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2021-02-09

選手権を制した山梨学院高・長谷川監督に聞く『攻撃のスイッチ』Part2 奪った瞬間に攻撃のスイッチを入れる

1月11日、青森山田高を倒して日本一に輝いた山梨学院高の野田武瑠⑩

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「攻撃のスイッチ」に関して、今年の高校選手権を制した山梨学院高の長谷川大監督に2019年に聞いたインタビューのPart2をお届けする。

――攻撃のスイッチを入れるタイミングで、相手の状況も重要なポイントになりそうです。

長谷川 「相手に山を登らせない」という考えも必要だと思います。攻撃のスイッチを入れたときに相手の守備のスイッチが入っていたら威力はダウンします。逆に言えば、守備のスイッチが入らないようにして攻撃のスイッチを入れられれば威力は増し、得点の可能性を上げられます。

トレーニング2
「5対5」+「FW対2CB」

進め方:練習①を発展させ、両サイドにサイドバックを加えて行なう。指導者の配球によって「5対5のポゼッション」を開始し、FWかサイドバックにパスを入れられたら攻守のエリア制限を撤廃してゴールを目指す(図6。「『8対7』+GK」。守備はクリアして終了)
ポイント:A=トランジションのトレーニング(ショート・カウンターの状況)。B=トレーニング1のA~Cと同じ



――相手の矢印をひっくり返すのに必要なことを教えてください。

長谷川 相手の攻撃時、パスを受けられそうな選手が2人いるとします。その場合、どちらの選手がパスを受けるか、によって展開は変化します。そのとき、先を読み、攻撃のスイッチの入れ方を考慮した上でパスを出させるのです。当然、相手のプレーをしっかりと予測したり、特徴を考慮したりしなければなりません。精度の比較的低い選手に出させる判断もあり得ますし、不得意な足でボールを扱うように仕向けてボールを奪う判断もあるでしょう。いずれにしても、チームとしてその予測と判断を共有し、奪った瞬間に攻撃のスイッチを入れるのです。「ボールを奪い、攻撃のスイッチを入れる」ことを常に考え、実践できるようになるトレーニングを行なうようにしています。

――かなりハイレベルなことを選手に求めていると思います。トレーニングでのポイントを教えてください。

長谷川 私が重視しているのは次の4つです。

・スピード
・レスポンス(反応)
・コレクティブ(組織的)
・コミュニケーション(3つをつなぐ声)

 この4要素を意識してトレーニングに組み込みます。

 相手を誘導し、相手に反応して攻撃のスイッチを入れるには高い反応力と瞬発力が不可欠です。それを高めるために一定以上のスピードでトレーニングを行なうようにしています。試合よりもトレーニングがハイスピード、ハイテンポというのが理想です。また、素早くレスポンスするためには気の抜けない状況設定にしなければなりません。さらに、連動するために複数の選手が関わり、適切な距離を学べるようにしています。もう1点あります。配球の方法も工夫します。

――組織的なプレーが重要な要素になりそうです。

長谷川 トレーニングであっても試合であっても、相手と自分の強みを考慮してプレーすることが大事だと思います。そうしたことをできるグループをつくれれば、強い相手にも勝てるのがサッカーというスポーツです。それは攻撃のスイッチの精度も高めます。

トレーニング3
「6対6」+サイドバック×2
(「4-1-4-1」システムが多い)
進め方:ペナルティーエリアの横幅より1~5mほど短縮、縦幅より5~10mほど拡張したグリッドにGKの守るゴールを設置し、グリッド内に「6対6」、グリッドの両サイドのハーフウェーライン寄りにサイドバックを配置する。中央にいる指導者の配球によって「6対6」を開始し、攻撃側はゴールを目指す(守備側はボールを奪ってコーン・ゴールへのクリア〈パス〉を目指す。図8)。ただし、攻守の切り替えが発生したとき、状況を見極めた中央の指導者が例えば「右」と言って右サイドバックに指導者が配球して流れを変える。グリッド内の選手はその後の展開に備えて準備(クロスが上がるかもしれないなど。図9)。「攻撃側=攻撃→守備→攻撃」と切り替え、「守備側=守備→攻撃→守備」となる

Part1はこちら

【サッカークリニック2019年6月号掲載記事を再編成】

取材◎安藤隆人 写真◎BBM

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