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2025-03-25

【サッカー】指導者として大事なのは「熱量」。U-12選手との向き合い方のポイントとは。俺たちのトレーニングプランジュニア編:クラブ・ドラゴンズ柏U-12 後編

クラブ・ドラゴンズ柏U-12(Photo:松尾祐希)

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流通経済大学と流通経済大学付属柏高校の下部組織として、2010年に設立されたのが、クラブ・ドラゴンズ柏だ。U-15チームに続く形で、21年にはU-12チームがスタートし、小中高大の一貫した指導体制ができあがった。数々のタイトルを獲得するなど、全国屈指のレベルを誇り、何人ものプロ選手を輩出してきた大学と高校の存在がある中、U-12チームを率いる稲垣雄也監督は、どのようにしてトレーニングを計画し、選手たちの指導にあたっているのだろうか?
前編と後編に分けてすべて公開する。
後編となる今回は、育成年代の選手への向き合い方や、実際のトレーニングプランを公開。

取材・構成/松尾祐希

(引用:『サッカークリニック 2025年4月号』-【特集】新時代のトレーニング計画法 PART2:俺たちのトレーニングプラン-より)

夏合宿

|U-12の全選手にU-15 の練習に参加してもらう

─目標をかなえるアプローチとして、大事にしていることはありますか?

稲垣 目標を達成するために、チャートなどを書かせたりすることはやっていません。書くのが苦手だったり、言葉にするのが苦手だったりする選手がいるので、日々のサッカーノートにしても、強制的に出させたりはしません。選手たちの希望制にしています。

提出してくれた選手にはきちんとコメントをつけて返却しますが、強制しないのは、自主的に目標を掲げてほしいからです。チームとして掲げた目標を伝えながら、「必要だと思ったら、自分で書きとめるといった取り組みが大事だよ」と促しています。

ただし、年に数回は、ノートを提出してもらうようにしています。みんなで反省したほうが良いなと思ったり、この事象に対して、どう感じているかを知りたかったり、そういうタイミングで出してもらっています。書くこと、表現すること、伝えることが苦手な選手であっても、そこから目を背けるのではなく取り組むことも大切だと思っています。

─選手との向き合い方が、ポイントになりそうです。

稲垣 そうですね。指導者をやる上で大事なのは熱量ですし、僕としては、そこだけは自信を持っています。指導力という意味では日々反省しなければいけませんが、今年よりも来年、きょうよりもあしたという思いを持ってやっています。選手に対して、その日の全力を尽くせたか、そこは、胸を張って、全力でやったと言えるくらいのものがあります。

僕は、Jクラブや高校のチームに関わらせてもらってきました。いろいろな人がいて、いろいろと勉強させてもらいましたが、最終的に感じたのは、思いがないと始まらない、思いの強さが大事だということ。思いだけでは動かせない事象もありますが、すべての原動力は思いだと考えています。

図1  図2

─選手たちのスケジュールを組む上では、進路決定が関わってきます。

稲垣 僕たちのチームでは、U-15に上がれるかどうかのジャッジを6年生の6月に下しています。残念ながら上がれない選手が出てきますが、そういう選手にしても、今年度は8月中に進路が決まりました。

U-15に上がる上がらないのところで言うと、U-12の全選手にU-15の練習に参加してもらいます。上のカテゴリーの雰囲気を知ることが大事。U-15のスタッフはU-12の練習や試合に何度も足を運んでくれますが、そういう上とのつながりが大学まであるのは、クラブとしてのメリットだと感じています。

6年生チームは、U-15チームとトレーニングマッチを定期的にやっています。特に春先は、上のレベルを経験するために、ゲームを組んでもらうことが多いです。リーグ戦が始まる前に、1つ上のカテゴリーのサッカーを経験しておくと、シーズン中には味わえないようなスピードやフィジカルを体験できるので、全国の舞台で戦うための基準になります。ですから、そのタイミングで指針をつくるようにしています。


流通経済大学付属柏高校(Photo:松尾祐希)

─クラブ・ドラゴンズ柏としては、どんな選手を上に送り込みたいのでしょうか?

稲垣 僕は流通経済大学付属柏高校の出身ですが、コーチやスカウトをやる中で感じたのは、いろいろなチームから、いろいろなタイプの選手が来て、その上で、彼らがうまく交わったら強いということです。流通経済大柏が強くなったのは、素晴らしい個性のある選手が集まったから。それは間違いありません。

クラブ・ドラゴンズ柏の選手たちが流通経済大柏の主体になっていくことが、下部組織としての役割でしょう。クラブ・ドラゴンズ柏の選手らしい選手が高校に入っていくのが理想。そして、クラブ・ドラゴンズ柏U-12出身の選手たちがその輪の中心にいてほしいなと思います。もちろん外部からの素晴らしい選手が来るのでそこは切磋琢磨してほしいです。

U-12の1期生が、来年度、中学3年生になります。彼らは、流通経済大柏にあこがれていますし、あの組織に入りたいという思いを持っています。何人の選手が、さらに上のステージを目指して、流通経済大柏に進学してくれるのか、そこが、本当に楽しみです。



稲垣雄也(クラブ・ドラゴンズ柏U-12監督)
PROFILE
いながき・かずや/ 1985年4月3日生まれ、千葉県出身。現役時代のポジションはGKで、流通経済大学付属柏高校卒業後、ウルグアイに活躍の場を求めた。帰国後、指導者に転じ、武相高校(神奈川県)を指導したあと、2008年に流通経済大柏のコーチに就任。本田裕一郎前監督や榎本雅大現監督を支え、中学生選手の発掘にも従事した。16年にジェフユナイテッド千葉の強化部に入り、スカウトとして、新卒選手の獲得に尽力していたが、21年4月にクラブ・ドラゴンズ柏U-12初代監督の座に就いた(Photo:松尾祐希)

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