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2025-04-02

元バスケ日本代表の栗原三佳が、フラッグフットボール日本選手権出場。LA五輪へは「頑張り次第」

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長身を生かしてクォーターバックにプレッシャーをかける栗原 写真/永塚和志

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3月30日に富士通スタジアム川崎でフラッグフットボール日本選手権が開催され、女子のトーナメントには元女子日本バスケットボール代表選手の栗原三佳が出場し耳目を集めた。

元Wリーグ・トヨタ自動車アンテロープスのトップ選手で、2016年のリオ五輪にも出場している栗原は、昨年12月からバスケットボール時代からの友人に誘われ東海フォッシルに加わっている。

もっとも、加わったとはいっても練習に参加できたのは「月に1、2回」(栗原)程度とのことで、今回の日本選手権ではまずディフェンスに専念した。

栗原のポジションはディフェンス最前線から相手クォーターバック(QB)へ突進しながらプレッシャーをかけるブリッツァーだったが、1回戦の東京ヴェルディフラッグフットボールチームローゼス戦では、試合開始直後のパスラッシュによって相手QBで2022年ワールドゲームズの日本代表、近江佑璃夏からパスインターセプションを誘発してみせるなど能力の高さを示した。

「身長が大きいのと、大きさの割には動けるので徹底的にと(コーチが)言ってくださったので、そこを頑張りました」(栗原)

身長177cmの長身ながらバスケットボールで磨いたスピードと俊敏性で、その後も相手QBに迫った栗原。一方でまだ競技に慣れていないこともあって、最終的には大会準優勝を果たしたヴェルディに引き離され、最後は13-38で敗れた。

プレッシャーをかけてクォーターバックのパスコースを限定する
プレッシャーをかけてクォーターバックのパスコースを限定する 写真/永塚和志

「ヴェルディさんはやっぱり足元に入るのも速いですし、読みが早かったです。読むというところは自分たちにあまり経験がないので、難しかったなというのはすごく感じましたね」

試合後、栗原はそのように話した。屋外の競技はほとんどしたことがなく、慣れない芝の上でのプレーでこの試合中も太ももをストレッチする場面があったが、新たな挑戦に表情や口調には爽快さを漂わせた。

東海フォッシルには、栗原以外にも元Wリーグ・デンソーアイリスの牛田悠理なども所属するが、同チームの安藤孝次ヘッドコーチ(HC)は彼女らのサイズや身体能力もさることながら、新競技への適応の速さに感嘆する。

今大会へ向けて練習をする時間が少なかったこともあり、安藤HC以下コーチ陣は栗原らには無理にフラッグフットボールの動きをさせるのではなく、バスケットボールの素養を生かしながら調整をしてきたという。

「チームとしてコーチ陣としては『バスケの動きでいいよ』というような指導は続けてきました」(安藤HC)

フラッグフットボールは2028年のロサンゼルス五輪に競技採用が決まっている。まだ競技を始めたばかりで2021年のバスケットボール選手としての引退後は「運動不足」のところがあったという栗原だが、同五輪を狙う気持ちについて問われると「これからの練習での頑張り次第」としつつ「可能性があったら頑張ってみたいというのはある」と話した。

トヨタ自動車アンテロープス時代には、頂点を極めている
トヨタ自動車アンテロープス時代には、バスケットボールで頂点を極めている 写真/永塚和志

本場のアメリカでは学生時代にフットボールとバスケットボールの両方をプレーする選手は多い。バスケットボールで培ったステップワークや「ハンド・アイ・コーディネーション」(手と目の協応)は、例えばレシーバーがパスを捕球するのに役立つなどとされる。

NFLでもバスケットボールを得意とした選手は多い。たとえば元カンザスシティ・チーフス等に所属した殿堂入りタイトエンドのトニー・ゴンザレスは、カリフォルニア大時代には全米大学バスケットボール選手権の「NCAAトーナメント」にも出場している。

国内でもXリーグ・胎内ディアーズ(X1エリア)のワイドレシーバー・前田直輝は高校までは京都府内のバスケットボールの強豪高校でプレーしていた技術をフットボールに生かし、日本代表選手にまでなった。

栗原も練習ではレシーバーを試みている様子で「ちょっと難しいパスでも捕れると褒められます。(ボールの)形が違うので難しさはあるんですけど、ボールを怖がらずに向かっていけるというのはバスケをやっていたからというのもあると思って」いると語った。

ブリッツァーはもちろん、レシーバーとしても大きく成長中だ
ブリッツァーはもちろん、レシーバーとしても大きく成長中だ 写真/永塚和志

全試合先発出場し日本のベスト8進出に貢献したリオ五輪でも、51.1%の高確率で3Pを決めた名シューターだった栗原はまた、「空間に走り込むとか(相手を)騙して違う方向に走る」ことなどもバスケットボールからの応用が効く感触があると話した。

現在35歳の栗原はリオ五輪以外でも、FIBAワールドカップには2度出場し、Wリーグでは2013-14シーズンにベスト5に選出されたトップ選手だった。所属のトヨタ自動車がリーグ優勝を飾った2020-21をもって現役を退いている。

フラッグフットボール女子の世界ランキングで日本は現在、アメリカ、メキシコに次ぐ3位となっており、ロサンゼルス五輪でもメダルが期待される。まだ同五輪にフォーマットや日本代表の選考方法など詳細に不明な点は多いものの、栗原がフラッグフットボールという異なる競技での五輪出場を目指しつつ本腰を入れるのであれば、面白い存在になるかもしれない。

永塚和志

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