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2024-05-14

【相撲編集部が選ぶ夏場所3日目の一番】熱海富士、大関を土俵下まで吹っ飛ばす。カド番の霧島は苦しい黒星先行

大関を土俵下まで吹っ飛ばした熱海富士。大関戦を2勝1敗で終え、来場所の新三役へ視界よし。カド番大関の霧島は黒星先行で厳しい戦いとなった

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熱海富士(押し倒し)霧島

大関に尻もちをつかせ、頭から土俵下へと叩き落とした。熱海富士が霧島を押し倒して、初日に続く大関からの白星だ。
 
この日は立ち合いはやや遅れた感もあったが、腰の備えは崩さず、しっかりと押し返した。前に出ながら霧島の腕をヒジではね上げる。圧力を嫌がった霧島が左に回ってイナそうとするが、そこは稽古十分、問題なく足を運んでついていき、クルリと回って向き直った相手を横に逃がすことなく、そのまま豪快に押し倒した。
 
勝ち名乗りを受け、下がっていった花道の奥では、手にした分厚い懸賞の束をしげしげと見つめて笑顔。このところ、「余計なことはしゃべらないように」と言われているのか、取組後の支度部屋では報道陣に対してめっきり話さなくなってしまった熱海富士だが、この時ばかりは、持ち前の天真爛漫な表情がのぞいた。
 
貴景勝が休場したため、熱海富士はこれで今場所の大関以上との対戦を終了(照ノ富士は同部屋)、番付の上位3人と当たって2勝1敗は十分なスタートといっていいだろう。立ち合いにサッと左上手をつかみ、攻勢を続けて白星をつかんだ初日の豊昇龍戦も内容がよかったが、大関から勝った2番はいずれも力強く、圧力勝ちしているところが頼もしい。
 
昨年9月場所、11月場所と連続して優勝争いに絡み、一気に名を売った熱海富士。その時はとにかく左前ミツを狙ってしゃにむにぶつかっていっているという印象があったが、1月場所以降の上位戦で経験を積み、むしろ、無理に頭を下げない、いい体の角度を会得しつつあるようにも見える。
 
さらに今場所前には、旧宮城野部屋勢が伊勢ケ濱部屋に加わって、稽古相手のバリエーションも増えた。この辺りは、「川副にトレーニングの仕方を教わったりできるし、伯桜鵬もぶつかってきてくれるし」と、同じ部屋の兄弟子の翠富士もその効果を認めているが、若い熱海富士にとってもプラス面が大いにあるのは間違いないだろう。
 
今場所の地位は三役に次ぐ東前頭筆頭。休場している小結朝乃山の枠も空くことになるだけに、勝ち越せば来場所の新三役は濃厚だ。今場所はそこへ向かって道筋をつける大チャンス。あとは一つひとつ白星を重ねていくだけだ。
 
さて、一方のカド番大関霧島はこれで黒星先行と苦しくなった。「(相手の圧力もあったけど)やっぱり自分の立ち合いですね。流れが悪い。怖がって逃げてしまっている。立ち合いは当たっているんですけど、そこからですね……」と本人も語っているとおり、立ち合い、頭を下げて当たってはいるのだが、この3日間、相手に圧力が伝わっている感じがまるでないのが苦しいところだ。もちろん、痛めている首に関しては、「負けてそんなことは言いたくない。弱いだけです」と、言い訳はしないが……。

「まあ、一番一番ですよ。きょうのことは忘れて」と、表情がガックリした感じでないところはまだ救いだが、見方によっては、むしろそれが、「もう、星勘定をしてもどうにもならないので、一番一番取っていくだけ」という状況を表しているようにも見える。果たしてこの窮地を乗り越えていけるか。
 
優勝争いのほうは、きのう大の里を倒して存在感を見せた髙安が腰を痛めてまさかの休場、実力者の大栄翔もこの日は豊昇龍に敗れて土がついた。平幕では宇良、御嶽海、湘南乃海、金峰山、竜電、新入幕の欧勝馬、そして宝富士と7人が3連勝としたが、ちょっとここ数場所と同様の平幕旋風までいけるかとなるとどうか……、という顔ぶれではあり、今後の展開としては、きのう名前を挙げた初優勝を狙う三役3人、琴櫻、若元春、大の里を中心に、大関豊昇龍がどう追っていくか、という流れになっていくと予想する。

文=藤本泰祐

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