【相撲編集部が選ぶ夏場所2日目の一番】50年ぶりに「琴櫻~」の勝ち名乗り響く。大の里敗れて三役以上の連勝力士はゼロに

熱海富士を肩透かしで一蹴、2日目に「改名初勝利」を挙げた琴櫻。1勝1敗だが内容は悪くなく、ここから優勝争いを引っ張っていくことが期待される

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琴櫻(肩透かし)熱海富士

「ことぉざく~ら~」

この勝ち名乗りが本場所の土俵に響くのは、昭和49(1974)年3月場所14日目以来、実に50年ぶりだ。国技館(前回は両国でなく蔵前国技館だが)に響いたとなると、さらに前の、同年1月場所3日目以来のことになる。
 
今場所から、祖父である元横綱の四股名を名乗ることになった大関琴櫻が、「改名初勝利」を挙げた。初日は差し手を嫌われた後、突き合いとなり、先に攻めたが下からうまく逆襲されて大栄翔に敗れ、勝ち名乗りがお預けになっていたが、この日は落ち着いて熱海富士を一蹴した。
 
立ち合いはモロ差し狙い。左ははじくようにして嫌われたが、右が浅く入った。その直後、右を差しにきた熱海富士の頭が下がったところを、あっさりと肩透かしに仕留めた。

「集中して取れました。相手が見えていたんじゃないですか」と琴櫻。改名初勝利の勝ち名乗りについては、「変わらないですね」と、ちょっとそっけなく、本場所中の取組直後、まだ1勝1敗に持ち込んだばかりの段階では感慨に浸っている暇はない、という感じが漂うが、いずれ気持ちが落ち着くにつれ、感慨もわいてくることだろう。
 
琴櫻は、単に名前を継いだばかりでなく、ここ最近は、「猛牛」の異名を取った祖父の琴櫻のような、立ち合いから相手を攻めていく相撲を意識しているとも聞く。
 
この2日間を見ると、確かにその意識は相撲に反映されているように見える。初日も敗れはしたが、立ち合い負けはしておらず、差し手を嫌われた後も、むしろ先に攻めることに成功していた。そしてこの日は、モロ差し狙いで立ちながらも、大きな熱海富士にまったく当たり負けせず、そのあとの余裕を持っての肩透かしにつなげた。
 
新大関の先場所前半は、ともすれば腰を引いたような感じで慎重に相手をさばこうとする相撲もあったように思うが、今場所は今のところ、相手に圧力が伝わる形が出ているように思う。ここまでは1勝1敗だが、今後の見通しは悪くないはずだ。
 
この日は、初日に三役でただ一人白星を挙げた大の里が髙安に敗れて土。髙安は大の里にとって同門の先輩で、これまでも稽古でよく胸を出してもらっていた間柄だけに「まあ稽古場でやってますからね。最初が肝心ですから」という髙安の“兄弟子勝ち”というところだったが、とにかくこれで、早くも三役以上で連勝の力士はいなくなった。
 
横綱照ノ富士、大関貴景勝はこの日から休場、大関豊昇龍は連敗という状況の中、ほぼ横一線からやり直しという感じになった優勝争いは、果たしてどのように展開していくのか。
 
持っている地力と、現在の体調を考え合わせると、三役陣では琴櫻、若元春、大の里。そこに平幕で連勝し、地力を持つ大栄翔、髙安あたりが絡んでいく、という形を基本に、豊昇龍がどこまで巻き返してくるか、という展開がイメージされるが……。
 
すでに照ノ富士が休場、首を痛めている霧島も、この日は勝ったがあまり当たりに鋭さがなく、ここまでは不安の残る内容だ。状況的には(現状1勝1敗ではあるが)、琴櫻、若元春、大の里あたりにとっては、これ以上ない初優勝チャンスの場所になりそう、ということは言えるだろう。

文=藤本泰祐

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