サッカーにおいて、判断が重要であることは言わずもがなである。指導のエキスパートたちは、目に見えない判断をどのように教えているのかを探る特集。川崎フロンターレのアカデミーは、三好康児、三笘薫など、のちの日本代表を多数輩出しているが、U-18チームでは、状況判断の指導において、どのようなアプローチがなされているのだろうか? 2020年から監督を務めている長橋康弘に、5つのテーマ別に、話を聞いた。この回では『②攻撃』について、本誌より引用する。
(引用:『サッカークリニック 2024年12月号』 【特集】図解つき!サッカーの優れた状況判断PART1:川崎フロンターレU-18より)
取材・構成/土屋雅史
前回の①状況判断はこちらから|人を見る習慣があれば、スペースが見えてくる
―攻撃時に意識してほしいのは、どんな判断でしょうか?長橋 選手たちには、「相手が『4-4-2』で構えてきた状況を想定すると見やすい」と話しています。相手のライン間のスペースを自分の目でちゃんと見つけられるようになるには、まずは、見やすい「4-4-2」システムから見つけようということです。その中で、相手にとって、どこに立たれるのが最も嫌なのかについては、チームを最初につくる際に話します。
高校生くらいになると、相手のフォワードは、こちらのゴールラインから25メートルあたりのところに構えることが多いのですが、「相手の2トップに対して、プラスワンでビルドアップしよう」と言っています。攻撃としては、まずは相手の2トップを越えることがスタート。そこでプラスワンを生んでいるので、パスを横に振れば、相手の矢印の折り方によって、BゾーンかDゾーン(図1)に少し時間ができます。
図1
※図1の解説はこちらそこでの最優先は相手の背後ですが、フロンターレは、背後にポンポンと蹴るようなコンセプトではやっていません。BゾーンかDゾーンにボールを運びながら、選手たちがうまくローテーションしていくことが、大事になります。
足元の技術があるゴールキーパーがいると、キーパーとセンターバックで3枚をつくれます。そこにキーパーが加われないのであれば、フィールドプレーヤーでつくることになります(図2と図3)。
図2
※図2の解説はこちら
図3
※図3の解説はこちらセンターバックがドリブルでDゾーンに入っていくのが、1つのつくり方。フロンターレの場合、チームとして、ボランチを消されることが結構あるのですが、「そういうとき、もう1人のボランチはBゾーンかDゾーンのどちらかに下りて良いよ」と伝えています(図4)。また、サイドバックは、サイドのレーンに立った上で、ボランチが前向きに持ったところからラインをどうやって破るかを考えなければいけません。
図4
※図4の解説はこちら相手にとって嫌な位置がわかってくると、相手の矢印もわかってくるイメージです。相手のシステムが変わっても、人を見る習慣があれば、ライン間のスペースが見えてきます。
背後を狙うことはすごく大事で、それがないと、選手は、手前ばかり見てしまいます。ライン間の縦幅の概念も大切で、相手がそこを8メートルくらいにしてきたら、「12メートルとか13メートルに広げるには、どうしたら良い?」というアプローチをよくします。「フォワードが背後をちゃんと狙ってライン間を伸ばせたら、そこが空くし、縮めたら、あそこが空くから、そこで引き込もう」といった感じです。
結局、背後を攻略しないと、手詰まりになります。ですから、攻略するために、高い精度のロングボールとそれに対する正確なトラップも意識させています。ゴロのボールを止める練習をよくやっていますが、浮き球もピタッとトラップできなければいけません(図5)。
図5
※図5の解説はこちら(次回『サッカーにおける状況判断の重要性 三笘薫を育てた川崎F U-18の指導法 その3「守備とは」』へと続く)
-NAVIGATOR- 長橋康弘[川崎フロンターレU-18 監督](Photo:土屋雅史)PROFILE
長橋康弘(ながはし・やすひろ)
1975年8月2日生まれ、静岡県出身。94年に、静岡北高校から清水エスパルスに加入した。97年に川崎フロンターレに移籍し、2006年に引退。翌シーズンから川崎Fで指導を始め、U-12チームのコーチやU-18チームのコーチなどを歴任した。18年からはU-15チームの監督を務めたあと、20年にU-18チームの監督に就任。日本サッカー協会公認A級コーチライセンスを持つ
『【フロンターレ式状況判断】テーマ別に見るJクラブユースの状況判断の磨き方』を掲載した「サッカークリニック2024年12月号」は
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