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2020-09-07

JFAのユース育成ダイレクターと考える「これからの選手育成」

オフ期のつくり方と大会のあり方を考える

――この期間は、全国の指導者の踏ん張りも感じられた時間ではなかったでしょうか?

池内 皆さんがアイディアを出し合って、子供たちのために頑張ってくださっています。いろいろな映像を見せたり、オンラインでつながってのトレーニングでは新しい工夫が採り入れられたり……。これが日本の指導者の持つ力だと感じました。ある意味で、個別指導に目を向ける良い機会になったとも感じますし、選手としても自分自身の体に目を向ける良い機会になっているという話を聞きました。自分には何が足りなくて、何を鍛えればいいのかをあらためて考えることになったわけです。

――指導者と選手がグラウンドから離れる時間ができたことは、もしかするとマイナス面ばかりではないのかもしれません。

池内 オフ期間の重要性を再認識する時間になったというのもあると思います。例えば、リフレッシュ講習会でオンラインのコンテンツをいくつかつくってコロナ禍の期間に配信していたのですが、すごくよく見てくれたんです。普通のシーズンでは試合に追われて指導者も忙殺されてしまい、じっくり腰を据えて勉強する時間をつくるのは難しかったんだと思います。だから指導者育成という点から考えても、こういうオフ期があるのは重要ではないかとあらためて思いました。もちろん、机の前に座っている勉強だけではいけません。最も大事なのは現場の指導を通じて学んで力をつけていくことですが、勉強する時期というのはあるべきなんだと思います。

――指導者にとってもオフ期は大切ということですね。

池内 私自身が痛感しました。こんなに家にいるのは20年ぶりくらいです。ずっと外へ出てばかりで、家を空け続けていました。子供の様子もじっくり見られるようになった中で、自分が子供について全然知らなかったということに気付けましたし、家事もだいぶうまくなりました(笑)。でも、そういう時間は本来もっと大切にしてこなければいけなかったんだとも思います。この日本でカレンダーを整理していくのは本当に大変ですが、これからの指導者のためにも、オフ期はしっかりつくっていくことを考えなければいけません。そうでなければ、リフレッシュできません。

――選手にとってのオフ期は精神面もそうですが、発育面でも大きいという声があります。

池内 しっかり休む期間と刺激を入れる期間のサイクルが重要だと思います。日本はそのバランスが偏っているのかなと思います。休んで発育を促したり、サッカー以外のものを見たり、体験したりといった時間をつくるためにもオフ期の創設は大切ではないでしょうか。

――育成年代のカレンダーの改革についてはコロナ禍によって停止になるのでしょうか?

池内 今年に関しては、現在の状況に合わせて大会のあり方を当然探っていきます。一方で、育成年代のカレンダーを改革していくことを止めるつもりはまったくありません。

――それは例えば、どういった部分でしょうか?

池内 各年代でオフ期をどうとっていくかもそうですし、2種年代で言えば、高円宮杯JFA U-18サッカープレミアリーグのチーム数を拡大し、年間を通じたリーグ戦の試合数を増やすという方向性も実現したいと思っています。ただ、これは各連盟が行なってきたチャンピオンシップ大会をないがしろにしようということではありません。今回のコロナ禍の中でも、「冬の全国大会は子供たちのためにも残してあげたい」と大勢の方が情熱を持って努力されています。JFAとしてもサポートしていきたいですし、日本のサッカー文化にとって大切なものだと思っています。

 ただ、「選手権さえやれればリーグ戦はなしでもいい」という考えは違うとも思っています。補欠ゼロ、引退ゼロを実現するための育成年代のリーグ戦はより充実させていきたいですし、それは今年に関しても変わりません。全試合消化するのは難しくても、リーグ戦の灯は消さないようにしたいです。この2つ(トーナメントとリーグ)は矛盾することのようによく誤解されますが、決してそうではありません。

――3種と4種に関してはリーグ戦と冬の全国大会がつながっている形になっています。

池内 これも地域の実情に合わせて無理のないようにしてもらえればと思っています。「年をまたぐリーグ戦になってもいいか」といった問い合わせをもらっていますが、柔軟な策を地域と一緒に考えていきたいです。

――冬の全国大会については現状、開催可能でしょうか?

池内 ウイルスに関しては分からない部分があります。4、5カ月後の状況を今から読み通すのは不可能でしょう。「東京(首都圏)で開催するのは無理だ。今から別の開催地を用意しよう」と言っても……。

――5カ月後は全く別の地域で大流行し、東京は平穏という可能性だってあります。

池内 リーグ戦もそうなのですが、開催できるかできないかの判断を早めに下しすぎるのは良くないので、ここは本当に難しいです。早めに決断すればいいという話ではありません。


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