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2025-03-18

【サッカー】好成績を収めた筑波大学トップチームのヘッドコーチは大学生だった。俺たちのトレーニングプラン大学編:筑波大学 前編

2年時にスタッフに転身し、4年生の24年度にはトップチームのヘッドコーチに就任した戸田伊吹氏(Photo:土屋雅史)

どういうサッカーをやりたいのか、どういう選手を育てたいのか、そこのところの意志が1番重要

2024年度の天皇杯全日本サッカー選手権大会で、Jクラブを撃破し、多くの人々に注目された学生チームが筑波大学だ。そして、天皇杯のほか、24年度の全試合の指揮を執ったのが、大学4年生の戸田伊吹ヘッドコーチ。2年生のときに、選手から指導者に転身したばかりの戸田だが、采配初年度から好成績を収めた。名門大学サッカー部という組織の中で、どのように取り組んだのか? プランニングの考えを聞く。
前編ではチームの方向性や年間計画を立てる際に大事なことを解説。

取材・構成/土屋雅史

(引用:『サッカークリニック 2025年4月号』-【特集】新時代のトレーニング計画法 PART2:俺たちのトレーニングプラン-より)

|チームがどういう方向性を目指しているか


2024年度天皇杯全日本サッカー選手権大会の2回戦で、FC町田ゼルビアを下した筑波大学。続く3回戦(写真左のチームが筑波大学)では、敗れたものの、柏レイソル相手に熱戦を演じた(Photo:Getty Images)

─トレーニングを計画する意味をどのように捉えていますか?

戸田 チーム、個人、グループにおいて、どんな目標を掲げているかという軸があった上で立てられるものだと思います。どういう期間でトレーニングするかの期分けも出てきますが、構成される要素を考慮しながら、トレーニング計画を立てると、自分の頭の中が整理されます。派生していくものも修正していくものも出てくるので、それによって、微調整しやすくなります。ですから、1年の大枠を支えるものだと考えます。

─計画を立てる上で、大学生のチームだからこそ意識しているようなことはありますか?

戸田 フィジカルです。世界のサッカーもそうですが、大学サッカーの選手にしても、プレーの中で、フィジカルやフィットネスが占める割合が大きくなっています。個人が自分の目標を達成するためにフィットネスに注力するのは、大学生として、重要な視点。そこを伸ばしながら、サッカーのトレーニングと両立させるのは、筑波大学だからこそ、目を向けている部分だと思います。

筑波の場合、チームトレーニングと自主練が「7対3」くらいの割合です。チームの大枠や頭の中をチームトレーニングである程度そろえた上で、それぞれの足りない部分やもっと伸ばしたい部分を残り3割の自主練で補います。こちらから与える部分もありますが、自分で考えて行動する選手のほうが伸びますし、技術の面でも体の面でも、自主性の有無が大きな差になることを筑波での4年間で感じました。ですから、選手たちがそこに気づくために働きかけることを意識しています。

─戸田さんは、2024年度の筑波大学でヘッドコーチを務めましたが、トレーニング計画を年初に作成するにあたっては、そこにどれくらい関わったのですか?

戸田 大枠は、基本的に自分が考えました。プレシーズンからどうやってシーズンインに持っていくか、シーズンの途中でどこにトレーニングマッチを入れるかという大枠を考えながら、細かいところのバランスについては、小井土正亮監督とフィジカルコーチとすり合わせて作成しました。

─トレーニング計画を立てる上で、特に大事にしているポイントはありますか?

戸田 チームがどういう方向性を目指しているかを考えます。ゲームモデルやゲームコンセプトがそれにあたりますが、どういうサッカーをやりたいのか、どういう選手を育てたいのか、そこのところの意志が1番重要だと考えます。

─年間計画を立てる際に大事なのは、どんなことでしょうか?

戸田 理想は、シーズンを通して、コンディションとパフォーマンスを上げ続けることです。そこを目指しつつ、1番考えるのは、プレシーズンからシーズンインに向けて、できるだけケガ人を出さないこと。コンディションを上げながら、チーム全体や個々の選手のパフォーマンスも上げていくことを意識します。

あとは、シーズンのどのタイミングで、試合がどれくらいあるのかも、ポイントになります。連戦が増えるようなら、プレシーズンの準備が変わってきます。プレシーズンにおいて重要なのは、シーズン全体の流れを頭に入れた上で、チームがやりたいものをサッカーとフィットネスの両面である程度落とし込むこと、それを浸透させること、徹底するべきものをしっかりと根づかせることだと考えます。

─プレシーズンの時期に大事なのはフィジカルとタクティクスだと思いますが、そこの強化のバランスについては、どのように考えていますか?

戸田 始動から3、4週目までは、フィットネスを重視します。Jクラブはシーズンの立ち上げから5、6週間で開幕を迎えますが、大学サッカーの場合、もう少し余裕があります。

プレシーズンのケガが長期離脱につながる傾向にあることが、24年度や23年度のデータで出ているので、負傷離脱する選手をいかに出さずに、チームの中でこだわるべきところにこだわるかが、3、4週目あたりまでのポイントです。そこで体をつくってから、サッカーのところに目を向けていくようなバランスで考えています。

(後編に続く)


戸田伊吹(筑波大学ヘッドコーチ)
PROFILE
とだ・いぶき/ 2002年5月3日生まれ、茨城県出身。柏レイソルU-15、同U-18を経て、21年に筑波大学に入学した。1年時はプレーヤーだったが、2年時にスタッフに転身し、下部カテゴリーを指導。4年生になった24年度は、トップチームのヘッドコーチとして、試合の指揮を任され、関東大学サッカー1部リーグで2位という好成績を収めた。また、総理大臣杯全日本大学サッカートーナメントにおいて、チームを3位へと導き、天皇杯全日本サッカー選手権大会では、FC町田ゼルビアをPK戦の末に打ち破るという金星獲得に貢献した。25年度もヘッドコーチを務める(Photo:土屋雅史)


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