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2024-12-20

DDTの絶対的エース・上野勇希が見据える12・28両国とその先「リングの内も外も、上野がそこら中にも存在しているような状態になっちゃうと思います!」【週刊プロレス】

2024年のDDTをけん引し続けてきた上野勇希。上半期はKO-D無差別級王者として防衛戦を重ね、8月に王座陥落してからは、独自の「オモロさ」を追求し、縦横無尽に動き続けた。12・28両国では、「未来のエース候補」と目される正田壮史とシングル対決。注目の一番を前に上野のプロレス観に迫った。

 

――両国での正田選手との試合についてはいかがでしょうか? 

上野 僕は第82代KO-D無差別級チャンピオンでしたから、ビッグマッチでシングルマッチをするということ自体に自分の意志とは関係なく価値は生まれてくると思います。実際、僕と正田の試合のポイントのひとつでもあるし。 僕自身は、最初は「両国でシングルマッチできるんだ、やったー!」みたいな感じでした(笑)。

――期待の若手がDDTのエースに挑むということで正田選手にフォーカスが当たる印象もあるのですが、率直に今の正田選手についてはどう思いますか?

上野 別に現状がダメなことではないことを前提に、今のままではつまんないですね。本人のポテンシャルの高さとか、体がどんどん大きくなったり、クリスの横でいろんなものを学んでいる期待値があるからこそつまんなく感じちゃう。

――期待値の高さは認めたうえで現時点の正田選手は面白くない?

上野 別に正田からじゃなくても感じられるものばっかり。正田が頑張ってないとかじゃなくて。その味は誰でも持ってるよねって。何度も言いますけどダメなわけではなくて。でも、そのつまらなさに気がつかないとただ「試合に勝ちたい」、「全力を尽くす」、「印象に残る」っていうだけの繰り返しなので。

――正田選手独自の色が見えてこないということでしょうか?

上野 そんな難しい話でもなくて。ただ「ホントのこと言ってよ」っていう。楽しいも嬉しいも悔しいも悲しいも全部。正田は未来のエースとか言われてて、過去の未来のエースたちが言ってそうなことばっか言ってる。安心する為に「っぽい」ことばっかり言っちゃう状態なのかなと。

――ある意味で上野選手も通ってきた道だからこそ、そう感じるんでしょうか?

上野 はい。同じとは言えないですけど。僕は自分のことをつまらない人間だと思っていたし、つまらないレスラーだと痛感した過去があって。その時も全力で全てを感じようとやっていたけど、「っぽい」ことしか言ってなかったんです。勝ったら嬉しい、負けたら悔しい。でも、勝ったのに悔しい時とかもあるんですよ。負けたのに嬉しい時もあるんです。それを表現するかどうかは選べばいい。けど、「っぽさ」で誤魔化したらダメだと知った。僕は青木真也と出会ったことで知ることができた。人生の歴史の濃さや、感情の振れ幅がいかに大きいかではなくて、僕だけが感じているものを明確に受け止めてリングに立たないと人には届かない。僕がずーっと闘っていることです。

―両国での試合で思い描いているものはありますか?

上野 上野が正田に勝つことでタイトルに直結したりすることはない。でも、正田が上野に勝ったら大事件。もちろん、僕は負ける気もないし、負けるつもりも全くないし、負けないと思うんです(笑)。でも万一大事件が起きても我が事ながら楽しみではある。とはいえ、僕が勝つ先に何も無いかというとそうではなくて。例えば人って踏んづけられたら、たぶん怒るじゃないですか。

――そうですね。

上野 怒りとか悔しさとか僕たちが想像できる感情を、正田がどんな形でぶつけてくれるかが楽しみ。その形を受け取ってどう感じるかが僕の特典。もしかしたら勝敗以上に価値があるかもしれないし、何かが生まれる可能性です。試合において、こういう風に見て欲しい!と思うことはない。お客さんにどう受け取ってもらっても嬉しいし、結果的に面白いことが起こるかもしれないし、起こらないかもしれないし。何もないかもしれないし、何もないことを楽しみたいし。だから今一番やりたいのは、正田を踏んづけるっていう(笑)。欲張ってもいいのなら、僕の持論を受けてどう感じるか教えてくれたら嬉しいのになと。「うるさい」でもいいし、「なるほど」でもいいし。でも、その先に何でそう思ったの?まで知りたい。そこまで突き詰めたものが欲しい。上野勇希と試合するなら、お互いに向き合い続けようぜって。

――なるほど。

上野 僕に巻き込まれることで「っぽい」形じゃなくて、スッキリしたりモヤモヤしてくれるはず。それが楽しみですね。今回一番期待している部分かもしれないです。だから踏んづけます!

