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2024-11-19

【相撲編集部が選ぶ九州場所10日目の一番】大の里、組んで大栄翔に敗れ3敗目。優勝争いから大きく後退

大栄翔を攻めきれず、いったんは上手に手を掛けながら敗れた大の里。これで先頭とは2差になり、新大関優勝からは大きく遠ざかることに

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大栄翔(寄り切り)大の里

「組んでしまえば、この相手には負けないだろう」と思って見ていたが、そんな単純なものではなかったようだ。
 
大の里が突き押しの大栄翔をつかまえながら「寄り切り」で敗れ、痛すぎる3敗目を喫した。
 
大の里はこれまで、大栄翔との対戦成績は4戦4勝。引きを見せて危ない相撲も1番あったが、全体的には合い口はいい相手だった。
 
この日も、立ち合い下から掬うように立って、相手のヒジを下からはね上げ、最初の突きを封じると、そのまま両ハズに入り、“電車道”で東土俵に押し込んだ。
 
しかし、これは「押せた」けれども、「起こせた」わけではなかったということなのだろう。「突っ張っていきたかったが押されてしまった」という大栄翔だが「体が伸びなくてよかった」と振り返ったとおり、徳俵で踏みとどまると、左を深く差し、右も前のほうのいい位置で廻しに手を掛けた。
 
大の里は左を抜いて外四つに。ただ右では上手を取り、「それでも組んでしまえば……」の形かとも思えた。しかし、大の里はそのあと何もできなかった。もちろん身長の違いもあるが、大栄翔のほうが腰が下に入っていたのが大きかった。大の里は左から少し突き落としを見せるが、動きの中で大栄翔が体の左側を張ったところで命綱の右上手が切れてしまい、万事休す。そのままあえなく寄り切られた。取組後の大の里は相撲内容については「詰めが甘かった?」の問いに「そうですね」と答えたのみだった。

この相撲を見ていると、「組めば負けない」の「組めば」の中には、実は「相手と同じ高さで」という前提が内包されていることが分かる。つかまえることができたように見えても、相手の腰のほうが低ければ、「組んだ」効果もさほどない、ということなのだろう。

大の里は、「立ち合いで右が差せないと、思わず叩きに出て体が浮く」ということがよく言われる。この日の相撲でも、もちろん理想形は、組んだところでひと腰落として、左からおっつける、ということなのは間違いない。ただこの辺は、本人も重々承知ながら、言うは易し、行うは難しというところなのだろう。

叩きを我慢すれば腰が落とせるのか、腰が高いからつい叩いてしまうのか……、はきっと「ニワトリが先か、タマゴが先か」みたいな話なのだろうと推測するが、ここをどう改善していくかは、体型的に相手より腰を低くすることが簡単ではない大の里にとって、横綱への大きな課題となってきそうだ。
 
ともあれ、大の里はこれで3敗目。10日目を終わって、1敗の琴櫻、豊昇龍、隆の勝とは2差がつき(一度復活した自力優勝の目も再び消滅)、2敗の阿炎、尊富士のさらに後ろから追いかけることになった。
 
もちろんまだ残り5日間あるので、ここから逆転優勝の可能性もないわけではないが、ただ状況としては、前を5人も走っているのは相当につらい形だ。
 
大の里は前を行く5人のうち、阿炎以外の4人とはまだ対戦していないので、自力で1つずつ差を詰めていくことは不可能ではないが、そもそもこの4人に対して全勝は簡単な話ではなく、それができることを前提にしても、1敗の3人と阿炎には他力本願でさらに1つ負けてもらって、やっと優勝決定戦に持ち込めるという状況だ。
 
優勝するためにはその決定戦で勝たなければいけないので、それがすべて実現する確率といったら……、おそらく数字的には、もはや1割もないと言っていいだろう。新大関優勝は、一気にはるか彼方にかすむ状況になってしまったことは間違いない。
 
とはいえ、大谷翔平の二刀流ではないが、だれもが不可能と思うことを可能にしてこそヒーローだ。あすはまず1敗勢の一人である隆の勝との対戦。本人も「あしたから5日間が大事」と言っているが、もうあとは、目の前の敵を一人ずつ倒して、奇跡を現実と取り換えていく以外にはない。

文=藤本泰祐

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