close

2024-07-25

【相撲編集部が選ぶ名古屋場所12日目の一番】大の里が落ち着きと素早さで二ケタ勝利へ前進。カド番貴景勝は7敗目

大の里は左から突いた直後に素早く右から上手を取ると、投げで体勢を入れ替えて白星。貴景勝は大関維持へ後がなくなる7敗目となった

全ての画像を見る
大の里(上手投げ)貴景勝

とうとう後がなくなった。
 
カド番の大関貴景勝が、土俵際まで押し込んだが、最後はかわされ、大の里に上手投げで敗れて7敗目。いよいよ大関の地位を守るためには残り3連勝しかないガケっぷちに追い込まれた。
 
この日も大関は思い切って当たっていった。頭と両手の3点でぶつかっていくイメージだ。立ち合いで起こせた感じではなかったが、とにかく今の貴景勝には、その勢いで下から押していくしかない。
 
しかしこの日の大の里は落ち着いていた。きのうと同様、右の差し手を抜くと左からちょっと突いて揺さぶり、すぐに今度は右手を外からのばして廻しをつかむと、上手投げでサッと体勢を入れ替え、勢いよく押してきた貴景勝を土俵の外に出してしまった。

「(右差し手を抜いて上手を取った場面は)集中できていたので、体が動いたと思います」と大の里は集中を強調。確かに、左から突いて、直後に外から右上手を取るというのは、素早い動きがなければできないこと。きのうに続いて、動きにキレが出てきたことをうかがわせた。
 
さらに言えば、この日の大の里は、立ち合いから攻め込んでいくというよりも、“立ち合いから一気に起こされることなく、相手の勢いを受け止めれば何とかなる”という感じで取っていたようにも見えた。現在、番付では貴景勝が大関で大の里は関脇だが、まるで地位とは逆に大の里が貴景勝をさばいたような内容だ。この若さでそういう立ち合いも使うようになってきたことには驚かされる。
 
これで二ケタ10勝へ一歩前進。あすはいよいよ、これまで3度の対戦でいずれも右からの強烈な投げを食らって投げ飛ばされている豊昇龍戦。果たしてどのような対策を講じてくるかは見ものだ。もしここを突破できれば、二ケタ勝利は実現可能なものとして視界に入ってくるだろう。
 
一方、いよいよガケっぷちまで追い込まれた貴景勝。ここのところ、とりあえず立ち合いの勢いを生かして勝負をかけるしかない、という内容が多く、大きい相手にこの日の大の里のような対応をされるとちょっと辛いか。
 
あすは横綱照ノ富士戦が待つという厳しい状況だが、これもただ立ち合いから押していくだけで攻め切れるとは思えない相手。イナシを交えるなど、いかに横の動きを混ぜて崩せるか、というところがカギになってくるだろう。
 
この日、霧島は熱海富士を寄り切り、大関復帰の条件である10勝へ望みをつないだ。場所の中盤は精彩がなかった霧島だが、きのうの琴櫻戦、そしてきょうと、内容が急によくなってきた。10日目終了時点では、「さすがに残り5連勝は難しいか」という感じだったが、この相撲が続けられれば……、というイメージが出てきたといえる。

奇しくも、貴景勝、霧島、大の里の3人とも、大関維持、復帰、近い将来の昇進に関して今場所目標とする星に到達するには残り3連勝しかない状況になった。果たして厳しい条件をクリアし、目標を達成する力士は現れるか。
 
優勝争いのほうは、照ノ富士が1敗を守り、3敗で追うのは、豊昇龍、隆の勝、美ノ海の3人となった。もしあす、照ノ富士が勝って3敗の3人が全員敗れれば、13日目にして優勝が決まる。まあ、もしそうなったときには、同時に貴景勝の大関陥落も決まってしまうわけだが……、果たしてもうひと波乱はあるやなしや。

文=藤本泰祐

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事