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2024-05-21

【相撲編集部が選ぶ夏場所10日目の一番】土俵に上がれれば負けない⁉ 髙安が琴櫻を破り、2敗勢は3人に

この日は琴櫻を上手投げで倒した髙安。3敗目を喫した琴櫻はまた優勝争いから一歩後退することになった

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髙安(上手投げ)琴櫻

「もう今場所は、髙安の優勝でいいんじゃないの⁉」

そんな声すら聞こえてきそうだ。

5日間の休場ののち、土俵に戻ってきた髙安が、きのうの豊昇龍に続き、きょうも大関を投げ捨てた。しかも今度は優勝争いのトップに並んでいた中の一人である琴櫻だ。
 
立ち合いは勢いではやや髙安が勝ったが、左差し右上手を狙った髙安と、モロ差し狙いの琴櫻の差し手争いになった。髙安は前傾姿勢を保って押し合うが、琴櫻の前さばきのよさを嫌い、いったん引いて変化をつけると右四つに。すぐ左上手を取った。やがて右下手に手がかかった琴櫻が左を巻き替えながら攻め返そうとしたが、髙安はこの機をとらえて勝負をかけ、体を開いて左上手投げ。琴櫻も体を預けにいったが、一瞬早く落ちた。

「(2日連続大関撃破は)最高ですね。攻めきれなかったけど、左の廻しが生命線でした。左が取れてよかった」と髙安。当たりの強さ、そして勝負勘。体調のコントロールさえできれば、実力はまだまだトップクラスであることを証明した。
 
髙安はこれで休んだ5日(不戦敗で1敗)以外、土俵に上がった日は4戦全勝。しかも倒したメンツがすごい。若元春、大の里、豊昇龍、そして琴櫻だ。もちろんこの後どこまで勝ち進めるかは分からないが、勝ち越したら殊勲賞モノの活躍だ。
 
冒頭の「優勝」はさすがにジョークとしても、今場所の髙安が、現在の角界に絶対的な強さを持つ力士がいないことを雄弁に物語る存在になっているのは間違いない。
 
一方の琴櫻は、これでまた大の里の後塵を拝することになり、復活していた自力優勝の可能性も再度失った。あとは自らが一つひとつ白星を重ねながらの他力本願となる。今場所はなんとなく、じっくり慌てず取れた日は結果がよく、早く決着をつけようとした日はよくないような気がするが、さてこの先どうなっていくか。
 
10日目は、5人いた2敗力士のうち、琴櫻のほか、左足の太ももを8日目に痛めた御嶽海が敗れて3敗に後退。大の里、湘南乃海、宝富士が2敗を守って勝ち越しを決め、トップは3人になった。これを琴櫻を含め7人の3敗力士が追う形に。
 
11日目には、湘南乃海と宝富士の平幕2敗対決が組まれた。この時点で、あす終了時でどちらかは3敗に後退、どちらかはトップに立つ、ということが確定したわけだ。
 
そしてさらに、大の里-豊昇龍の対戦も組まれた。大の里にとっては、残る対戦相手の中で最大の強敵だ。過去2回の対戦は、いずれも右手側で攻防を繰り広げる中、豊昇龍に逆側の右で廻しを取られて下手投げで投げられているだけに、今度は大の里も何か対策を考えてくるはず。豊昇龍がまた同様の形を狙うかどうかも注目される。
 
もし大の里が勝てば、夢の新三役V、そしてデビュー7場所目の初賜盃という快挙へ大前進、もし負ければ、優勝争いはまたまた大混戦への道をたどる。
 
今場所の優勝争いの趨勢はほぼあすの結果次第。最後には平幕との対決が残りそうな情勢ではあるが、大の里にとっては、まずはここが大勝負になる。

文=藤本泰祐

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