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2024-09-03

【連載 泣き笑いどすこい劇場】第26回「悔しさ」その4

「これが負けか」の言葉を残した白鵬の連勝ストップ。平静を装ってはいたが、煮えくり返っていたに違いない

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思うようにいかなかったとき、ライバルに競り負けたとき、込み上げてくるのが悔しさです。
自分を責め、相手を恨んで唇をかみしめ、歯ぎしりし、ワナワナと身を震わせたことはありませんか。
こんな姿、決して他人には見られたくありませんが、これこそがさらなる高みに押し上げる秘薬。
人の上に立つ者、番付が上位の者ほど、真の悔しさを味わった人間、と言ってもいいでしょう。
そんな悔しさにまみれた力士たちのエピソードです。
※月刊『相撲』平成22年11月号から連載された「泣き笑いどすこい劇場」を一部編集。毎週火曜日に公開します。

お返しの張り手?

目は口ほどにものを言い、と言うが、体の動きも、ときには口以上に心の中を映し出す。平成22(2010)年九州場所2日目と言えば、横綱白鵬(現宮城野親方)の連勝記録が東前頭筆頭の稀勢の里(のち横綱、現二所ノ関親方)の激しい寄りによって昭和以降2番目の63でストップした日だ。土俵下まで転がり落ちた白鵬は、

「これが負けか」

とつぶやき、

「敗因? 今日一日、じっくり考える」

と言い残し、意外なほど淡々とした表情で会場の福岡国際センターを後にしている。このときの胸中はどんなものだったか。それを垣間見せたのは、それから1カ月半後の12月23日、両国国技館で一般のファンにも開放して行われた初場所前の稽古総見のときだった。あの世紀の敗戦以来、初めて稀勢の里と2番対戦した白鵬は、

「パチン」

と2番とも右から激しく張り、一気に寄り切った。見ようによってはそれが、よくも先場所はやりやがったな、とお返しの張り手のように映った。稽古の後、白鵬は何事もなかったような顔で、

「皆さん、(稀勢の里に)期待しているんでしょう。私も期待しています」

とはぐらかし、ニヤリとしたが、やっぱり腹の中は悔しさで煮えくり返っていたのに違いない。

月刊『相撲』平成24年12月号掲載

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