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2018-09-19

【System of Arthur Lydiard vol.3】中年太りの心臓病患者20人、32㎞走破までの8カ月間に何が?

マラソン理論の基礎を築いたといわれるニュージーランドの伝説的なランニングコーチ、アーサー・リディアード。彼のトレーニング理論をリディアード・ファウンデーションの橋爪伸也氏にひも解いてもらう。 ※『ランニングマガジン・クリール』2017年5月号から2018年4月号まで掲載された連載を再構成しました。

母国ニュージーランドで、女子高生たちと走るアーサ・リディアード ⓒGarth GilmourCollection

驚くべきは「人の適応能力」

「無名の『ゼロ』からあっと言う間にヒーローに…」というセリフがディズニーの歌にありました。

 トラック半周、200mを続けて走るのがやっとだったという20人の中年の心臓病患者が、たった8カ月で全員32㎞を走り、そのうち8人がフルマラソンを4時間前後で完走。ガーミンもエナジージェルもない時代です。

 日本のマラソン人口は600万人に届こうかという今日この頃。そのうち男子の平均完走タイムは4時間37分、女子が5時間7分。すべてがそろっている現代であっても、サブ4はそれなりに「高嶺の花」なのです。「4時間前後」のマラソンなんて、そんなに簡単に達成できるものなのでしょうか。

 リディアードのトレーニングは、「週に160㎞走る」というハードコアのランナーのための練習法、という見方がほとんどだと思います。リディアード門下のランナーたちが世界を牛耳った1960年代、その当時800mの選手だったスネルでも週160㎞(100マイル)、毎週末には35㎞を走るという「ものすごい」練習量に、世界中の専門家が舌を巻いたといいます。

 しかしそれは、リディアードの練習法がすごかったわけではなく、すごいのは私たち「人間の適応能力」なのです! リディアードの持論は、「自分が持っている『その都度の限界』というものを理解し、その限界内でトレーニングを繰り返せば誰でもその負荷に適応し、その限界を高めていくことができる」というものです。

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