伯桜鵬(寄り切り)宇良曲者の宇良に何もさせず、ガッチリとつかまえて寄り切った。伯桜鵬が力強い相撲で初日から6連勝とした。
きのうまで白星街道を走り、快調に飛ばしてきた伯桜鵬。この日は宇良との対戦が組まれた。宇良はここまで1勝4敗と星は挙がっていないが、いろいろな技や、変則的な動きを繰り出す幕内きっての曲者。初顔合わせという条件も加わるとなると、伯桜鵬にとってもちょっと不気味ではあるはずで、いくらきのうまで絶好調とはいっても、変調のきっかけとなり得る可能性のある相手だった。
それでも立ち合い、全力というほどのスピードこそ感じられなかったものの、伯桜鵬は頭から当たっていった。この辺りは、このところ特に意識しているという「前へ」の意識がうかがわれる。その後、まずは左からおっつけ。宇良がこれを嫌ったところでサッと得意の左差し。探った右上手は取れなかったが、そのあと左差し手を抱えて、ある程度相手の動きを止めることに成功した。
そして、動きを求めた宇良が肩透かしのような動きを見せたところで、これをこらえると左差し手を深くして突きつけながらの寄り。最後は右上手も取って、横への動きを許さず寄り切った。
「相手の土俵際の柔らかさが頭に入っていたので。土俵際を丁寧にできたのでよかったと思います」と伯桜鵬。曲者の持ち味を完封する、見事な勝ちっぷりだった。
幕内では初日からの連勝は4ですでに自己最多だったが、これを順調に6まで伸ばした。本人も、「今場所はすべてにおいてパワーアップしていると思います」と手ごたえあり、の表情だ。
左肩の手術などで一時期は少ししぼんだような感があった体も、このところ上半身などはまたパンプアップされてきているように見えるが、実は本人によると、この好調の大きな要因は、その部分の筋肉とは違うようだ。
「(〝体幹を鍛えれば強くなる〟と言う照ノ富士親方に)〝アウターでなく、体の中の力を鍛えるには、申し合いの番数をこなして、一番一番、手を抜かずにやっていけ〟と言われています。そうすれば相撲力がつき、体の軸の力がつくから」と。
それを意識してから、以前は10番が限界だった申し合いも、毎日30番取れるようになっているという。
この日は、綱取りの大の里は順調に連勝を伸ばしたが、幕内初口の取組で錦木が敗れたほか、きのうまで快調な突きで「一気に大関も!?」という軌道に乗るかと思われた関脇大栄翔も、これまで得意としていた平戸海に立ち合い直後に叩き込まれるまさかの黒星で土。全勝は大の里と伯桜鵬の2人のみとなり、伯桜鵬に優勝争いの対抗馬としての期待が徐々に膨らんできた。
新入幕の令和5年7月場所では千秋楽まで優勝を争った経験もあるが、「あの時は若かったので、向かっていくことだけ考えていた」という。手術を経て、稽古量も増えた今は、また違った強さの裏付けがあるはずだ。「2年前と比べたら、今は楽しいというのはない。集中力が増した分、疲れがあるのかな。15日間は長い。自分の地位では、先のことを考えている余裕はない」と語るが、そう言わずに、大の里との直接対決が組まれるぐらいのところまで踏ん張ってほしいもの。
海の向こうの野球界の「令和の怪物」(ドジャース佐々木朗希)は残念ながら故障してしまったが、相撲界の「令和の怪物」は手術を乗り越え、完全復活。以前にも増してたくましい姿となった。よみがえってきた大物ぶりに期待したい。
文=藤本泰祐