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2018-09-05

【System of Arthur Lydiard vol.1】靴屋のおじさんが不朽の方法論を確立。「有酸素トレの祖」のサクセス物語

ドロくさい基礎づくり

 速く走るにはどんな練習をしたらいいと思いますか? 速く走るのであれば、やはり速く走る練習をするべきだ、と考えるのが人の常というものでしょう。

 ところが「リディアード法」のトレーニングは、まずは長くゆっくり走るべきだ、と説いています。この、一見矛盾しているかのような理論がその実、「まず有酸素能力の土台を築き上げる」という、生理学的な見地からの基礎の確立においても最も有効なトレーニングだったのです。

 日本陸連では、2020年の東京五輪マラソンでの表彰台を目指してエリート選手を強化育成中ですが、その急先鋒ともいうべきレジェンド、瀬古利彦監督(DeNAランニングクラブ)がこのようなコメントをよく発しています。「ドロくさい基礎づくりの走り込みをすることが大事だ」と。それこそは「有酸素の土台」を意味しています。 

 半世紀昔のトレーニングの主流は、「速く走るために速く走る」という至極単純なものでした。一方、自身の経験に基づくリディアードの方法論は、大きく一線を画すものでした。

 まずは、長くゆっくり走ることで土台を築き上げる。そしてそれから、レースの準備をするためのトレーニング(つまり、速く走るトレーニング)をより多くする。リディアードはこうして、「トレーニングのピラミッド」を確立させたのです(図参照)。いわゆる「ピリオダイゼーション(期分け)」です。

 情報過多の昨今、ほとんどの長距離ランナーたちが、テンポ走、インターバル、タイムトライアル、ファルトレク(スピードプレイ)といった各種トレーニングを熟知していることと思います。しかし、それらをいつどのように組み合わせ、本番のレース時に体調をピークにもっていくのか。いわゆる「ピーキング」までを理解したり、実践・成功していたりする人はごく少数で、日々の練習メニューは突発的で盲目的、目的も根拠も希薄なケースが大半ではないでしょうか。

 まずは有酸素能力の土台をつくり、その上に徐々に速く走る練習を加え、それらをうまくミックスすることによって本番にピークをもっていく。それがリディアードの奥義です。


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