川崎フロンターレのU-12は2018年度の全国大会で優勝を収めた(写真/佐藤博之)
大田和 ポジションによって求める能力は違いますが、例えばすごく足が速かったり、体が大きかったり、ピッチでリーダーシップを発揮していたりすると、目に留まりやすいですね。型にはめては見ていないです。正直、いまは技術力に長けた選手は大勢います。10年前に比べると、技術を徹底して教えてくれるスクールなどが充実している影響もあり、格段にテクニックのレベルは向上しています。ただ、技術は後からでも身に付きます。そのノウハウはフロンターレでも持っています。私たちが見ているのは特徴を持っているか、持っていないかです。
大田和 基本的に見るポイントは同じですね。動画に良いプレーしか収まっていなくても、対戦相手をチェックすれば、どれくらいのレベルの試合なのかは分かります。川崎市内、神奈川県内はもちろん、東京都内のチームもだいたいのレベルは把握しています。
大田和 うちのコーチ陣からよく聞くのは、走り方ですね。腕の振り方なども含めて、見ています。
大田和 仲間への声がけですね。ポジショニングの修正、仲間のミスに対しての対応などもチェックしています。近年は声を出せる選手が、すっかり少なくなってきました。足の速さにしても、リーダーシップにしても、ひとつの基準だけではなく、総合的に判断しています。
山岸 冒頭で述べましたが、今回はプレー映像だけではなく、自己紹介を入れているのはそのためです。その内容もチェックしたいと思っています。親御さんとも相談するでしょうが、はきはきと話すことができているのか、自分の意見がしっかり言えているのかどうか、そこも大事です。
大田和 いまの子供たちに「自己PRをしてください」と言っても、あまりうまくできないんです。ジュニア、ジュニアユースでも練習中に声を出す選手は、コーチ陣に重宝されています。
大田和 これまでの当たり前が当たり前でなくなっていますが、何かを理由にしてできないことはないです。たとえ練習場所がなくても、この時代はインターネットで探せば、参考になるトレーニング動画がたくさん出てきます。自分がやろうと思えば、何でもできます。やり続ける心を持った子供が、将来プロサッカー選手になると思います。コロナ禍の不自由な時代を言い訳しないようにしてほしいです。いまできることをやり続ける。フロンターレでは、強い信念を持った選手からの応募を待っています。リモートスカウト活動では、そういう選手たちを積極的にピックアップしていきたいです。
山岸 いま話したような自主トレーニングで、自分の武器をどんどん磨いてもらいたいです。プロになる選手は、何かしら特徴を持っています。これだけは絶対に人に負けない、というものを見つけ、自信を持って長所を伸ばしてほしい。欠点を補うことも必要ですが、得意のことをもっと練習してほしいです。そのプレーを動画で撮影して、うちに送って来てくれたらなおうれしいですね。
川崎フロンターレが行なっているリモートスカウト活動「~F活~」(8月31日まで)の詳細はこちら
写真右=山岸繁(やまぎし・しげる)/1962年10月11日生まれ、新潟県出身。81年に富士通入社。97年から川崎フロンターレ強化部へ出向し、現場の主務として働いた時期もあった。2012年には強化部長に就任し、16年から育成部長を務めている
写真左=大田和直哉(おおたわ・なおや)/1989年5月25日生まれ、神奈川県出身。川崎フロンターレU-15に在籍した経験がある。2008年から14年まではスクール普及コーチ。17年から中国の広州富力U-10の監督。18年からアカデミー部門のスカウト兼コーチを務めている