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2024-12-24

脊髄損傷から1194日ぶりに復帰! 空牙が背中の手術痕を隠さず上半身裸で闘った理由は「恥ずかしい体でリングに上がりたくない」【週刊プロレス】

脊髄損傷のケガから1194日ぶりにリングで試合をおこなった空牙(右)

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脊髄損傷の重傷を負って2021年9月から長期欠場していた道頓堀プロレス・空牙が12月22日、大阪・世界館で1分間のエキシビションマッチながらリング復帰を果たした。「まだ今日は、ここまでできるようになりましたというのを見てもらっただけ」とはいうものの、デビュー30周年を迎える2025年への完全復帰へ向けた大きな一歩となった。

空牙の体に異変が起きたのは2021年9月16日。前日、東京・後楽園ホールでおこなわれた日本プロレス殿堂会主催の大会に出場した翌日だった。

場外でダウンしている相手の体にイスを大量に積みあげ、そこに頭から飛び込んでいくトペ・アトミコを得意にするなど、過激なスタイルはメキシコ流のルチャ・リブレをもじって“ムチャ・リブレ”と呼ばれて人気を集めたが、一方ではダメージが蓄積させていった。

そして2021年8月15日、大阪・鶴見緑地(花博記念公園ハナミズキホール)で開催されたFMWEの大会での試合でトペ・アトミコを繰り出した際、頭から突き刺さった感じになった。その後、4試合をこなしたものの、次第に足が動かなくなっていき、運命の同年9月16日を迎えた。ついに腰から下がまったく動かなくなり、診断結果は脊髄損傷。手術を受け、リハビリ生活がスタートした。

最後の試合から数えて1194日。空牙は試合用コスチュームに身を包み、手術痕を隠すことなく上半身裸でリングに立った。胸、肩、腕も欠場前と変わらぬほどパンプアップされており、入場時に水噴きパフォーマンスを披露すると大きな拍手に包まれた。コール時には大ファンである阪神タイガース、そして自身のイメージカラーでもある黒と黄色のテープが大量に舞った。

相手を務めるのは対戦相手は太陽塔仮面。道頓堀プロレス旗揚げ時に誕生したキャラクターで、11年間、空牙ともに苦楽を共にしてきた盟友。

時間は1分間。ゴングが鳴ると反時計回りにリングを半周し、意を決したように太陽塔仮面とガッチリと組み合った。サイドヘッドロックにとらえられると、太陽塔仮面をロープに飛ばして振りほどく。戻ってきてのタックルを真正面から受け止めると、踏ん張ってダウンせず。“リングに立ったものの、まだ受け身が取れるまでには回復していないのか”と思わせたシーンでもあった。

「30秒経過」のアナウンスを合図にチョップの打ち合いを振り広げる。太陽塔仮面が仕掛けてきたラリアットの腕をキャッチすると、サイドヘッドロックにとらえてそのままロープに走る。会場から「オッ!」という声が上がる中、セカンドロープに飛び乗ると、反転しながらジャンプしてのブルドッキング・ヘッドロック、空牙の得意技の一つであるUターン・ブルドッキングが決まると、観客から大きな拍手がわき上がった。

さらに相手の両腕をリバース・フルネルソンに固め、これもまた空牙の代表的な技であるタワースタンプを狙う。しかしこれは太陽塔仮面に踏ん張られて決めきれず。ここで1分タイムアウトのゴングが打ち鳴らされた。それと同時に、力尽きたかのように後方に大きく受け身を取ってリングに大の字になった。

試合を終えた空牙は道頓堀プロレスの選手、スタッフに加え、「今日を迎えるまでに支えてくれた人たちや、間違いなく、今日集まってくださいました皆様の気持ちやその思いが、自分の背中を押してくれて、今日これだけですが、体が動けたと思います」と満員のファンに感謝を述べた。

大会終了後は取材に対し、このように語った。

「もちろん道場とかでも練習してたんですけど、それとは違ってこういう試合会場、お客さんを入れてのリング上っていうのは、みんなの声援や思いが伝わってくるっていうか、そういうのに背中を押されて練習以上に、道場以上に体が動いたかなと自分なりに思いました。スタミナ面ではしんどかったですけどね。1分だけでしたけども、アドレナリンっていうのはあるもんやなとつくずく思いましたね」

「自分自身、まだまだ引退したくないという思いもありましたし、リング復帰という目標があったからこそ、ここまで回復できたと思います。日常生活への復帰はできてましたけど、なによりファンの人が待ってくれてるっていう思い、気持ちを感じてましたし、それにこたえたいっていう思いがあったからここまでこれて、今日の日を迎えられたと思います。本当にファンの声援はありがたいですね。それが自分のエネルギーになって、ここまで回復できたと思います」

手術痕を隠さず、上半身裸でリングに立ったことに関しては、「応援してくれてるファンの方から『Tシャツ着てやらへんやろな?』って言われてましたし、恥ずかしい体でリングに上がりたくないっていうもありましたし。プロレスラーは体を見せてなんぼ。体を見てもらったら、何も言わずともどれだけやってきたかわかってもらえますから。手術以外の傷もありますけど、手術の傷も含めてここまでプロレスをやってきた証というか、そういうのが体に刻まれてるってことで。背中で見せるっていうのも自分のテーマにおいてるんで。自分にとっては傷の一つひとつが誇りであり、自分が歩んできた証。だから今日は、最初からフルコスチュームで、上半身裸でやると決めてました」

空牙の欠場中に大阪プロレスが本格的に再始動するなど、大阪のプロレス事情は大きく変化した。「ゼウスが大阪プロレスを再スタートさせて話題になりましたけど、道頓堀プロレスの選手もそれに負けないようにレベルアップしていってもらいたいし、自分が復帰した時には先頭に立って大阪プロレスの勢いを止めたいっていう思いで見てましたね。菊池悠斗や晴斗希がNOAHで頑張ってるのを見ると誇らしいですし、大阪プロレスに負けないように、ほかの選手ももっと力を合わせて盛り上げていかないとっていう思いですね」と、道頓堀プロレスのリーダーとしての立場からも語った。

「来年10月にデビュー30周年を迎えるので、それを待たなくてもいいんで完全復帰を次の目標に」と本格復帰へ向けて第一歩を踏み出した空牙。最後は「自分が戻るリングを守ってくれた道頓堀の選手、スタッフには本当に感謝してます」と、無事に試合を終えての笑顔を見せた。

橋爪哲也

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