close

2024-10-07

【インタビュー】人も、店も、カードも、好きだから

SHARE

  • twitter
  • facebook
  • line

「Everybody Needs a Hobby !」


BBM 「好き」を続けることの大切さを体現する一方で、社長という立場からするとシビアに業績に対する責任が生じるわけです。2021年に社長に就任されてから、そのための「種まき」を続けてきたと思います。


新家社長 まさにそうですね。やっぱり大事にしているのは、先ほどの好奇心の部分。もう店に立っていた頃からの話ですけど、ミントがプロ野球カードと国内のサッカーカードを中心に販売していた中、NBAやMLBといった海外のカードやカードゲームの「オーナーズリーグ」、「マジック・ザ・ギャザリング」、あるいは「スター・ウォーズ」や「ロード・オブ・ザ・リング」といった映画のカード、AKB48の生写真、それからメモラビリア商品を導入していったんです。そうすることで、いろいろな興味を持つ人が来店してくれたし、どれか売上が良くないものがある時期でも別の商品がカバーしてくれたりして、その頃からいろいろなことが変わり始めたと実感していたんです。まあ、自分が好きだったから、っていうだけですけど(笑)。

BBM 興味深いですね。戦略的・論理的に事業を仕掛けることは大事だけど、それだけではどこかで行き止まりになる。でも「好き」という基準があれば、それがブレイクスルーの種になってどこかに道を見つけることができる。だから、何かが行き詰まってもそれは「失敗」という概念にはならなくて、つまりは、失敗を作らないスタイルだということですね。

新家社長 社内でもたまに言われますけど、そうかもしれないですね。それにもう一つ付け加えたいのは、自分の好きなことに共感して一緒に一生懸命に取り組んでくれる仲間に本当に恵まれている点ですね。これは初めて店舗に立った日からいまに至るまでその規模がどんどん大きくなっているのを感じていて、いつも仲間に感謝しています。

BBM そんな基盤を背景に、いま描いているミントさんの未来像、あるいはスポーツカードというホビーが進む未来予想図についてどうお考えでしょうか。

新家社長 このホビーは、100年以上前から米国を起点に世界に広がっているもので、スポーツがある限りなくならないものだと思っています。TOPPSやPANINI、UPPER DECK、BBMといった歴史あるメーカー、PSAがリードするグレーディングサービス、GOLDINのようなスポーツがメインのオークションハウス、近年活躍目覚ましいインフルエンサー、世界中にある我々のような専門店がそれぞれに進化し、役割を果たして、業界としてとても難しい時期を乗り越えて、いまの状況があります。

これから何十年か先、世界中でこのスポーツカード業界で頑張って来たそれぞれの立場の方々が会することがあったときに、「ミントがあって良かった。あなたたちもいたから、この業界はより良いものになっている」と言ってもらえるようなことを、いまもこれからもやっていきたいと思っています。

BBM そのために、ミントさんが果たすべき役割をどのように見据えていますか。

新家社長 我々の変わらない役割は、このホビーを楽しめる「場所」の提供であり、「入口」であり続けることだと考えています。それはリアルな店舗運営だけに限りません。でもやはりいまここで言いたいのは、実際にこのホビーを体感していただいて多くの方に「いい趣味だね」と感じてもらえるような店と働く人が、我々にとって軸になるということです。

ホビーというものは楽しむ場がなくなって、身近に共感してくれる人がいなくなると、なくならないにしても、すごく小さな世界になってしまう危険があると思っています。だから、市場が小さくならないように、子供たちやまだこのホビーを知らない方々への入り口であり続ける点も頑張らないといけないと思っています。

そのために我々ができることは、良いお店を作るということです。お店の内装や雰囲気がかっこいいよね、とか、店内に入りやすいよね、店員さんが親切だねというイメージを持っていただけるように心がけていますし、座る場所があってゆっくりと時間を過ごすことができたり、興味を持ってきてくれるお客さんだけではなくて、一緒に来てくれた人も店内で過ごすことができるような空間を作りたい。この点では、いまでも海外から来てくれるコレクターの方々、メーカー、業界関係者から称賛されることが多いですよ。

BBM だからこそ、とことんこだわっているわけですね。

新家社長 いま、店舗や本部に「Everybody Needs a Hobby !」という言葉をたくさん掲示しています。これ、ずっと思ってきたことだったんですけど、映画「アイアンマン3」でロバート・ダウニーJr.がさっと言ったセリフが、私の言いたいことそのまんまだったので、近年はメッセージという形で目に触れるようにしています。

BBM これは、スポーツカードの世界を飛び越えて、まさに人生訓ですね!

新家社長 だからこそ、メーカーの皆さんには素晴らしいカードをこれからも作ってもらって、我々がお客様とコミュニケーションを取りながらたくさんの方にお届けして、お客様にもそのご家族や関係する皆さんにも喜んでいただきたいんです。みんなで一緒になって素晴らしいホビーの世界を作っていきましょう!

「アイアンマン3」に登場するフレーズが新家社長の思いを代弁している。本社のミーティングルームや店舗など、目に触れるところにたくさん掲示されている


PROFILE

新家達雄 しんけ・たつお


1978年生まれ。大阪府出身。高校1年生でスポーツカードに出会い、コレクションの道へ。
ワールドスポーツプラザのアルバイトからスポーツ業界でのキャリアをスタートし、ベースボール・マガジン社、アッパーデックジャパンを経て2010年に株式会社ミントに入社。営業部、店舗運営部、取締役を経て、21年6月に代表取締役社長に就任した。

好きな食べ物はパスタ。日課は移動中にNBAの試合動画を見ることで、趣味はバスケットボールとゴルフをプレーすること。

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事