close

2025-06-13

【連載 大相撲が大好きになる 話の玉手箱】第29回「白鵬」その3

平成27年名古屋場所千秋楽、この場所で引退する旭天鵬を旗手に白鵬がパレードに出発

全ての画像を見る
始まりがあれば、必ず終わりが来る。
これがものの道理です。
令和3年名古屋場所、この終わりがあるのかどうか、注目を集めたのが横綱白鵬でした。
白鵬ファンか、アンチ白鵬かは置いといて、多くの相撲ファンが固唾を飲んでその一挙手一投足を見守り、中にはハラハラ、ドキドキ、手に汗握って熱い視線を送ったことでしょう。
白鵬と言えば、このコーナーでもおなじみです。
欠かせない人材といっていいでしょう。
なにしろ15年も横綱にいたんですから。
その間、いかに強いプライドと自信を持ち、強気にふるまったか。
今回はそんなエピソードに絞って紹介しましょう。主役は白鵬です。
※月刊『相撲』平成31年4月号から連載中の「大相撲が大好きになる 話の玉手箱」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

兄貴からの教え

相撲は天性なのか。確かにそういう部分もある。しかし、努力なしで天下、つまり横綱にはなれない。白鵬が誰も見えないところで貪欲に必勝法を探っている姿をかいま見せたのは平成27(2015)年夏場所4日目のことだった。
 
この日、同じモンゴル出身の旭天鵬(現大島親方)が、これまたモンゴル出身の貴ノ岩を寄り切って、幕内通算出場1444回を記録し、歴代1位の魁皇に並んだ。このとき、旭天鵬は40歳だった。
 
このタイ記録を達成した記念すべき夜、旭天鵬のことを「兄貴」と呼ぶ白鵬に、

「祝杯をあげよう」
 
と食事に誘われた。場所前に白鵬は、

「(記録でも達成したら)ゆっくり兄貴と食事でもしながら、話してみたい。身近に尊敬できる人がいるのは励みになりますから」
 
と話している。さっそくそれを実行に移したのだ。
 
その夜、白鵬は旭天鵬から長持ちする秘訣や、ケガをしない方法などを取材したに違いない。それが白鵬の血となり、肉となっているのは明らかだ。令和3年7月、白鵬は36歳4カ月。旭天鵬はこの会食した次の名古屋場所後に引退している。40歳10カ月だった。白鵬はこの旭天鵬の記録にどこまで迫るだろうか。

月刊『相撲』令和3年8月号掲載

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事