――踏んづけてその反応が楽しみということですが、もしかしたら正田選手があまりやり返してこない可能性もあります。

上野 もうなんでもいいです。何も予想もしないし。過去の僕なら「正田を悔しがらせるために踏んづけるぜ」って思ってたかもしれないですね。それは僕のつまらない時代の話です。対峙して踏んづけたくなくなったらしないですし、口に出すことで自分にも問いかける部分はあります。目標を定めることが悪いわけではなくて。とにかく自分の味探そうぜって。 正しいとか正しくないとかってどうでもよくて、味があるかどうかが重要。

 ――両国では他団体の選手も多く参戦する中でも所属同士のシングルマッチです。そこへの思いはありますか?

上野 ないです(即答)。DDTの大会ですから、皆DDTを見ることになるし、所属同士じゃない男色(ディーノ)さんと(グレート-)O-カーンさんの試合も、男色ディーノとO-カーンさんの間にDDTが溢れると思います。どの試合もDDTのリングにはDDTが溢れます。全てがDDTなのです。

――わかりました。話が変わるのですが、両国大会でKO-Dタッグ王座決定戦にのぞむTo-y選手についてはどう見られてますか?

上野 めちゃくちゃいいです。僕の中で現状のTo-yのベストは11・23の後楽園大会です。あの時が一番さらけ出していたから。プロレスの面白いところは、 1人でどれだけさらけ出そうとしても限界がある。高鹿(佑也)がもっとさらけ出すことができれば、ベストを超えていけるんですけど。前哨戦含め「勝った!」「負けた!」だけ意識していると心にこないんですよ。To-yはさらけ出してしまったからこそ思い悩む部分もあると思う。高鹿との前哨戦や自分と向き合う中で変化しているはず。自信のある言葉が出てしまったら甘んじてしまう事があるので。それでも人にぶつけることで新たな気づきはいっぱいあるから、高鹿にもとっても期待しているし。あの2人は、今はすごくチャンス。もっといけると思います。

――上野選手から見て、これからのDDTは、プロレス界の中でもっと存在感を出していきたいのか、新しいファン層であったり独自路線で攻めていきたいのか、どちらをより重視していきたいと思いますか?

上野 他ジャンルとかプロレス界とか、そんなくくりで考えていない。僕はプロレスラーだから、来てくれるみんなを何かで分けることはないです。僕たちと出会ってくれる人を増やすことが大事です。DDTに出会ってくれる人、僕と出会ってくれる人を増やしたい。届けられるものなら全人類に届けたい。

 ――今年はKO-D無差別級王者として団体を引っ張っていて。なおかつベルトを失ったあとも新たな活動されていました。この1年を振り返っていかがでしょうか?

上野 アイアンマンを奪取すべく平田さんを豊洲にまで襲撃に行ってみたりと、今までと違う新しいことしてますよねっていう風に言っていただくことが多いんですけど、全然そんなことなくて。KO-D無差別級王者として上野勇希の軸を知ってもらえたから今が新しく見えているのかなと思っています。でも、僕はDISASTER BOX出身ですから! 自分の中では新しい一面では無いと感じるものが、幅になって受け取ってもらってるのは嬉しい。2024年は、上野勇希は動き続けられるということを証明し続けていて。2025年は未知の領域へ。KO-D無差別もユニバーサルもアイアンマンも、もしかしたらエクストリームだって、 リングの内も外も、上野がそこら中にも存在しているような状態になっちゃうと思います。きっと自分の意思以上に! だから、いつ見ても変化し生きている。そんな2025年にします。
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