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2024-12-06

【連載 大相撲が大好きになる 話の玉手箱】第24回「不眠」その2

平成28年名古屋場所、宝富士は金星を含む10勝を挙げて、初めての敢闘賞を獲得

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みなさんはどこで春近しを感じますか。
日に日に温みを増していく日差し? にぎやかになってきた鳥のさえずり? 
中には、なかなか起きられなくなった朝の目覚めを挙げる人もいるかもしれません。
春眠暁を覚えず、と言いますから。
五体の感覚をピーンと研ぎ澄まさなければいけない力士にとっても、この眠りはとても大事なんです。
でも、さまざまな理由で眠れず、悶々とした夜を過ごす力士もいます。
そんな力士たちの不眠にまつわるエピソードを集めました。
※月刊『相撲』平成31年4月号から連載中の「大相撲が大好きになる 話の玉手箱」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

金星は眠れない

一度は取ってみたいもんだ、と力士たちが思っているものの一つが平幕力士が横綱を倒す金星だ。平成28(2016)年名古屋場所5日目、西前頭2枚目の宝富士は2連覇中だった横綱白鵬(現宮城野親方)と対戦。破壊力たっぷりな立ち合いのカチ上げをうまく封じ、左からの小手投げで快勝した。これが通算2個目の金星で、合わせて16本もの懸賞も手にした。手取り48万円也だ。
 
この大番狂わせに周囲も大喜び。取組後、なんと宝富士の携帯には、知人、友人から100通を超える祝福の電話やメールが届いたそうだ。宝富士も就寝時間になっても興奮冷めやらず、

「横綱に勝つと寝られないんだよ。目を閉じると、つい相撲のことが浮かんできちゃって。夕べも、音楽を聴きながらストレッチをしたり、羊を数えたりしたんだけど、とうとう(午前)3時半まで寝付けなかった。羊は30匹で数えるのを止めました」
 
と苦笑いした。
 
しかし、翌7日目の正代戦も、とても睡眠不足とは思えない軽やかな動きであっさり送り出し、5勝目。

「いやあ。危なかったけど、今場所は体がよく動いています。体調の良さに助けられました」
 
と満面に笑みを浮かべた。
 
眠る量と勝ち負けは必ずしも一致しないようだ。この場所、宝富士は二ケタの10勝を挙げて初の敢闘賞を獲得。翌場所、これまた初の関脇に昇進した。

月刊『相撲』令和3年3月号掲載

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